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【完結】完全無欠の悪女様~悪役ムーブでわがまま人生謳歌します~  作者: 藍上イオタ@天才魔導師の悪妻26/2/14発売


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25/50

25・華麗奔放の悪女様-1


 それから一ヶ月後、マニャーナ公爵家でシエロの歓迎お茶会が開かれた。


 マニャーナ公爵家の客間に、同年代の貴族の子どもたちが集められ、シエロの到着を待っていた。


 イービスは玄関先までシエロを出迎えに行っている。


 今日のお茶会ではシエロのために動物カフェの新作を出すことになっていたのでソワソワだ。


 そんな私は貴族令嬢たちに取り囲まれていた。


「デステージョ様、ごきげんよう」


「デステージョ様、先日販売された動物カフェマスコットくじは次もあるのですか? 私、引きそびれてしまって……」


 令嬢たちのあいだでも最近は動物カフェが流行し始めたのだ。公爵令嬢である私が運営している慈善事業であり、イービスが時折現れるということで、貴族たちも立ち寄るようになっていた。また、慈善事業への寄付というていで、カフェで散財できるのが受けているようだ。


 動物カフェでお金を使うと、意識高い系貴族として評価されるのだ。


「次回のマスコットくじの販売は三ヶ月後よ」


「次回こそ参加しますわ!」


 動物カフェマスコットくじとは、孤児院の子どもたちが手作りしたフエルト製の小さく簡素なぬいぐるみをくじ引き形式で販売するものだ。


 動物の種類は四種類だが、布袋に入って販売されていて中身を選ぶことはできない。そのため、気に入った動物が出るまで、もしくは全種類集めるために複数買いする人も多いのである。いわゆるブラインド商法だ。


(私は前世ではお金がなく、くじ系は引けなかったけど、今世は悪女としてこの形式で稼がせてもらうわよ)


 狙いどおり、複数買いする人も多く、貴族の中ではどれだけくじにつぎ込んだか張り合う人たちがいるようだ。


 しかも、くじ引き方式にしたことにより、「選ばれなかった」売れ残りマスコットはなくなり、子どもたちが傷つくこともない。


 複数買いして不要になったマスコットは、私の配下に買い取らせほしい人に売る闇の転売システムも確立した。マスコットの売り上げは孤児院に、転売の売り上げは私のものになる仕組みである。


(ほかの転売屋封じもできて、私も儲かる。完璧な作戦ね!)


 私は内心高笑いである。


「ぜひ、参加してください。なんのマスコットがお好きなの?」


「私はワンちゃんが欲しいのです」


「では、多めに作るように配慮しますわね。特別ですわよ?」


 私の言葉に令嬢はうれしそうにうなずいた。


「ありがとうございます!」


 そこへ、赤い縦ロールの髪が情熱的な令嬢がやってきた。豪華な扇子で口元を隠し、意味深な緑色の瞳を私に向けている。原作上で一番初めに登場する悪女フィロメラ・デ・コラルだ。


 私よりふたつ年上の彼女は、三大公爵家に次ぐ高位の侯爵家の令嬢だ。


(身分的には私のほうが上だけど、年齢的にはフィロメラが上で社交を始めたのも早いから、子どもの中では彼女がリーダー的存在なのよね)


 後ろに取り巻きグループを連れている。


「デステージョ様、今日いらっしゃるメディオディア公爵令嬢のことはご存じですか?」


 扇の奥から問われ、私も扇越しに答える。


「ええ。少しは」


「田舎で羊飼いとともに生活されていたようですわよ」


 フィロメラはあざ笑うように言う。悪意ある噂を流そうとしているのだろう。ちなみにフィロメラは悪女の中でも最弱のいわゆる当て馬キャラである。


(悪口の言い方も原作で見たままね~)


 私は少し感動だ。


 周囲の令嬢たちは眉を顰めた。


「まぁ……、そんな方が?」


「マナーはご存じなのかしら」


 不安げにヒソヒソとする令嬢たちに、フィロメラは意地悪な微笑みを浮かべた。


「きっと、匂うんじゃなくて?」


 フィロメラが言うと、彼女の後ろにいた令嬢たちがクスクスと笑う。


「違いありませんわ」


「近寄ると匂いが移ってしまいそう」


 三人は愉快げに笑い合う。


 すると、周囲の令嬢たちもそれにつられる。


「まぁ、少し心配ですわね」


「田舎の方は粗暴なのが常ですもの」


 不安そうに囁く令嬢たちを見て、私は一応牽制しておくことにした。


(フィロメラもイービス狙いだから……、私を使ってシエロに嫌がらせをさせ、共倒れを狙っているのでしょうけれど、そうはさせないわ!)


 パチンと扇子を鳴らして閉じる。


「私が聞いていた話とは違うわね」


 私の声に令嬢たちの視線が集まったことを確認し、周囲を威圧的に見回した。


「シエロ様は体が弱く領地で療養されていたとのお話よ」


 私の答えにフィロメラが笑顔を引きつらせた。


「では、田舎者というのは本当なのですね。な、なら、やはりイービスにふさわしいのはあんな田舎から来た娘ではないのでは? ……たとえば、デステージョ様とか……」


 探るような目を向けるフィロメラに、私は小首をかしげてみせる。


「イービスと私はお友達よ」


「そんな、誤魔化されなくても……! 呼び捨てをする仲ではないですか! ゆくゆくは婚約と噂になっておりますわ!」


 フィロメラは不服そうに訴え、周囲を見回した。


 取り巻きの令嬢たちは同意するようにうなずいてみせる。


「噂は噂よ。私、お兄様より弱い男には興味ないの」


「っ! イービス様だってお強いですわ!!」


 フィロメラが力説する。彼女はイービスに憧れているのだ。


 たしかに、イービスは同年代の貴族男子の中では一番武術に長け、魔力もあり、知識も豊富だ。


(でも、セリオンのほうが頭がいいし、テレノのほうが強いのよね……)


 と思いつつ、イービスの立場がなくなるために黙ってはいる。


(そもそも、イービスを好きなのは自分でしょうに、なんで私を引き合いに出すのかしらね。欲しいものは自分で奪いなさいよ! 悪女としての気概が足りないわ!)


 私は小さくため息をついた。


「たしかに、イービスはお強いですが、私の兄にはおよびませんし、魔力だけでいったら私のほうが強いので」


 私はニッコリと微笑んで、指先に魔法で火花を散らしてみせる。


 フィロメラは驚いた様子で、一歩後ずさりした。


 ちょうどそのとき、部屋のドアが開いた。


「お待たせいたしました」


 メイドの声に振り向くと、そこにはシエロと彼女をエスコートするイービスが立っていた。




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