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百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~  作者: 凪山キコ
第三章 エヴァルシア開発編

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096 ドラゴンでの移動と学術都市

 エヴァルシアへ向かったセレナたちを見送ったあと、俺とルビナ、ターリア、そして〈蒼薔薇の刃〉の七人は、エルセリオン王国を目指して王都の北門を出た。人目につかない場所まで移動したところで、俺は足を止める。


「ターリア、ドラゴンになってもらえるか?」


「いいよ、お兄さん」


 そう答えると、ターリアは迷いなく全長十五メートルを超えるブルードラゴンへと姿を変えた。

 初めて目にする光景に、〈蒼薔薇の刃〉の四人は目を丸くして驚いている。


「アレスもドラゴンになれるんじゃないの? ターリアから〈変身魔法〉複製してるんでしょ?」


 ルビナが、当然のようにそう言ってくる。


「確かになれるはずだが、まだ一度も変身したことがないし、飛んだこともないんだ」


「じゃあ、練習しなよ。アタシが背に乗ってあげるし」


 えっ。ぶっつけ本番で人を乗せるのか?

 一度ターリアのブルードラゴンに乗ったことがあるから、なんとなくコツはわかるが、正直、かなり怖い。


「ほら、アレス! さっさとドラゴンになりなさい!」


 見た目は小柄なのに、態度だけは立派なお姉さんなルビナ。

 実際、年齢的にも彼女はお姉さんなのだが。


 仕方なく、俺もドラゴンへと変身した。ターリアと大きさこそ同じだが、俺の姿は『エルセリオン地下迷宮』のボスとして出現していた、いわばごく普通のドラゴンだ。


「おお! なかなか格好いいじゃないの、アレス。ほら、しゃがんで」


 ルビナは小さな体で器用によじ登り、俺の背中のあたりへと落ち着く。


「じゃあ、ターリアは〈蒼薔薇の刃〉の四人を乗せて! 国境まで飛ぶわよ!」


 いつの間にか、完全にルビナが仕切っていたが、まあいいだろう。任せることにした。


 俺はルビナを落とさないよう、慎重に翼を広げて飛び立った。

 だが意外なことに、背中のルビナはほとんど揺れを感じていないようだった。


 三十分ほどで国境に到着した。ルビナはすっかり上機嫌だった。


「アレス、全然大丈夫じゃない。空を飛ぶって、すごく気持ちいいのね……結局、今回ターリアは必要なかったんじゃないの?」


「移動だけなら、そうだったかもしれないな。でも今回はターリアにもスキルを取得させたい。だから、このままでいいんだ」


「なるほどね」


 ◇


 国境を越え、さらに三十分ほど飛行して、エルセリオン王国の王都エルドラスへ到着した。


「ほう! ここが学術都市エルドラスなのね! 小さな学生さんがいっぱいいるじゃない!」


 いや、ルビナも大差ないくらい小さいだろう、と心の中で突っ込んだ瞬間。


「アレス、なんか言いたそうね」


 鋭い視線が飛んできた。


「あ、いや。ほら見てルビナ。ここの冒険者、大体みんな魔物素材の武具を身につけてるんだぞ」


「あ、ほんとだわ。それだけでもアルトヴィアとは、だいぶ雰囲気が違うわね」


 なんとか話題を逸らすことに成功した。


 ◇


 王都エルドラスにある《万紫千紅》の屋敷は、相変わらず立派だった。

 ここだと説明しても、最初は誰も信じなかったほどだ。


「アレス、本当にここなの? アルトヴィアの屋敷より、全然立派じゃない!」


 ルビナは目を輝かせて屋敷を見上げている。どうやら相当気に入ったらしい。


「アルトヴィアの屋敷は冒険者用だが、ここは元貴族の屋敷だからな。部屋も三十以上あるぞ」


 〈蒼薔薇の刃〉の四人は、口を開けたまま呆然としていた。


 全員を連れて屋敷の中へ入る。


「ヒカルたちが去るときに荷物は全部持っていったから、中は空っぽだ。今日は家具も含めて、〈蒼薔薇の刃〉が今後生活するのに必要なものを揃えよう」


 そう言うと、〈蒼薔薇の刃〉のリーダーであるカミラが一歩前に出た。


「家具については、向こうである程度購入してきていますのでご安心ください。あとで細々したものを買い足しましょう。部屋はどこを使ってもよろしいのですか?」


「ああ、好きな部屋で構わない。ただし、一番広い部屋だけは、しばらく俺が使うから、それ以外で頼む」


 俺は一番広い主寝室に、十人は寝られる大きなベッドを一つ設置した。

 今後、移動の際はこのベッドを持ち歩くつもりだ。屋敷に置いていても使うのは結局俺だけだし、その方が都合がいい。


 もっとも、リンファによれば、同じサイズのベッドをすでに複数発注しているらしい。

 おそらく近いうち、どの屋敷にも十人は寝られるベッドが設置されることになるだろう。


 その後は街に出て食事や買い物を済ませたが、終わった頃にはすでに十五時を回っていた。

 そのため、ダンジョンへの挑戦は明日の朝からとなった。


 ◇


 その日の夜、ルビナとターリアが俺の部屋を訪ねてきた。


「お? 珍しい組み合わせだな。どうした?」


 俺がそう訊ねると、ルビナは顔を赤くし、怒ったように言い放つ。


「この時間に来たら、わかるでしょ! 言わせないでよ!」


 ……え、マジか。

 二人同時に相手をしろということなのか。


 しかもこの組み合わせ。

 二人とも顔立ちが幼く、元の世界なら中学生くらいに見える。成人していると分かってはいるのだが、どうにも背徳感が拭えない。


 その夜は、二人が希望するスキルを与え、それぞれ一つのスキルをレベル9まで引き上げた。


 【レベルアップ、または新たに渡したスキル】

 ルビナ:革加工[9] 鑑定[8]、調査[8]、分析[8]

 ターリア:革加工[9] 染色[8]、織布[8]


 ◇


 翌日、ダンジョンアタック一日目。

 すでに一度攻略済みのダンジョンであり、〈催淫〉対策も万全だったため、その日だけで地下四十階まで到達した。特に問題はない。


 普段と違った点があるとすれば、ルビナのミスリル製バトルハンマーで魔物が遥か彼方へ吹き飛んでいくことと、空中の敵がターリアのミスリルの弓で瞬く間に倒されていくことくらいだった。


 〈蒼薔薇の刃〉には、ドロップに変わる前に亜空間へ収納する方法を教えてある。

 そのため今回はすべて彼女たちに任せ、俺はほとんど何もすることがなかった。


 そして、その日の夜も――ルビナとターリアが、俺の部屋にやってきた。


「え? 今日もなの?」


「ダメなの?」

「……ダメなの? お兄さん」


 若干涙目で俺を見る二人。


「いや、ダメじゃないけど……」


 結局その日も、二人の希望するスキルをレベル9まで引き上げた。


 【レベルアップしたスキル】

 ルビナ:木工[9]

 ターリア:織布[9]


 ◇


 翌日、ダンジョンアタック二日目。

 問題なくダンジョンを踏破した。


 ドラゴンについては、ルビナとターリアが倒したがっていたが、今後のことを考え、〈蒼薔薇の刃〉の四人だけで対処してもらうことにした。


 最初は剣で挑んでいたものの、やはりドラゴンの鱗は硬く、ミスリル製の武器でも簡単には通らない。

 時間をかければ剣だけでも可能だっただろうが、結局〈共鳴崩壊(レゾナンスクラッシュ)〉を使うのが最も楽、という結論に落ち着いた。


 明日以降も、〈蒼薔薇の刃〉には地下四十一階から地下五十階を周回してもらう予定だ。今後は基本的に〈共鳴崩壊(レゾナンスクラッシュ)〉で倒すらしい。


 それぞれ新たなスキルを得たが、〈蒼薔薇の刃〉の得たスキルは〈黄金の祝福〉を除けばデメリット付きとはいえ、瞬間的な爆発力は非常に高い。

 そのため、その日の夜に四人からスキルを複製させてもらった。



 【得られたスキル】


 ルビナ:〈相槌(鍛冶)〉

 二人で相槌を打ち、武具を作成する際、双方の鍛冶スキルが+1される。


 ターリア:〈秘伝服飾〉

 〈裁縫〉スキルレベル+2。新素材の利用法やデザインを次々と思いつく。


 カミラ:〈紅蓮覚醒〉

 赤色の髪の場合、三分間だけ能力を倍加できる。使用後、三分間行動不能。


 ヴァレリア:〈白銀覚醒〉

 白色、または銀色の髪の場合、三分間だけ能力を倍加できる。使用後、三分間行動不能。


 イザベル:〈黄金覚醒〉

 黄色、または金色の髪の場合、三分間だけ能力を倍加できる。使用後、三分間行動不能。


 リシェル:〈黄金の祝福〉

 黄色、または金色の髪の場合のみ使用可能。味方全員の攻撃力・防御力・魔力・敏捷性を、三分間三割増加させる。

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