表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】完全無欠の悪女様~悪役ムーブでわがまま人生謳歌します~  作者: 藍上イオタ@天才魔導師の悪妻26/2/14発売


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/50

21・一念発起の悪女様-4


「デステージョ様はどこだ!!」


 表からテレノの怒鳴り声が聞こえる。


「は? うそ? もう来たの!?」


 テレノの到着があまりにも早く私は驚いた。


「知らねーよ! なんだぁ? そんな模造刀なんかもって、騎士様気取り――」


 ボカリと鈍い音がして、山賊の言葉が途中で途切れる。


「ガキだと思って優しくしてやれば!!」


「調子に乗りやがって!!」


 慌てる山賊にテレノが問う。


「金髪で青い瞳のすごくすごくすごーく綺麗な天使みたいなお嬢様、ここにいるだろ!?」


 テレノが声を荒らげると、シエロが私をマジマジと見た。


 そして、小さくフフフと笑う。その可憐な様子がたまらなく可愛らしくて、私の胸は思わず高鳴る。


(さすがヒロイン! 可愛いわね)


 私は思わず見蕩れてしまう。


 そんな私を見て、シエロは眩しそうに目を細めた。


「あの、あなたのことですよね? すごく大切にされてるんですね」


 私は気まずい気持ちで目を逸らす。


「っ! さっきの娘の知り合いか!」


「おい! お前、娘たちを連れて先にいけ!」


「おう!」


 山賊たちはテレノを足止めするグループと、私たちを連れさるグループに分かれたらしい。


「やっぱりここにデステージョ様がいるんだな!」


 そうテレノが吠え、山賊たちに襲いかかっている音が聞こえる。


 乱闘が始まったらしい。


 男たちの怒号が響き、シエロは頭を抱えてブルブルと震え、瞳いっぱいに涙をためている。


「こっちへ」


 私はシエロの手を引いてドアのある壁の右側の壁側に座らせた。そして、ドアに保護魔法をかける。


 山賊たちがガチャガチャとドアノブを乱暴にドアを回した。


 その瞬間、ドアノブに電撃が走る。


「いってぇ!! なんだこれ!!」


「静電気なんてもんじゃねぇぞ! くそ!!」


 混乱する山賊たち。


 そんななか、ドアの正面、外に面した壁の板にボワリと魔法陣が輝き浮き出てきた。


 大きく正確な魔法陣はセリオンのものだ。

 

 一応、自分とシエロに保護魔法をかける。


「っ、なにが起こるんですか」


 シエロが震える声で尋ねる。


「大丈夫よ。あなたのことは助けるから、目を瞑っておいでなさい」


 私はそう言って青空色の頭をギュッと抱きしめた。


 同時に、壁が光り輝く。セリオンが魔法陣を発動させたのだ。


 そして、バリバリ音を立て壁が左右に割れた。割れる壁の向こうからセリオンが現れる。


「セリオン!」

 

 砂埃の舞う中、立つセリオンは怒りに燃えた顔をしていた。


(こ、こわい……。なんで、こんなに怒ってるの!?)


 私はゾッとして、思わずシエロを抱きしめる腕に力を込める。


「デステージョ様!」


 私を確認すると、セリオンは一転して泣きそうな顔になった。そして、シエロに目もくれず私に駆け寄ってくる。


「大丈夫ですか? いったいなにが」


「とりあえず、彼女をつれて外へ出るわよ」


 私が言うとそこではじめてシエロを見た。


「この方のせいでデステージョ様が危険にさらされたのですか!?」


 そう怒りの目を向ける。


(今までこんなふうに怒ったことなんてなかったのに……)


 セリオンは原作では毒舌で小言の多いキャラだったが、私に対しては従順だった。


 セリオンのいつもと違う剣幕に冷や汗ものである。


「デステージョ様ぁ! ここかぁ?」


 ドアのある壁の向こうから、テレノの呼び声が聞こえる。すでに、山賊たちを打ちのめしたのだろう。


「ここよ! テレノ。大丈夫――」

 

 言いかけた瞬間、テレノの声が私の言葉に被さった。


「ここか!!」


 同時に、ドアのある壁が大きく揺れて、テレノの拳が突き出した。


「やめなさい! テレノ、小屋が潰れるわ!」


「こんな小屋、山賊ごと潰せばいい!」

 

 どうやらテレノも怒り心頭らしい。バキバキと壁を破って私たちに合流する。


「デステージョ様! いた!」


 テレノは満面の笑みで私を見た。尻尾を振る大型犬のようである。


 それを見ると毒気が抜けてしまう。


「もう! ここから出るわよ!!」


 呆れつつ、私はシエロを抱きかかえたまま、外へとまろびでる。


 セリオンは私たちに魔法の防護壁をはり、テレノは背後を守った。


 私たちが外に飛び出た瞬間、セリオンはもうひとつの壁も壊す。すると、一気に家が傾いた。


 山賊たちの多くは潰れた小屋の下敷きになり、そこから出ようと奮闘していた。


 辛うじて倒壊から免れた者が私たちを追いかけてくる。


「待て!」


「逃がすか! ガキども!!」

 

 テレノが山賊に対峙し、模造刀でボカスカと打ちのめしていく。


「っ! なんだこいつ!」


「やべぇ!!」


 私はシエロを抱いたまま、山賊たちに向き直った。


「デステージョ様!?」


「セリオンはそのまま防御壁を維持して」


「はい」


「あなたは目をつぶって耳を塞いで」


「っはい!」


 シエロはギュッと目をつぶって両手で耳を押さえた。


「山賊団にはお仕置きよ!!」


 私は指を振り上げた。


 お得意の電撃魔法を山賊団たちに繰り出した。


「ウギャァァ」


 男たちは電気で痺れてその場に倒れこむ。


「山賊をひとり残らず捕まえなさい! そして、盗品もすべて持ち帰るのよ!」

 

 私が命じると、護衛たちが山賊の根城に向かっていく。あれよあれよというあいだに、山賊の根城は制圧された。


「私たちを敵に回すなんて馬鹿のやることよ」 


 思わずつぶやくと、腕の中でシエロがキラキラの瞳で私を見上げていた。


 私はシエロを地面に下ろす。


「もう大丈夫よ」


「あ、ありがとうございます」


「とりあえず、私たちと一緒に村へ行きましょう。詳しい話はそこで聞くわ」


 シエロはコクリとうなずいた。


 すると、セリオンはズイと私の前に出た。怒りを隠さない表情である。


 後ろではテレノも腕を組み、私を睨んでいる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ