イレーヌとソフィアの変貌
11月14日。イレーヌとソフィアは登校した。2人はことあるごとに部室に入り浸るようになっていった。部室は旧校舎にあり、そこには魔法戦士の正規のコスチューム。ニュース映画のビデオがたくさんあった。でもなぜか王族はニュース映画を見られなかった。[はしたない番組]のイメージが極めて強く、いまだに保守的な庶民の家庭では見られない雰囲気が横溢していた。イレーヌたちは早めに登校し、部室でニュース映画を鑑賞。昼休みにはコスプレを堪能し放課後は部活という流れができた。お姫さまたちの日常が一気に変わり、イレーヌたちは性に対して寛容になっていった。マルゴ先生も寛容だし部活は自由な雰囲気があった。インゲたちはお姫さまたちの日常が変わったことに満足した。ならばあせることもない。イレーヌたちは自身のコスプレ姿を披露する場を求めたが、なかなかない。王族は保守的だし、できれば庶民の殿方に見てもらいたい。そこでマルゴ先生を含め、ミーティングを開いた。やっぱり屋内だけじゃあ物足りない。まずは校内でコスプレ会を開き、それから屋外で開こう。でも校内には女子しかいないし、許可がおりないのだ。となれば屋外でやるしかない。幸いにも異世界にはコスプレ文化があった。でも異世界のコスプレは自身を表現するのが主流であり、魔法戦士のコスプレは極めて珍しい。まだまだ魔法戦士の文化は異世界でマイナーなのだ。このあたりがリアルとの違い。マルゴ先生が魔法戦士の正規のコスチュームを入手できるのは特別なコネクションがあるからだ。イレーヌたちは徐々に濃い色の下着を身にまとうようになっていった。魔法戦士は訓練中も対戦中も濃い色の下着を身にまとうからだ。薄い色の下着よりは発情しても気づかれにくい。もともと魔法戦士が対戦相手を誘惑するはずが、いつしか自身の発情をカムフラージュするようになっていった。放課後は[コスプレ通り]と呼ばれる寂れた商店街でインゲたちは自身のコスプレ姿を披露した。そこは客もまばらだし、他校の男子も極めて少ない。しかもコスプレ通りはジュスティーヌ女学院の通学路にあるのだが、告げ口するような陰湿な生徒は皆無。何しろマルゴ先生がいるのだから。顧問が率先してコスプレ姿を披露するのは異世界特有であり、イレーヌたちを感激させた。しかもアーケード街だから風が強くてもミニスカートがめくれ上がらない。でもこれはかえってコスプレ部員たちの欲求不満を招いた。やっぱりアーケード街でない場所で自身のコスプレ姿を披露したい。そんな欲求がムクムクと頭をもたげたのだ。そこでもうちょい足を伸ばし、別の商店街を[新コスプレ通り]にしようと目論んだ。そこは客も多いし、他校の男子の目に触れる。そこまでインゲたちが積極的になれるのはアナログ社会だから。いまだにフイルムカメラが主流だし盗撮の恐れが少ない。万が一盗撮されてもフイルムの現像に手間がかかる。ましてや写真屋さんに持っていくのが恥ずかしい。だからやらない。異世界には日本にない節度があり庶民の民度が高い。だからこそ安心してイレーヌたちはコスプレ姿を披露できる。何しろマルゴ先生がいてくれる安心感が絶大。新コスプレ通りはアーケード街ではないから強く風が吹けばミニスカートがめくれ上がる。だからスリルを楽しめる。インゲたちはスリルを楽しんでいたし、イレーヌたちもそれにならった。実際には生地が厚くて意外なほどミニスカートがめくれ上がらない。コスプレ部員たちは徐々に大胆になっていった。人通りがあるので意外なほど目立たないのだ。マルゴ先生も若々しくてみずみずしい。帰宅したイレーヌたちは王族のつまらない生活に物足りなさを感じていた。娯楽といえばレンタルビデオくらいしかない。もちろん成人指定の作品は借りられない。私たちは決められたレールの上を走らされているだけ。つまんないわね。でもインゲたちのおかげで一気に視界が開けた。お姫さまたちは毎朝ニュース映画を見ることができるのだ。昼休みと放課後はみんなとコスプレや雑談に花を咲かせた。残念ながら大きなイベントはないが、イレーヌたちは砂を噛むような味気ない日々から開放された。でもまだ参戦までは考えが及ばなかった。何しろ王族が魔法戦士として参戦するのは一般的ではない。対戦相手が王族ならば問題ないが、マルスは一介の庶民に過ぎない。しかもまだ学生。となれば私たちが彼らに屈したらどうなるのか?考えただけでも恐ろしい。でも近年はそんなイメージが払拭されつつある。私たちにふさわしいステージが準備されつつあった。イサリ公国ならどうかしら?あの国は王族の取り込みに熱心だという。マルスの通い妻になれるのなら悪くないわ。1度は誰もが夢見る話。庶民の男の子に従属し、私たちは幼な妻になる。公務に就く姿は仮の姿に過ぎず、私たちはマルスにかしずき従う。それも悪くないわね。