46・快刀乱麻の悪女様-3
「どうやら、パハロス先生はこの中身がなんなのかご存じの様子ですね」
「ッヒ!」
セリオンの言葉に、パハロスは悲鳴をあげかけ、口もとを両手で押さえる。
「錯乱の呪い? 面白いじゃない。誰がどのように錯乱するのか見てみたいわ!」
私が微笑むと、パハロスは涙を流しながらその場に跪いた。
「お願いです……。やめて……やめてください……。私が、かけました……」
パハロスの告白を聞き、セリオンは私を見た。
「いかがいたしましょうか? デステージョ様」
パハロスは縋るような目で私を見上げる。
「デステージョ……様、お許しください……。お願いします」
「では、素直に罪を認め、学園長にすべてお話ししてくださいますか?」
尋ねると、コクコクと激しくうなづいた。
「……呪いの液体を入手し、演劇の小道具に混ぜるように提案したのは私です。寮監としての指導について、異議を申し立てられ、……生徒たちの前で恥をかかされたことに対する意趣返しのつもりでした……」
告白するパハロスに学園長が尋ねる。
「寮監としての指導に異議とは?」
パハロスは唇を噛みしめうつむいてから、静かに顔を上げた。
震える唇で答える。
「……シエロさんを排斥しようとした生徒に協力し、罪を隠蔽しようとしたことです……」
そう言うと、床に伏して嗚咽した。
学園長は私を見る。
「本当ですか?」
「はい。私が信じられないようであれば、アスールの生徒にご確認ください」
「なぜ、そのとき申し出なかったのですか?」
学園長に尋ねられ、私はため息をついた。
「心を入れ替えてくださると信じたからです。まさか逆恨みされるとは思いませんでした」
私の答えを聞くと、パハロスはワッと声をあげて号泣した。
学園長が生徒会長を見る。
生徒会長はうなづき、私を見た。
「デステージョ・デ・ノクトゥルノへの退学を求める訴えは棄却する」
私はホッとして、頭を下げる。
「無実が明らかとなり安心いたしました」
講堂内はパチパチと拍手で満たされた。
「よかったな! デステージョ様!」
はしゃいでいるのはテレノだ。
イービスもシエロも、セリオンもカサドールも喜んでいる。
学園長は生徒会長の隣に立ち、皆に告げた。
「パハロスと共謀した者については、学園裁判ではなくアマネセル王国法によって裁くとする」
フィロメラたちは、顔を真っ青にした。
「そんな! ちょっとイジメただけなのに……!」
「こんなことになるなんて、思わなくて! お父様には言わないでください!」
学園長はフィロメラたちに毅然と言い渡した。
「あなたたちのしたことは傷害です。きちんと罰を受けなさい」
フィロメラたちは声をあげて泣き崩れた。
私は彼女たちを見て小さくため息をつき、髪を掻き上げる。
「では、私は退廷いたしますわ」
きびすを返し、カツカツと音を立て講堂の出口へ向かう。
セリオンは証拠品を持ったまま私のあとをついてくる。テレノとカサドールも合流し、私たちは講堂を出た。
「はぁぁぁ、疲れたわ」
私は大きくのびをすると、カサドールが私の頭をヨシヨシと撫でた。
「よく頑張ったぞ、デステージョ! さすが俺の妹だ」
「ありがとうございます。お兄様。お兄様とテレノが証拠を回収してくださったおかげで、助かりました」
カサドールとテレノは、フフンと胸を反らしドヤ顔をする。
私はセリオンにも感謝する。
「セリオンもありがとう。あなたの保護魔宝石のおかげで、無事解決できたわ」
セリオンはクシャリと少年のように微笑んだ。
「いえ、役に立ててうれしいです。この呪いは、いつでも使えるよう、厳重に保管し直しますね」
幼げな微笑みとは裏腹に、怖い発言をサラッとして、私はゾッと背筋が凍る。
(パハロス……。とんでもない相手に弱みを握られたわね)
私は曖昧に笑うと、セリオンは小首をかしげた。
「どうしましたか?」
当然のことでもいったかのように無邪気な表情だ。
「ううん。なんでも。ソレについてはセリオンに任せるわ」
私は笑顔を貼り付けて答えた。
(……セリオンだけは敵に回さないようにしよう……)
私はヒッソリと思った。
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