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【完結】完全無欠の悪女様~悪役ムーブでわがまま人生謳歌します~  作者: 藍上イオタ@天才魔導師の悪妻26/2/14発売


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45/50

45・快刀乱麻の悪女様-2


「支離滅裂ね。私がシエロ様に聖女の力がないと知っていて、それを暴くために自分で毒を飲んだというの? 馬鹿馬鹿しい。なんで私がそんなこととのために苦しまなきゃいけないのよ。私だったら違う人間に飲ませるわ」


 私は鼻で笑う。


「たしかにそれはそうね」


「悪女と呼ばれるデステージョ様なら、他人に毒を盛ることもありえなくはないない」


 不本意だが、傍聴席からは納得の声があがる。


「デステージョ様……信じてくださるんですね」

 

 シエロは私を見てホッとしたようだった。涙が目尻にたまっている。


「信じるってほどのことでもないでしょ」


 私は呆れ半分で答える。


 しかし、フィロメラは余裕の表情だ。


「あら? おふたりは信頼関係で結ばれているご様子ね。もしかしたら、デステージョ様が苦しむフリをしてシエロ様が聖女に覚醒したかのような印象をつける――ふたりで共謀したのでは?」


 ざわつき喧々囂々となる講堂内を見て、フィロメラはドヤ顔をした。


(計算どおり……といった顔ね)


 私は肩をすくめた。


「シエロ嬢はそんなことはしないと思いますよ」


 声をあげたのはイービスである。


 シエロは半泣きな顔でイービスを見上げる。


 イービスはシエロを安心させるかのように微笑んだ。


「デステージョが舞台上で飲んだ物の成分を分析してみるのはどうでしょう? 飲みきってしまっていて、カップに少ししか残っていないのですが、なにもしないよりはいいでしょう」


 イービスが皆に提案する。


(なによ。私が追い込まれていたときは傍観していたのに、シエロの立場が悪くなったら前に出るわけ?)


 私は鼻白みながら、イービスを見た。


 シエロはキラキラとした目でイービスを見ている。


「イービス様……!」


 シエロにとっては、ピンチに現れた白馬の王子様に見えるのだろう。


 私はレアルをチラリと見た。


「どうかしら? なにも仕込んでないのなら、調べても問題ないわよね?」


 私が尋ねると、レアルはサッと顔色を青くした。


 フィロメラが一歩前に出る。


「かまわないわよ。ね?」


 念押しするフィロメラだが、レアルは口を噤んだままだ。


 しびれを切らしたフィロメラが、勝手に答える。


「いいわよ。調べればいいじゃない。証拠がなければ、彼女に対する拉致監禁について、責任を取っていただくわよ」


 フィロメラは笑った。


「そう? じゃあ。セリオン」


 私はセリオンを呼びつけた。


 セリオンは木製のプレートの上に、保護魔宝石と小瓶を乗せてやってきた。


 そして、生徒会長の前にそれを届けた。


「これは?」


 生徒会長がセリオンに尋ねる。


「こちらの小瓶は、カサドール様がそちらの令嬢の持ち物から発見したものです。そして、こちらの保護魔宝石は、舞台上でデステージョ様が口に含んでいたものです」


 レアルがガタガタと震え出す。


「この保護魔宝石には、特殊な魔法陣が組み込まれており、毒物や魔法などを吸収し保管する機能があります。デステージョ様が飲んだものもこの保護魔宝石に保存されています。ここで、保護魔宝石を解放し、内容物と比較してもよいでしょうか?」


 セリオンが尋ねると、生徒会長はうなづいた。


「分析官を呼んでください」


 生徒会長が学園長に頼む。


 すると、フィロメラが顔を青ざめさせた。


「……! な、なんで、そんなものを口に含んでいるのよ! きっとこれも自作自演……」


「私、悪女として有名ですの。命を狙われることもあるかと思って、安心できないものを口にするときは、このような自己防衛をしているのですわ」


 私は微笑み周囲を見回すと、講堂内は静まりかえった。


 すると、今まで傍観していたパハロスが立ち上がった。


「生徒間のトラブルで、分析官を使って犯人捜しをするのは教育上いかがなものかと……」


 シレッとよい教師のような振りをする。


(ここでも、フィロメラをかばうのね?)


 私は鼻で笑い飛ばす。


「では、分析官を呼ばなくてもかまいませんわ。あの保護魔宝石の中には呪いが閉じ込められているようですの」


 私が告げると、騒然となる。


「呪い? 呪いなんて、私聞いてない」


 蒼白になったのはフィロメラだ。


「失敗した呪いなら、ここで解放すれば本人に返るでしょう。セリオン、呪いを解放して!」


 私が命じると、セリオンが保護魔宝石をつまみ上げた。


「やめて!! やめなさい!!」


 叫び声をあげたのはパハロスだった。


 皆が、パハロスに注目する。

 

 パハロスはハッとして、その場にグズグズと座り込んだ。


(もしやとは思っていたけれど、パハロスが主犯だったの!?)


 私は、あきれかえって言葉も出ない。自分は安全圏にいて、生徒を実行犯にさせるとは教育者の風上にも置けない。


 学園長が目配せし、警備の者たちがパハロスを取り囲む。


「……あ、いえ……、私は……、この場の安全を考えて……」


 言い訳をするパハロスの肩に、学園長は手を置いた。


「教師として、生徒たちの模範になるものとして、本当のことを言ってください」


 学園長の言葉にパハロスは首を振った。


「信じてください! 私では、私ではないんです! みんな、あの子たちが! あの子たちが私に相談してきたから!」


 そう言ってフィロメラに指をさす。


 フィロメラはカッとなって言い返す。


「私に罪をなすりつけるおつもりですか!!」


「そもそも、あなたがシエロをイジメようとしなければ、こんなことにならなかったのよ!! あなたの相談に応じただけだわ!!」


 醜い争いが始まって、周囲はあきれ顔になる。


「では、やはり保護魔宝石を解放するのが早いでしょう」


 セリオンは静かにそう言うと、保護魔宝石をつまみ、パハロスとフィロメラ、レアルに見せつけた。


 パハロスはヒュッと息を呑む。


「呪いをかけた方へ呪いは返るのだから」


 そう言って、セリオンは無情に保護魔宝石に力を込めた。


 ピシリ、保護魔宝石にヒビが入る。


「だめよ! やめて!! 錯乱の呪いが解放されるわ――!!」


 パハロスが叫び、セリオンは凄艶に微笑んだ。


 美しすぎて怖いほどの表情で、私の心臓がドキリと跳ねた。


(セリオンて、こんな色っぽい顔ができるのね)


 皆同じように思ったのか、講堂の中はシンと静まりかえった。


 パハロスの喉がゴクリと鳴る。



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