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【完結】完全無欠の悪女様~悪役ムーブでわがまま人生謳歌します~  作者: 藍上イオタ@天才魔導師の悪妻26/2/14発売


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44/50

44・快刀乱麻の悪女様-1


 私が目覚めてから、一週間たった。


 私は学園に復帰することにした。しかし、復帰のためには、まず学園裁判へ出廷しなければならない。


 私は学園の講堂に呼び出されていた。ここで学園裁判を開くらしい。


(原作と一緒の流れね)


 原作では、悪魔化したデステージョが拘束され、学園の講堂で学園裁判が開かれるのだ。ノクトゥルノ公爵家の罪は、ここですべて明らかにされ、デステージョとカサドールは退学になる。また、裁判の結果を受け、公爵家は断罪されるのだ。


 私は正面を見上げた。


 講堂の舞台の上は、私が倒れたときのままに保全されている。


 舞台のすぐ下には、学園長と寮監たちが椅子に座って並んでいる。


 教師たちの前に演台が用意され、そこには生徒会長が立っていた。演台の右脇にはイービスとシエロが佇んでいる。


 左脇には、フィロメラと、カサドールが拉致してきた令嬢レアルがいた。


 私の後ろでは生徒たちや、教師たちが傍聴している。なかにはパハロスもいた。


 学園裁判を取り仕切るのは生徒会長だ。


「デステージョ・デ・ノクトゥルノ。シエロ・デ・メディオディアへのイジメを繰り返し、文化祭を混乱させ、学園の自治に介入しようとしたことにより、退学を求める訴えがあるが本当か?」


 生徒会長に問われ、私は鼻で笑った。


(まさか、ここまできて私にシエロイジメの容疑がかかるなんて。さて、どう反撃しましょうか)


 そう思って、顔を上げた瞬間、シエロが私の前に飛び出してきた。私に背を向け、生徒会長に向かい合い、守るように両手を広げる。


「違います! 私はデステージョ様にいじめられたことなんてありません!! いつだって助けてくれています! 変な噂で言いがかりをつけないでください!!」


 言い返そうとしていた私は驚いた。


(ちょ! シエロ! なにをやってるのよ!)


 反論してくるのは、フィロメラである。


「シエロ様はデステージョ様を恐れてそのように言うのですわ。演劇の際も、初めはヒロイン役にデステージョ様が推薦されていましたが、シエロ様に押しつけていました。皆様、見ていたでしょう?」


 フィロメラは、傍聴席を見回した。

 傍聴席はそれに呼応するようにざわめいている。


「たしかに……シエロ様はお優しいから断れない様子だったわ」


「そもそも、イービス様をシエロ様に取られて、デステージョ様が恨んでいるという噂もあったわね」


「だったら、デステージョ様がシエロ様をいじめていたとしてもおかしくはない」


「で、でも、デステージョ様は言動は激しいですけれど、理にかなったことをおっしゃいます」


 傍聴席では、いろいろな意見が飛び交っている。


 その意見を打ち消すように声を張りあげたのはフィロメラの隣に立つレアルだ。


「私は無実の罪で、学園の許可もなくカサドール様に拉致・監禁されたんです!」

 

 レアルが訴える。


「さすがに、拉致監禁はやりすぎだ」


「学園内のことに公爵家が出てくるようでは、今後の自治が危ぶまれますわね」


 レアルは傍聴人たちの声を聞き、力を得たのだろう。一歩前に踏み出した。


「それに、私は拉致されているあいだに、禁忌の魔法の生贄にされるところだったのです!!」


 それを聞いて、学園長を初め寮監の教師たちが、血相を変えて私を見た。


(お兄様ったら、あの子の前でしゃべっちゃったわけね……)


 これは面倒なことになった。


「カサドール様とテレノの横暴も目に余ったな。学園内の器物を破損して、勝手に生徒を犯人扱いし捕らえた」


「そんなことが許されたら安心して学園に通えませんわ」


 カサドールは吠える。


「だったら、俺以外の誰が犯人を捕まえられるんだ? 学園に警備兵でもおくか? 妹が殺されかかったのだ。当たり前のことだろう!」


 一切反省しない言い分に、こちらの風向きは悪くなる。


(お兄様……愛が重いのよ……)


 私は思わずため息をついた。


「お兄様、少し黙って」


 私がピシャリと窘めると、カサドールはシュンとして口を閉じた。


 そして、私はレアルへ優しげな微笑みを向け尋ねる。


「禁忌の魔法の生贄? そのような魔法陣を我が家で見たのですか?」


 すると、レアルは涙目になりガタガタと震えた。


(あら? 答えやすいように柔らかく尋ねたつもりなんだけど)


 レアルは震える声で答える。


「っひ、いえ……見ては、ない、です。……けど……!」


「じゃ、ただの脅しではなくて?」


 私がサクッと答える。

「でも!」


「証拠があるのかしら? ないのなら、あなたが『言われた』ということ自体嘘かも知れないじゃない?」


「……ひど……い……」


「どちらが酷いの? 証拠もなく『禁忌の魔法』なんて謀反を疑われるようなことを言われたら……ねぇ? 黙ってはいられないでしょう?」


 私はチラリとフィロメラとレアルを流し見る。


「そもそも、私は舞台中に毒を盛られた被害者ですのよ?」


 私が言うと、傍聴席の人々はレアルを見た。


「たしかにそうだ!」


「毒を盛った犯人なら拘束されてもしかたがないだろう」


「溺愛している妹が死にそうになっているなら、脅す気持ちもわかる」


 形勢が逆転すると、レアルは必死に反論する。


「私は毒なんて盛っていません!! それ自体が自作自演なのでは? 医師が確認したところ、デステージョ様の体内に毒は残っていなかったと聞いています!」


 するとシエロが生徒会長に訴える。


「それは、私がデステージョ様に浄化の魔法をかけたからです!」


 シエロの反論を受け、レアルは怯んだ。


 するとフィロメラが意地悪い目でシエロを見て、ネットリと笑った。


「だったら、どうして、すぐに目覚めなかったんですか? おかしいじゃないですか? シエロ様の聖女の力がまがいものだというのですか?」


 そう尋ねると、ユックリと穏やかに傍聴席を見回す。


(ああ、フィロメラは私だけじゃなく、シエロも追い詰めたいわけね)


 私は納得する。シエロとデステージョ、ふたりの公女の評判に傷がつけば、フィロメラがイービスの婚約者候補になれるかもしれないからだ。


 傍聴席は騒然となる。


「シエロ様の力が偽物?」


「自分に聖女の力があるように嘘をついていたの?」


「それをデステージョ様が皆の前で暴こうとしたわけか」


「となれば、デステージョ様の罪は問われるべきではないのでは?」


 フィロメラは大仰に驚いてみせる。


「ああ! まさか! シエロ様が嘘をついているのですか?」


「そ、そんなことありません! でも、私にもわからなくて。デステージョ様、信じてください!」


 シエロは半泣きになりながら私を見た。


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