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【完結】完全無欠の悪女様~悪役ムーブでわがまま人生謳歌します~  作者: 藍上イオタ@天才魔導師の悪妻26/2/14発売


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13/50

13・千客万来の悪女様-3


「それにしても、冷たい物が温くならないのが不思議だわ」


「この【タンブラー】とかいうカップに魔法陣が仕込まれているそうよ」


「うちにもひとつほしいわね」


 語らう婦人たちの前に、セリオンがグッズメニューをもってやってきた。


「こちらが当店のグッズになります」


 グッズメニューを広げて説明する。


「お店で利用のタンブラーと同じ機能がついた物をお買い求めいただけます。このタンブラーでは冷たい物を冷たいままお召し上がりいただけます」


 セリオンが無表情で説明する。


 店で使っているタンブラーとは違い、年号とショップ名、子どもの描いたイラストが入ったタンブラーだ。数量限定で季節ごとに新しいデザインで販売する予定となっている。


「まぁ、可愛らしい絵ね」


「はい。数量限定ですので、お早めにご注文ください」


 業務的に淡々と説明をこなすセリオン。ミスはないが愛想もない。


(可愛い顔なんだから、ここで笑顔でも見せたらウケるでしょうに)


 と思いつつ、客へ媚びるような指導を子どもたちにするつもりはなかった。そう思いつつセリオンを見ていると、視線を感じたのか彼が私を見た。


(頑張ってるわね!)


 思わず仮面の下で微笑むと、セリオンは私を見て微笑んだ。


 あまりに可憐な笑顔に私はキュンとなる。


(っ! そう! この笑顔……尊いわっ!)


 その瞬間、店内もザワついた。


 スンとセリオンは無表情に戻る。


「いまの、見ました?」


「ええ、黒猫の子、アレは危険だわ」


「まさに懐かない猫ちゃん」


 ヒソヒソと語らうご婦人たち。


「あんな猫ちゃんが笑顔を見せる調教師……信頼されてるのね~」


 そんな目を向けられて、気まずい。


(もっと悪徳調教師アピールしないとダメだわね……)


 内心ため息をついたところで、店内に悲鳴が響き渡った。


「キャー!」


「なにしてくれるんだ!!」


 男の怒声に顔を向けると、タンブラーが倒れ机の上に飲み物が広がっている。


 客の服まで飲み物が零れ、店員の子どもが涙目で震えていた。


「ごめんなさい、ごめんなさい」


「『ごめん』だと!? 謝り方も躾られていないのか!」


「っ! ひ、あ、す、すいませ」


「謝ってすむと思ってるのか!」


 店員の謝罪を遮る男。


「ガキが店のまねごとなんかするからこうなるんだ! 責任者を出せ!!」


 私はツカツカと客の前に出た。


「どうされました? お客様。私が責任者ですが」


「このクソガキが零しやがったんだ!」


「それは大変ご迷惑をおかけしました。心よりお詫び申し上げます。クリーニング代とドリンクチケットをお持ちいたしますので、お許しいただけたらと思います」


 私は丁寧に頭を下げる。


 すると男は口元をいやらしく歪めた。


 私が頭を下げたことで、悦に入っているらしい。


「金で誤魔化そうって言うのか!? 土下座して謝れ!!」


 怒鳴る男におびえて、ウサギ耳の子どもが床に膝をつこうとした。


 私はウサギ耳の子どもを制する。


「おやめなさい」


 すると男が私を睨んだ。


「ああん?」


 私は男のテーブルをピシリと叩く。飲み物の水滴が弾けて男にさらにかかった。


「っテメエ!」


 私はテーブルの上にあった注意書きを鞭でトントンと叩いてみせる。そのたびにピシピシと水滴が男に飛ぶ。


「あら? 人間様なのにこの文字も読めないの? だったら読んであげましょうかね? ボクちゃん」


 鞭で男の顎を持ち上げる。


「動物たちが接客します。失敗しても許してねハート」


 ドスをきかせた声で、注意書きを読むと男はなぜか「うっ」と顔を赤らめた。


「……かっこいいじゃねぇか……。じゃねぇ! そもそも、お前のようなガキが責任者なわけあるか! 責任者を出しやがれ!! 土下座しろ!!」


 一瞬怯んだように見えた男だったが、また声を荒らげる。


「土下座でなにが解決するのよ。そもそも、失敗することも理解の上で注文してるのでしょう? 馬鹿なの?」


「うるさい、うるさい! 誠意を見せろ!!」


 私は大きくため息をついた。


 そして、仮面を半分持ち上げる。


「私が責任者の、デステージョ・デ・ノクトゥルノよ。誠意を見せてあげるから、ノクトゥルノ公爵家へいらっしゃい」


 優雅に微笑んでみせる。


 男は私を見てポカーンと口を開けた。もともと赤らんでいた顔が、さらに茹で蛸のように赤くなる。


「……はっ? はひ? 公女デステージョ様……? そんな、オーナーならともかく……貴族令嬢が現場で働くなんて……そんな……」


 男は信じられない様子でキョロキョロ周囲を見回す。


 子どもたちはコクコクとうなずいた。


 テレノは天真爛漫に答える。


「デステージョ様は本物のデステージョ様だよ! 格好いいだろ!」


「……うそ……だろ? うそだと言ってくれ……」


 男は椅子に座ったままのけぞった。


「嘘ではありません。残念ながら」


 セリオンがダメ押しをする。


「間違いなくノクトゥルノ公爵家のご令嬢よ」


 周囲の婦人たちもうなずいた。


 すると男は椅子に座ったままひっくり返った。


 私は屈み込んで男の顔をのぞき込む。



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