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【完結】完全無欠の悪女様~悪役ムーブでわがまま人生謳歌します~  作者: 藍上イオタ@天才魔導師の悪妻26/2/14発売


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14/50

14・千客万来の悪女様-4


「それで、この無礼なお馬鹿さんにはどんなお仕置きが必要かしら?」

 

 男に尋ねる。


 男は潤んだ瞳でホウとため息を吐き出した。


「……叩いてください。女王様……」


「……は?」


 思わぬ回答に私は混乱した。


(そういえば、原作のデステージョって魅了の魔法も使えたわね)


 デステージョは、彼女に下心を持った者に限り、魅了の魔法をかけ操ることができた。しかし、魅了の魔法を使うと人の心が信じられなくなるため、私は使うつもりはなかったのだ。


(だって、魅了の魔法を使ったら、魔法で好かれているのか、純粋に好かれているのか区別がつかなくなっちゃうじゃない。……でも、もしかして、無意識に発動しちゃった? それにしても、この人、調教師姿の子どもに下心を持ったってこと? なかなかに気持ち悪いわね)


 そんなことを思っていると、背後に冷たい空気と、熱い怒気を感じて振り向く。


 冷たく微笑んだセリオンと、怒り心頭に発したテレノが立っている。


「変態はボクが成敗いたします」


 空中に指で魔法陣を描くセリオン。


「いや、オレが殴ってやるよ!」


 テレノがボキボキと指を鳴らす。


 男はヒッと後ずさりした。


「すいません、申し訳ございません。失礼いたしました!!」


 そう言って土下座すると、一目散に店から逃げ出していった。


「……あら、これからがお楽しみだったのに」


 私が肩をすくめると、店内にワッと歓声が満ちた。


「ご主人様ぁ、ありがとうございます!」


 私に抱きついてくるウサギ耳の子ども。


「怖い思いをさせてしまってごめんなさいね? もう嫌ならお店に来なくてもいいわよ?」


「ううん! 大丈夫、デステージョ様かっこよかった! 私もそんなふうになりたい」


 ウサギ耳の子どもはニッコリと笑う。


「あの男、新規店に行っては問題を起こすことで有名だったのよ。今度のことで懲りたでしょうね」


 客の婦人たちも笑う。


「デステージョ様のおかげです」


 口々に言われ、私は少し気まずい思いだ。悪女をアピールしたいのにこれでは逆効果である。


「平民などに礼を言われることではないわ! 自分の店を守るのは当たり前のことよ」


 偉そうにふんぞり返ってみせるが、さらに喝采が大きくなるばかりだ。


「ふん! 愚民どもめ!」


 そう吐き捨て、厨房へとさがった。


 ついてきたセリオンに思わず愚痴る。


「なんなのよ? あれ、おかしいでしょ? 私は完全無欠の悪女様なのよ?」


「おかしいことなどありませんよ。当然の反応です」

 

 セリオンがスンと答え、私は疲労感で脱力した。

 


 今日も私は『動物カフェ』の手伝いにやってきていた。

 

 実は、今日、原作のヒーローであるイービス・デ・マニャーナとお茶会が設定されていたのである。


 もちろん以前から、『お父様以外とは結婚したくない』『お兄様より弱い男は興味ない』と言っていたのだが、なぜかマニャーナ公爵家から申し込みがあったのだ。


 お茶会なので断る理由もなく、日程を組まれてしまったのだが私は会いたくない。


(だって、マニャーナ公爵家から申し込んでくるなんて原作補正に違いないわ! 会ったらなんか面倒なことになりそう!)


 ということで、セリオンとテレノに協力してもらい、屋敷を抜け出してきたのである。


 私たちは、三人一緒であれば、公爵家の厳しい警護さえかいくぐれるようになっていた。


 カフェの奥で準備をしている私にセリオンが尋ねる。


「本当にマニャーナ公爵家ご令息にお会いしなくて良かったのですか?」


「いいのよ。弱い人に興味ないし」


 私が答える。


 セリオンが不安そうに眉を寄せる。


 私はセリオンの眉間を押す。


「また変なこと考えてる。セリオンは強いでしょ?」


「オレも強いよ! ね? デステージョ様!」


 テレノが後ろからセリオンに被さる。

「ええ。ふたりは私が仲間に選んだの」


 セリオンはテレノに向かってシッシと手を振った。


「うっとうしいです」


 テレノは「ちぇー」と口を尖らせて、セリオンから離れる。


「それに、ちょうど良かったのよ。今日は暑くなる予報でしょ? 満を持して、アレのお披露目をしようと思って」


 いたずらっぽく微笑むと、テレノがピョンとジャンプした。


「アイスクリーム!!」


「そうよ」


「オレ、だーいすき!!」


「じゃ、テレノ、準備をお願いね」


 テレノはバックヤードへ向かっていく。


「競合店が出てきたこのタイミングにあわせるのはさすがです」


 セリオンが唸る。


「あら、競合との影響が出る時期を分析してくれたのはセリオンじゃない」


「でも、ボクは対策まで考えられませんでした」


「ちょうど、アイスクリームの開発と気候のタイミングが合ってよかったわ」


 セリオンもうなずいた。


 競合店が出てきたとはいえ、まだまだ私たちには及ばない。そもそも、私たちのように子どもを従業員として集めるのが難しいからだ。


 子どもが家業の店を手伝うことは珍しくないのだが、十五歳未満の者を労働者として雇用することは王国で禁止されているからだ。


 私は違反しているお店を見つけ次第通報している。


 私たちが罪に問われないのは、あくまで孤児院の慈善事業の一環で労働ではない扱いだからだ。


 大人の従業員のみで私たちの店をまねているところもあるが、いかがわしさが出てしまい、女性受けが悪いのだ。女性受けが悪い店は流行の中心にはなれない。


 また、動物カフェのもうひとつの売りである『冷たい夜風』ことアイスコーヒーは、『悪魔の飲み物』と知らずに愛飲する人が増えている。



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