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5・傍若無人の悪女様-1


 私は自室の机の上で、『聖女シエロ』の知識を書き出していた。今後の作戦を練るためである。


 WEB小説『聖女シエロ』のあらすじはこうだ。


 体に釣り合わぬ大きな聖女の力のせいで病弱な公爵令嬢シエロ・デ・メディオディアは、体力がつくまで公爵領の田舎で使用人とともに伸び伸びと過ごしていた。 


 体力がついたころ、デビュタントを前に王都で淑女教育を受けることになる。王都に向かう途中、彼女は山賊に扮したノクトゥルノ公爵家の配下に襲われるのだ。


(でも、シエロが可憐すぎて、うちの配下の魔導師が逃がしちゃうのよね。魔法で彼女の髪色を変え、記憶を封じて。まぁ、気持ちはわかるわ)


 私はウンウンと共感する。WEB漫画で見た幼いシエロは天使のように可愛らしかったのだ。殺せるわけなどない。


 その後、シエロは劣悪な孤児院に収容され、そこで生涯の友人、セリオンとテレノに出会う。幼い三人はそこで友情を深めつつ、孤児院の状況を改善していく。


(孤児院で暮らす健気な少女が噂になり、メディオディア公爵家が様子を見にきて運命の再会になるのよね! 魔法が解除され髪色と記憶が戻るシーンは最高だったわ!)


 そしてシエロは公女に返り咲く。セリオンとテレノは、不遇時代のシエロを守ったとして一緒に公爵家に召し抱えられた。


 その後、学園に通い出したシエロは物語のヒーローであるイービス・デ・マニャーナに出会う。ふたりは恋に落ちるが、イービスには親が決めた婚約者がいた。


(そう! 私、完全無欠の悪女デステージョ様よ!)


 目立つシエロは当て馬的悪女たちにより、学園内でイジメられるのだが、その中心にあたるのがデステージョである。


 悪魔に支配されたデステージョは、イービスとシエロの仲を裂こうと数々の悪事を働く。その過程でシエロは聖女として覚醒する。イービスとシエロは悪魔に支配されたデステージョを成敗し、幸せに結婚する。その後、ノクトゥルノ公爵家の罪が明らかになり、ノクトゥルノ公爵家は一家断絶、というのが大まかな内容だ。


(健気なシエロが頑張る姿が尊かったのよね。シエロには絶対に幸せになってほしいのよ!)


 そのためには、今後の作戦が必要である。


(そもそも、ノクトゥルノ公爵家がシエロを襲わなければいいんだけど……)


 ノクトゥルノ公爵がシエロの命を狙ったのは単純な理由だった。


 現在、アマネセル王国には公爵家が三つしかない。


 まず、私の家門、ノクトゥルノ公爵家。


 それにシエロの家門、メディオディア公爵家。


 そして、ヒーローの家門、マニャーナ公爵家である。


 うち、シエロとデステージョが婚姻できる年齢の男子は、物語のヒーローであるマニャーナ公爵家のイービスと、デステージョの兄カサドールだけだ。


 そうなると、イービスがシエロと結婚した場合、デステージョは格下か年の離れた相手と結婚するか、他国に嫁ぐかしかなくなる。


 娘を溺愛していたノクトゥルノ公爵は、なんとしてもイービスと結婚させたがった。地位も申し分なく、年齢にも釣り合いがとれ、結婚後も同じ国内で暮らすという条件をクリアするのはイービスしかいないからだ。


 それでシエロが邪魔となり、殺害を企てたのだ。


(ここで、シエロとお兄様との政略結婚を決めないところが、我が家らしいというのか……。きっと、メディオディア公爵家から干渉されるのを嫌がっているのよね)


 私はウーンと考える。


(ということは、私がイービスとの結婚を嫌がれば、シエロを殺害しようとはしないわけよね?)


 私自身は、別に格下に嫁ぐことは厭わない。どのみち、前世よりはマシだろう。一家断絶するくらいなら、他国に嫁いだっていいし、年の離れた相手でもかまわないのだ。


(ということは、まず、私がイービスとの結婚を嫌がればいいだけだわ。そうすればお父様も配下にシエロの殺害を依頼しないはず)


 これは簡単そうだ。


(あと、原作補正がかかっても対応できるように、シエロが収容されるはずの孤児院を押さえましょう!)


 ノクトゥルノ公爵家が山賊を派遣しなくても、旅行中に山賊に会う可能性もあるのだ。


 その場合に、少しでも早くシエロを保護できるように準備を整えることにした。



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