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【完結】完全無欠の悪女様~悪役ムーブでわがまま人生謳歌します~  作者: 藍上イオタ@天才魔導師の悪妻26/2/14発売


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24/50

24・一念発起の悪女様-7


 その後、私とシエロ、セリオンとテレノと護衛たちで、一足先に王都へと向かうことになった。


「ありがとうございます! デステージョ様!」


「デステージョ様のおかげで、教会が綺麗になりましたー!」


「デステージョ様、また来てください!!」


 村人たちに盛大に送り出され、私は解せない。


(知らないうちにまた魅了の魔法でも使ってしまったの? だとしたらあの人たちが私に劣情を抱いていたことになるけれど、さすがにそれはないでしょ? みんな、孫を可愛がるみたいだったもの)


 デステージョの力はよくわからない。考えても無駄なので、純粋な気持ちとして受け取ることにした。


「まったく大げさなんだから……」


 ため息交じりにつぶやくと、セリオンが静かに笑った。


「大げさではありませんよ。ボクたちもデステージョ様に救われました」


 セリオンの言葉に、シエロもうなずく。


「そうそう! オレも! デステージョ様がいなかったら、きっと孤児院で嫌われ者だった!」


 テレノがハイハイと手を挙げる。


 私は両耳を手で塞いでそっぽを向いた。


「うるさいわね! お黙り!!」


 三人は顔を向け合ってクスクスと笑っている。


 ガタンと馬車が揺れ私は思わず前のめりになる。すると、セリオンがとっさに私のまえに腕を出し支えた。


「大丈夫ですか?」


「は? これくらい平気よ」


 山賊討伐の一件以来、セリオンは過保護になってしまったのだ。心配かけすぎたせいだからしかたがないのだが、小言が多い。


「平気ではないから、つんのめるのでしょう」


 しかも、少々口が悪い。正確には原作キャラに近づいている。


「うるさいわね」


 私がうんざりした気分で答えると、腰のあたりに魔法の保護ベルトが現れた。


「なによ、これ」


「デステージョ様が前のめりにならないためのベルトです」


「はぁ? 子ども扱いしないでよ」


 私が怒ると、テレノが笑う。


「オレたち立派な子どもだぜ! な?」


 そうして、セリオンとシエロに笑いかけると、ふたりはうなずき笑い合う。


(さすが、原作で仲良かっただけあるわね。あっという間に、気心が知れた……って感じね)


 三対一では分が悪い。私は少し淋しい気持ちで、ふてくされる。


「もういいわよ。勝手になさい!」


 瞼を閉じ寝たふりをする。


(私なりに頑張ってきたけれど……、やっぱりふたりはシエロのもとに行くんだろうな)


 原作のデステージョは、シエロに危害を加え続けた。そのたびに盾になったのは、セリオンとテレノのふたりだ。


(原作みたいに敵対するのは嫌だもの……。嫌われる前に送り出してあげなくちゃ)


 私はギュッと目をつぶり、目の奥の熱が漏れ出さないようにした。

 


 帰り道は順調で、一日ほどで王都に到着した。


 そのままシエロをメディオディア公爵家へ送り届ける。ノクトゥルノ公爵家へ連れ帰って、変な疑いを持たれたら嫌だからだ。

 

 先に伝令を送っていたため、シエロの到着にメディオディア公爵家はわきたった。


 玄関から飛び出してきたのは、メディオディア公爵夫妻とシエロの十歳年上の兄である。


「シエロ! よく無事で戻った!」


「お父様! 私、デステージョ様に助けていただいたんです。ぜひお礼をしてください」


 シエロが振り返り私を紹介する。


 メディオディア公爵は驚いた様子で私を見た。


「あなたが噂のデステージョ嬢か!」

 

 どうやら、メディオディア公爵にも悪女の噂は届いているらしい。


(誘拐の濡れ衣でも着せてくる? だったら、私も迎え撃つまで!)


 私は得意満面で鼻を鳴らし、悪女らしく髪を払った。


 しかし、メディオディア公爵は紅潮した頬で礼を言う。


「我が娘をよくぞ助けてくださった。後ほどあらためてノクトゥルノ公爵家へお礼を届けよう」


(……思ってたのと反応が違うわね?)


 予想外の反応に気圧されながらも、私は答える。


「別にたいしたことなどしておりませんわ。それよりも、村へ人を派遣なさったら? ほかにも行方不明の使用人がいるでしょう?」


「……! ああ! そうすることにしよう! 噂のとおりデステージョ嬢は下々の者にまで優しいな」


 シエロと同じ青空色の瞳をキラキラさせて言う。


「戯れ言を。シエロ様は間違いなくお届けしましたわ。それでは」


 話を切り上げ、サッサと屋敷に戻ることにした。



 そうしてノクトゥルノ公爵家へ戻ると、そこはそこで別の騒ぎが起きていた。


 私のことまで両親が出迎えてくれたのだ。


「よくやった、デステージョ!」


「無事で良かったわ、デステージョ!」


 ふたりにギュッと抱きしめられ、私は目を白黒させた。


「……なにごとですか……」


 私の問いに、カサドールが答える。


「山賊に攫われるとはデステージョはまだまだだなっ! だが、山賊を壊滅させた上、メディオディア公爵家の令嬢を救い出すとは、まぁ、マシになったとでもいってやろうか!」


 憎まれ口を叩いているカサドールの目もとは真っ赤である。泣いていたのが明らかで、私は思わず口もとが緩む。


「お兄様のご指導のたまものですわ。ありがとうございます」


「……! そうか! そうだな!!」


 私は両親の腕からすり抜け、カサドールの前に行った。


 そして、両手を広げてみせる。


「でも、少しは褒めてくださいませんか? お兄様」


 小首をかしげてハグをねだってみせると、カサドールの瞳から大粒の涙が溢れた。そして、ギュッと力強く私を抱きしめる。


「心配をおかけして申し訳ありません」


「心配などしてなかった!!」


「……そうですか」


「なぜなら、お前は俺の妹だ! だから、……そうだ。よくやった!!」


 カサドールは、なにも言えないほどの勢いで泣いている。あまりにも力が強すぎて苦しすぎる。


(お兄様、愛が暴走しているわ……! く、苦しいっ!!)

 

 両親はそんな私たちを微笑んで見守っている。


「本当にデステージョは誇らしい娘だ」


 ノクトゥルノ公爵が私の頭にポンと手を置いた。


「私ひとりの力ではありませんわ。セリオンやテレノ、同行の護衛たちが私を守ってくれました」


 答えると、静かにうなずく。


「セリオンとテレノは、正式にデステージョの護衛騎士に任命しよう。ほかの者たちにも褒美を取らせる!」


 ノクトゥルノ公爵の宣言に、ワッと歓声があがった。



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