表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/50

浅美と悠月の日常

11月9日。永松浅美と皆川悠月は朝から気分が重い。何しろつい先週までは異世界へ参戦していたのだ。マルスとは5戦してキサラもコリスも2敗3分けだからさほど負けが込んだわけでもない。2人はあまりにも周りの目を気にしすぎた。何しろ三十路の女性が魔法戦士として実の娘と一緒になって戦うのだからムリもない。しかも対戦相手のマルスは16歳の男の子。確かに莉奈はテオ。羽澄はルネとうまくやっていた。娘たちは2つ歳上のテオたちにひるまずに向かっていった。でも私たちはアデルたち相手に素直になりきれなかった。まずはコスチューム。定番の3色のチアは悪くないが、つなぎじゃなくてセパレートタイプ。シャツはノースリーブだし、ブラジャーがギリギリ隠れるのが精いっぱい。ミニスカートは莉奈たちと丈が同じくらい短めにされた。もちろんアデルたちは喜んでくれたが、私たちが浮き上がってる感じが拭えなかった。もう離婚して10年めだし。男の子には飢えていた。でもなかなか莉奈たちみたいに振る舞えなかった。浅美たちは浅美の部屋でリモートワークに励みながらもどこか上の空。「ねえ悠月、後悔してる?」「そうね。何が悪かったのかはいまだによくわからないけどね」「私もよ」「何だか羽澄たちとも距離ができた感じ」母娘で戦うのは悪くなかったが、自身の気持ちや性欲を素直に出すのが難しい。何しろ私たちが自身の気持ちや性欲をコントロールしなければならないのだ。自由にのびのびできる莉奈たちとは立場が違うし責任も伴う。母親が自身の気持ちや性欲に屈すればどうなるか?たちまちキサラもコリスも空中分解してしまう。それだけ母娘コンビは母親に負荷がかかるのだが、このあたりが娘たちには伝わりづらい。もちろん莉奈たちだって生まれて初めて異世界で見知らぬ人とやるのだから決して簡単ではなかったはず。でもリタイヤしたあの日以来、私たちは砂を噛むような日々に逆戻りした。8月31日から11月3日までは夢のような時間だった。私たちは異世界でアリエスと呼ばれる若い女性兵士に訓練され、次の週はマルスと戦う。ひたすらその繰り返し。週ごとに訓練と対戦を繰り返すのだが、不思議と飽きない。「アイナたち元気かな?」「そうね。ハンナたちは予備役に戻ったろうね」魔法戦士がリタイヤすれば訓練相手のアリエスも対戦相手のマルスも予備役に回される。リタイヤした魔法戦士は再び同じ交戦国か違う国を選んで復帰することができる。「でも今さらアデルたち以外の男の子とはやりたくないわ」「もちろんよ。私だってハメルたち以外の男の子とはやりたくないわ」世界線が違うためイサリ公国の姫騎士プロジェクトはまだリアルに知らされない。姫騎士プロジェクトが名古屋の魔法戦士振興会事務所に届くのは数日後だから浅美たちは知る由もない。2人は3月末の早生まれだからあと5ヶ月弱で33歳になる。3月末には莉奈たちが中等部の卒業を控えていた。できれば3月末までには復帰して彼らと一緒になりたい。確かイサリ公国は通い婚のはずだし、女の子は満14歳から結婚できる。魔法戦士の参戦はいわば婚活のようなものだ。対戦相手と結ばれるのが定番だが、訓練相手と結ばれるケースも地味に増えている。異世界では女の子同士が結婚できるからだ。幸いにも莉奈たちとの関係は崩れていないし、私たちだっていつまでもこのままでいいとは考えていない。娘たちだって今さら違う国への参戦はしたがらないだろう。よくも悪くも私たちは人見知りが激しいし、アデルたちに強く惹かれているのも歴然たる事実なんだから。そこだけは認めないわけにはいかない。「早く決断しないと莉奈たちに呆れられちゃうわ」「そうね。私たちにだって意地があるわ。このままでは終われないし」何しろマルスにはまだ1度も勝っていないんだもの。しかもアデルたちはアリエスと姉弟の関係を結ぶため今後は弱くなる可能性があった。つまりは女性化が進むということ。マルスの女性化は異世界のトレンドであり、幼き魔法戦士を大量に取り込むのが真の狙い。浅美たちが復帰するまでアデルたちは訓練に入れない。なのでそれまでに彼らの女性化が進む可能性がある。イサリ公国はマルスの女装にこだわらないが、アデルたちは毎日ショーツを履くことを義務付けられた。これはフィギュアスケート男子が実践しているし、下手に彼らの女装にこだわるよりも実践的。2人はイサベラから情報を集めることにした。イサベラはイサリ公国生まれの20歳の事務員。9月18日に名古屋に赴任したばかり。今年だけで5人めの事務員だが、浅美たちはつい先週まで異世界へ参戦していたのでイサベラとは親密になれていない。幸いにもアンジェラ改革が進むそうなので2人は目を輝かせた。「もしかしたら浅美たちはすごいミッションを与えられるかも」「すっごく楽しみ」浅美たちは淡い期待に胸を膨らませた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ