オルガとカレンの変貌
11月21日。オルガとカレンは公務に就いたが、どこか上の空。2人は先日にコスチュームを贈られていた。もちろん魔法戦士の正規のコスチュームだが、まだ袖を通していない。興味深いのは今の時期ではなく4月から9月までの限定コスチュームが贈られたことだ。白のセーラーに黒のブルマー。セーラーは半袖。ごくふつうの制服と変わらないが、問題はブルマー。こちらはまず外で履くシロモノではない。何しろ生地が薄くて下着の重ね着と変わらないからだ。もともと訓練相手のアリエスのコスチュームだったらしいが、オルガたちは浅美たちの意図を測りかねた。これには理由がある。2人には公務があり、下の子たちと足並みを揃えるのが難しい。ましてやコスプレ体験もない。となれば屋外でのコスプレなどありえないだろう。ならばあえてハードルの高い夏服にしてはどうか?4月から9月までの限定コスチュームを夏服。10月から3月までの限定コスチュームを冬服と呼ぶ。なので2人がこれまで1度も袖を通していないのは当然だが、一方ではイレーヌたちへの羨望もあった。下の子たちの変貌は目覚ましく、このままでは置いていかれてしまう。もちろんコスプレしての外出は論外だが、屋内なら?初めに誘惑に負けたのはカレン。第一王女は失恋から立ち直りたい。そしてルパートを見返してやりたい。彼女はふだんは優しいが、第一王女ゆえの誇りがある。自分を捨てた元カレを見返してやりたくなった。でも公務は不慣れだし復讐の手段にはなり得ない。では魔法戦士ならばどうか?すでに下の子はその気でいる。あとは私とお母さまだけ。イレーヌとソフィアだけを行かせるわけにはいかなかった。私たちがあの子たちを守らなければ。カレンは長女だから責任感が強い。部屋でひとりきりになり、生まれて初めて魔法戦士の正規のコスチュームを身にまとってみた。やっぱり違う。姿見に写し出された自身の身はどこか違う。何が違うのかわからないが、気分が高揚していた。何しろ下は黒のショーツと何ら変わらないのだ。でもショーツとはまた違う。肌触りも履き心地も抜群にいい。不思議と華やかな気分になり、うっとりした。カレンは姿見の前でポーズを取り始めたが、ニーソックスがないと物足りない。彼女は色で悩んだが、グレーにした。ふだんはグレーなんて履かないんだけどな。でも映える。グレーのニーソックスは意外と似合う。カレンは驚いた。ふだん履かないニーソックスが似合うなんて。同じ頃。オルガも誘惑に負けてしまった。今日は公務に身が入らず、気分転換したかったのだ。さすがに三十路にもなってコスプレだなんて。でも実際に身にまとってみると意外なほど悪くなかった。白のセーラーは女子校以来だが、違和感なく似合う。黒のブルマーはショーツに似てショーツとは違う生地。女王もニーソックスの色で悩んだが、モスグリーンを選んだ。やっぱり違和感なく似合う。何よりも華やかな気分になるし、高揚感に浸れるのがたまらない。オルガには魔法戦士になり参戦するだけの動機がない。ニュース映画でさえただの1度も見たことがない。でもコスプレは意外なほど悪くない。イレーヌたちも魔法戦士に憧れている。だからといって下の子たちだけ戦地に送るわけにはいかない。私たちが守らなきゃ。女王としての動機はないが、私は母親なんだから。でもカレンは?あの子はまだ失恋したばかりじゃない。参戦するならあの子の傷が癒えてからにしないとね。とりあえず私には母親として娘たちを守る義務がある。もちろんカレンにも下の子たちを守る義務がある。だからこそ私たち4人は一心同体なんだわ。オルガはそれ以外の動機について考えた。やっぱり女だから。女王だって女であることは間違いない。女王だから女を諦めるのはイヤ。やっぱり庶民の殿方に女として扱われたい。でも三十路の私を女として見てもらえるかしら?このあたりは浅美に確認しないといけない。ものすごく大切だからね。マルスが私をおばさん扱いしたら?果たして冷静でいられるか自信ないわ。カレンは大丈夫だけど。ちゃんと女の子として見てもらえる。でも私にその保証はない。だから不安になる。ただこのコスチュームはすっごく気に入ったわ。本番ではものすごく恥ずかしいし緊張するだろうけど。でも対戦時間は前後半20分ハーフの40分だと聞いてるわ。意外と長くないのね。それくらいならからだが持ちそう。オルガはカレンみたいに姿見の前でポーズを取りはしなかった。そこまで若くないからだ。でも女王は誇らしげだ。まだ何も成し遂げていないが、魔法戦士として参戦するのも悪くないかもね。問題なのは私たちのプライバシーが守られるか。庶民の前で貶められたり辱められたりしないか。このあたりをしっかり遵守してもらえるのなら考えてもいいわ。オルガは浅美たちが羨ましい。私だって同い年だし、まだ女を諦めたくない。