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転生と出会い

「あれ?」


目を覚ました瞬間、俺はまったく見知らぬ場所に立っていた。周囲を見回すと、どこか異世界のような景色が広がっている。空は薄紫色をしており、見上げると雲が不規則に流れていた。目の前には高い木々が立ち並び、地面には不思議な植物が生えている。どう見ても、現実世界ではない。


「ここは、どこだ?」


つぶやいたその言葉は、しっかりと響いて、周囲に反響した。突然の状況に頭が追いつかず、混乱する自分を必死に落ち着かせる。


──そうだ、事故で死んだんだ。


一瞬、全てを思い出す。普通の生活を送っていたはずなのに、突然、事故に巻き込まれて命を落としてしまった。それでも、こうして目を覚ましたということは──転生したということだろうか? その事実がじわじわと実感として湧き上がってくる。


「異世界転生ってやつか…」


俺がそう呟くと、なんだか急に視界が明るくなり、足元から不思議な感覚が広がっていった。



さて、まずは自分の身の回りを確認するか…と足元を見ると、目の前に小さな青い塊がぷるぷると揺れていた。


「ん? なんだこれ?」


その塊は、まるでゼリーのように透明で、しかも何かが動いている気配を感じる。ちょっと恐る恐る近づいてみた。すると、その青い塊はシュワシュワと音を立てて、くるっと回りながら俺の足元に向かって跳ねた。


「え? 待て…スライム?」


あまりにも普通すぎて、しばらく唖然としてしまう。この異世界で、いきなりスライムに遭遇するなんて、テンプレすぎて笑うしかない。


「いや、ちょっと待てよ。まさか『異世界転生』みたいなクソテンプレな世界かよ。」


俺は冗談半分に呟くが、スライムはひょこっと跳ねると、今度は俺の足元にくるりと回りながら、またぷるぷると揺れる。どうやら、気に入られたらしい。


「おい、何だよこれ。ペットみたいな感じか?」


スライムは何も言わず、ただぷるぷると跳ねるばかり。まさかスライムってペット感覚で飼えるのか…? と思いながらも、ふと「いや、もしかしてスライムも人間の知性があるのか?」と考え始めた。


「お前、知能あるのか?」


俺が軽く聞いてみると、スライムはぱっと跳ねて、まるで「はい!」とでも言いたげに飛び跳ねた。それを見た俺は、思わず吹き出してしまった。


「おお、答えたのかよ! スライムの癖に!」


その反応があまりにも意外で、つい笑ってしまう。しばらくそのスライムと遊んでいたが、何となく、この小さな生き物に不思議な愛おしさを感じ始めていた。


「まあ、ペットとしてなら可愛いもんだな。」


とりあえず、この異世界での生活がどうなるのか見当もつかないが、せめてこのスライムとの生活が楽しければ良いかと、そう思いながらスライムを手のひらに乗せた。


すると、スライムは僕の手のひらでくるっと丸まると、まるで小さな生き物が眠っているようにじっとしていた。その瞬間、さらに愛おしく感じた。


「お前、可愛いな。よし、名前を付けてやるか。」


その時、ふとスライムが手のひらから飛び出して、ちょっとジャンプしてみせた。


「おお、元気だな、お前。」


俺が感心していると、スライムはそのまま俺の肩に乗り、じっとこちらを見つめてくる。その目がまるで「名前、まだ?」とでも言っているように見えた。


「いや、待てよ。お前、こんなに愛嬌を振りまくなら、もしかして…」


スライムが本気で「答える」つもりでいることを悟った俺は、少し考えた。


「うーん、そうだな…『ピコ』とかどうだ?」


スライムは一瞬固まったあと、ちょっと躊躇するようにゆっくりと動き始めた。そして、じっと俺を見つめた後、ひょこっとジャンプしてみせた。


「おい、まさかその反応、気に入ったのか?」


俺は笑いながら言うと、スライムはもう一度跳ねて、まるで「うん、いいよ」と言いたげにくるりと回転した。


「よし、決まりだな。お前の名前はピコだ。」


ピコはその名をどう受け入れたのか、はっきりとはわからなかったが、少なくとも俺の心は少しだけ、温かくなった。


「ああ、異世界ライフ、最初はこんなもんだろうな。」


俺は肩のピコを優しく撫でながら、これからどうなるのかを想像してみた。しかし、こうして始まった異世界での生活が、予想以上に大きな変化を迎えることになるとは、まったく予想していなかった。

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