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百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~  作者: 凪山キコ
第三章 エヴァルシア開発編

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101 子供たちと新たな居場所

 屋敷に戻り、リビングへ向かうと、子供たちがわらわらと集まっていた。

 そこへレオンが勢いよくやって来る。


「アレス! これどういうことなんだ!?」


「ああ。港町ローヴァンで人身売買の組織に捕まっていた子供たちを見つけたから保護した。全員孤児で、帰る場所がないらしい。うちで預かるつもりだ」


「この人数をか!? ……いや、お前たちなら、なんとかなるのか」


「ああ。そうだ、レオン。よかったら、こいつらの事情聴取をお願いしてもいいか?」


「ん? こいつらって、組織の連中か? 任せとけ!」


 俺はレオンに地下室の鍵と牢屋の鍵、それから男四人を引き渡した。

 それから改めて、子供たちに向き直る。


「さて、君たちの部屋を準備するよ。何人部屋がいいかな?」


 すると、代表してカインが一歩前に出た。


「男部屋と女部屋の二つでいい。まだ精神的に落ち着いていない子が多いから、できるだけ全員一緒の部屋にしてほしい」


 なるほど、年のわりにしっかりしている。


「わかった。しばらくこの部屋で待っててくれ。腹も減ってるだろ? すぐに食事の準備もしてもらうから」


 そう告げて部屋を出ると、宿屋の母娘であるマリサとサリナがついてきた。どうやら手伝ってくれるらしい。


 まずは屋敷にある部屋の一つを〈空間拡縮(スペースサイジング)〉で大きく広げる。

 ここに女子部屋用のベッドを三十九台も置いたら、さすがにベッドだらけの部屋になるな……などと考えていたところで、リンファから〈念話〉が届いた。


『商人のオルヴェナに、ベッドを五十四台購入してもらいました。共有空間に入れてありますので、ご使用ください』


『ありがとう。さっそく使わせてもらうよ』


 ひとまずベッドを三十九台並べ、ソファとローテーブル、ドレッサーに姿見の鏡、整理棚を配置する。

 これで女子部屋は問題ないだろう。


「じゃあ、マリサ、サリナ。あとは任せていいかな? 俺は隣に男子部屋を作ってくる」


「はい、お任せください」


 部屋の細かな調整や飾り付けは二人に任せ、俺は隣の部屋を男子部屋として、ベッドを十五台並べて同じように整えた。

 作業を終えて一息ついたところで、ふと思う。


「……そういえば、大きな食堂もあったほうがいいな」


 エルマと相談し、さらに隣の部屋を〈空間拡縮(スペースサイジング)〉で拡張。

 大きな食堂を作り、テーブルと椅子を並べていった。


「よし。リンファ、エルマ、すまないが、あとは頼む。俺は港町ローヴァンに置いてきた面々を連れ帰るため、向こうに戻る」


「お任せください」

「まかせといて!」


 ◇


 後をリンファとエルマに託し、俺は港町ローヴァンへ戻った。

 まだ約束の時間までは二時間ほどある。おとなしく待つか、と考えながら、倉庫に誰も入れないよう対策をしていると、同行していた商人のイリナから〈念話〉が届いた。


『アレス様、イリナです。良い空き店舗を見つけたのですが、購入してもよろしいでしょうか?』


 そういえば、イリナはエルマたちと一緒に行動していたのだった。

 突然、同行者が屋敷に戻ってしまったため、彼女は一人でできることを探していたのだろう。


『ああ、構わないけど、何に使うつもりだ?』


『しばらくは転移魔法陣のある拠点として利用します。将来的には、ここに支店を開きたいと考えています』


 なるほど。


『了解だ。俺もそっちに向かう』


 俺は、イリナが購入した空き店舗へ向かった。


 空き店舗の前でイリナと合流すると、いつものように店舗を修復し、新築同然の状態に戻す。

 その後、地下室に転移魔法陣を二つ設置した。


「二つ……なのですか?」


「ああ。一つは王都の屋敷と繋ぐ。もう一つは、これからエヴァルシアに作る屋敷の地下と繋ぐ予定だ。それと、今日は色々あってな。倉庫のほうにも屋敷と繋がる転移魔法陣を設置してある。帰りはそこから帰るぞ」


 念のため、この店はいつものように、許可された者しか通れない壁で囲っておく。

 その後はイリナと一緒に街を見て回り、時間を潰した。


 やがて、綿を見に行っていたターリアと服飾職人の母娘三人、ワイン用のブドウを見に行っていた酒蔵の母娘と商人のソフィアと合流する。

 倉庫に設置しておいた転移魔法陣で屋敷へ戻り、用済みとなった倉庫の魔法陣は無効化して消去した。


 ◇


 屋敷に戻ると、すぐにリンファが近づいてきた。


「アレス様、トイレが足りません……」


 そうだった。急に五十人以上も増えれば、当然そうなる。

 俺は急いで〈空間拡縮(スペースサイジング)〉を使い、屋敷の一室を拡張して、個室が十ある女子トイレと男子トイレを増設した。


 その後、エルマに状況を確認すると、とりあえず子供たちにはおやつを食べさせ、今は男女それぞれの部屋で過ごしているらしい。


「あ、服も用意しないと。靴を履いていない子もいたな」


「あー、それなら商人のオルヴェナが、下着を含めた古着と中古の靴を大量に買って、共有空間に入れてるよ。アレスが新品に修理してくれたら、あたしたちで配るから」


 準備がいいな。

 俺は共有空間に入っていた古着をすべて新品に修理した。


「じゃあ、今子供たちが身につけている服は回収して、共有空間に入れてくれ。そっちも新品に直す」


「了解。じゃあ、服配ってくるね」


 エルマは宿屋の母娘を連れ、子供たちの部屋へ向かった。


 続いて、レオンから事情聴取の結果を聞く。


「いやぁ、あいつら口が堅くてな。全然しゃべらねぇよ。結構痛めつけたから、回復しといてくれ」


 ……回復手段もなしに痛めつけたのか。

 俺は急いで地下室の牢屋へ向かった。


「ああ、こりゃひどい。歯が一本も残ってないじゃないか……」


 俺は〈完治2エクストラヒール・セカンド〉で男たちを回復させ、騒がしいので〈空間魔法〉で周囲を囲い、防音しておいた。

 すると、いつの間にかリンファも地下へ降りてきていた。


「アレス様、こいつらも奴隷にするのですか?」


「うーん……そのつもりではいる。ただ、奴隷商の免許を持ってるのはセレナだけなんだよな」


 奴隷にすること自体は俺にもできるが、国への申請は奴隷商でなければ無理だ。


「それなら、今後のために私も奴隷商の免許を取得しておきましょう」


「いや、リンファは〈隷属魔法〉を持ってないだろ?」


「だから、私に〈隷属魔法〉をください」


「いや、今日の夜からは〈緋桜(ひざくら)守人(もりびと)〉のスキルレベルアップと――」


「いえ。夜ではなく、今、この場でいただければ大丈夫です」


 ……今?

 俺は牢屋の中にいる男四人の視界を遮断し、その場でリンファに〈隷属魔法〉を付与した。


 ただしレベル8のため、〈脳状態復元(ブレインリストア)〉で記憶のないリンファは、「あと一回だけ普通にして」とせがんできたので、そこまで付き合うことになった。


 あとになって、エルマがすでに〈隷属魔法〉を持っていたため、エルマに奴隷商の免許を取ってもらう手もあったことに気づいたが……まあ、いいか。


 リビングへ戻り、改めてレオンと話す。


「だいぶやったな。あそこまでやらなくてもよかっただろうに」


「捕まってた子供の中で、一番年上の子がな……俺の娘と同い年だったんだ。親として許せなくて……つい、加減を間違えた」


 なるほど。レオンの娘は十五歳なのか。


「レオンの娘さんって、王都の学園に通ってるんだよな? あれって、誰でも入れるのか?」


「ああ。その年に十二歳になる子供なら、誰でも入学試験を受けることができるぞ」


 年齢制限があるわけか。


「ほかに学校はないのか?」


「騎士学院と魔術学院があるが、どちらも入学試験を受けられるのは十二歳だな。あとは高等学園や高等学院があるが、これは学園や学院を卒業した者しか入れない。うちの娘は、来年から高等学園に通う予定だぞ」


 ふむ。子供たちに教育を、と考えていたが、年齢制限と試験があるのか。


「子供が働けるのは、何歳からなんだ?」


「特に制限はない。ただ、街で見かけるのは十歳以上が多いな」


 救助した子供たちは十歳以上だった。全員、働くこと自体はできるのか。

 しかし冒険者は十五歳からだったはずだ。


「アレス、おそらくだがな。今回救助した倉庫は、“売れる”子供だけを集めた施設だったんだと思うぞ。すぐに働ける年齢で、しかも女子が多いのも、そのためだろう。だから、ほかの年齢の子供を集めている施設も、別にあるはずだ。……聞き出せなかったが」


 たしかに、九歳以下の子供がいないのは不自然だ。

 場所がわかり次第、救助に向かう必要があるな。

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