第8話 紅い悪魔
その日の夕方。俺は県警本部の応接室で『学生刑事』妻藤雪から、失踪した洋子博士の捜査状況の説明を聞いた。
「他県の警察にも協力してもらったけど、全く足取りがつかめないんだよ。ジョッガー絡みの失踪だから、警察も全力をあげて捜査をしているんだげどね」
「いろいろと、すまない」
「いや、これは警察の仕事だから」
洋子博士がいなくなり、俺の胸にはポッカリと穴が空いてしまったようだ。
雪は、一通りの説明をした後、
「わたしも、一つ、協力してほしい事が、あるんだけど」
「ジョッガーの関与している犯罪でも?」
「そうよ。最近、県内に『赤い悪魔』と、呼ばれる不審車両が出没して、暴走族狩りをしているのよ。それで、パトカーが出動しても、どうしても、捕まえる事ができなくて」
「つまり、その『赤い悪魔』はジョッガー」
「わたしは、そう睨んでいる」
その後、県警本部の駐輪場で待っていると、雪はライダースーツに着替えて出てきた。
「さあ、行くわよ」
「了解」
しばらく、県内の公道を二台で流して、すっかり夜になった頃、
暴走族と赤い車を発見した。
グオオォォォーゥーン!
青い旗をなびかせて、蛇行しながら暴走するバイクの群れは、県下最凶の暴走族『武流烈斗』その中に、赤い車が一台で突っ込んでいく『赤い悪魔』だ。
「この野郎、ブチ殺すぞ!」
と『武流烈斗』が、暴走するバイクで『赤い悪魔』を囲み、鉄パイプで攻撃する。
バギンッ、バギーン、バゴーン!
数発、鉄パイプで車体を叩かれた赤い悪魔は、車内から、
バアーン、バアーン、バアーンッ!
と、銃を発砲して、次々とバイクを狙撃した。転倒する武流烈斗のバイク。銃を撃ちまくり、散々、暴れた後、赤い悪魔は、
グオォォォーゥン。
と、猛スピードで走り去る。
その『赤い悪魔』を追う、雪のバイク。俺も後に続いた。
しかし、赤い悪魔は異常に速く、アンドロイドの俺の運転技術でも追い付けない。
やはり、こいつはジョッガーだろう。
一度『赤い悪魔』を見失った俺と雪だが、郊外のファミレスに駐車している赤い車を発見した。
俺と雪は、そのファミレスに入る。店内に客は多い。この中の誰が『赤い悪魔』なのかは、わからなかった。
「どうする?」
「わたしに任せて」
と、言った雪は、大声で、
「警察だ。皆、動くな!」
そう、怒鳴った、後、
バアーン!
拳銃を一発、天井に向けて、発砲する。一斉に、こっちを見る、客と店員。
静まり返る店内を見回して、雪は一人の大柄の男に目を止めた。
「あんたが、ジョッガーだね」
食事をする一人の男に歩みより、銃口を向ける、雪。
「よく、わかったな」
「刑事の勘さ」
「ジョッガーのくせに飯を食うのかい?」
「オレは生きるために食うんじゃない。味わうために食っているのさ」
「銃をよこしな」
「車の中だよ」
男は、ゆっくりと立ち上がり、
「外に出ようか。お前たちも、無関係な人間を巻き込みたくは、ないだろう」
そう言って、歩きだす。
雪は拳銃を突きつけたまま、男の後に続いた。俺も表に出る。
ファミレスの駐車場に出ると、男は体を反転させ、雪の銃を手刀で、
バシッ、
と、叩き落とした。さらに、腕を掴み、一本背負いで投げる。
ドスン!
アスファルトの地面に叩きつけられる、雪。
「ぐっ、痛てぇ」
かなりの腕前だ。流れるような動きで、雪を簡単に押さえ込み、首を絞めた。
男は、そのままの体勢で、八本足のタコの超魔人に変身する。
「オレは『超魔人オクトパスーダ』様だ」
「アサルト・チェンジ!」
俺も『全身装甲の戦闘形態』に変身した。
「ハハハハッ、それで、どうするアサルト・ソルジャー。オレを攻撃すれば、この女もダメージを負うぞ」
「離せよ、この野郎」
と、もがく雪を、オクトパスーダは八本足で捕らえ、締め上げる。
「アサルト・ソルジャーよ。こいつの銃を拾って、自分のこめかみを撃つんだ」
「な、なに、こめかみを」
「お前の額の装甲は厚い。しかし、こめかみには装甲の繋ぎ目があるのだろう。そこにマグナム弾を受ければ、さすがのお前でも、致命傷を負う」
その話を聞いて雪は、叫び声をあげた。
「止めろ、アサルト・ソルジャー!」
オクトパスーダは、雪の首を絞めながら、
「それなら、お前が死ぬか?」
「わ、わたしは、どうなってもいい」
「ほう、どうなってもいいのか?」
そう言うと、オクトパスーダは八本足を使って、雪のライダースーツを脱がせた。
「や、止めろよ、変態!」
雪は抵抗して、暴れる。だが、なぜか、雪はライダースーツの下にセーラー服を着ていた。
「コスプレとは、お前も変態だな」
「バカ、わたしは本物の高校生だ」
「それは、嬉しい獲物だ」
と、オクトパスーダは、セーラー服も脱がせて、
「ウッヒョーオッー!」
歓喜の声をあげながら、白い下着の上下も剥ぎ取り、下の方を頭に被った。
「何すんだよ、スケベ野郎!」
「これは、どうだ?」
オクトパスーダは足の吸盤を、雪のピンク色の『乳首』に吸い付かせる。
悲痛な表情を見せる、雪は、うめき声を漏らした。
「うっ、うぅぅ」
オクトパスーダは、興奮した様子で、
「気持ち良いのか?」
「気持ち、悪いんだよ!」
「そうか、なら、コレは、どうだ」
オクトパスーダの足先が雪の股間で蠢く。
ぐにゅ、ぐにゅぐにゅ、ぐにゅうぅ~っ。
「や、やめてーっ、そこはダメ。わたしヴァージンなの!」
「ウヒョーッ。大当たり!」
「止めろ、オクトパスーダ。言う通りにするから、もう止めろ」
俺は拳銃を拾い、自分のこめかみに当てた。
その瞬間。
バヂイィーン!
オクトパスーダの背後で閃光が走った。ビックンと硬直して、雪を離す、オクトパスーダ。
雪は全裸のまま、走って、俺のところへ逃げてくる。
頭に雪の下着を被ったまま、痙攣するオクトパスーダ。
それをを見下ろす『女子高生コマンドー・泉』右手にはスタンガンのような物を持っていた。
泉は、いつの間に、ここに来たのか?
やがて、オクトパスーダの痙攣は止まり、ピクリとも動かなくなる。
「これは、超魔人専用のスタンガンよ。威力が強すぎて、死んだみたいね。このタコ」
そして泉は、雪の方を見て、
「今度からジョッガーと戦う時は、私にも声を描けるのよ。裸の県警さん」
泉は、そう言って、颯爽とジープに飛び乗り、走り去った。






