第7話 孤高の栄光 後編
大陸ホテルのカフェ・ラウンジは、客もスタッフも、皆、逃げ出し、誰もいなくなった。
『戦闘形態』の俺と『超魔戦士ハカイ・タイガー』は、対峙し、にらみ合う。ただ一人、カフェ・ラウンジに残った、洋子博士は、
「お願い。やめて、二人とも」
と、この戦いを止めようとした。
「ジョッガーと戦い、人類を守るのが、俺の使命なんでしょう。洋子博士」
「洋子、こんなアンドロイドは、ただの機械だ。破壊しても、また、新しいモノを造ればいい」
「ダメよ、戦わないで!」
「こんな機械に、何を入れ込んでいるんだ。洋子」
ハカイ・タイガーの、その言いぐさに、俺は怒りを覚えて、いきなり、必殺技の、
「アサルト・レッグ・ラリアット!」
奴の喉元を狙って、飛び蹴りを出したが、
ハカイ・タイガーは、軽快なフットワークで避ける。 逆に奴の、
「これでも喰らえ!」
と、回し蹴りが飛んできた。
バジーン!
蹴りの直撃を、頭に受けダウンする、俺。
ハカイ・タイガーは、俺を見下ろし、
「弱すぎるぞ、アンドロイド」
と、吐き捨てながら、俺を掴み、持ち上げて、テーブルに投げ落とした。
ガシャーン!
テーブルが木っ端微塵に粉砕して、俺は床に叩きつけられる。
「うぐ、うぐぅ」
「どうした、正義のヒーロー」
床に転がる俺の顔面を、
バシィーン!
蹴りあげる、ハカイ・タイガー。
「ぐはっ」
強い。強すぎる。今までの超魔人とは、桁違いの強さだ。
「もう、止めて大河さん」
洋子博士がハカイ・タイガーに抱きついて、止めようとしたが、
「こんなアンドロイドは、壊して、作り直したほうが良いんだ」
ハカイ・タイガーは洋子博士を振り払い、俺を蹴り回す。
ドカ、バシ、バシ、ドカ、バシン!
「ぐはっ、ぐはっ」
俺は床を這いつくばった。
「お願い、もう止めて、大河さん」
泣きながら止める、洋子博士。
「洋子、何も泣くことはないだろう」
ハカイ・タイガーの攻撃が止み、一瞬、隙ができる。
俺は、必死に立ち上がり、
「アサルト・ハリケーン・ソバット」
激しく回転しながら、後ろ回し蹴りを叩き込んだ。
バチコーン!
ハカイ・タイガーの腹部に決まる。さらに、連続技で、
「アサルト・レッグ・ラリアット」
ハカイ・タイガーの喉元を蹴った。
バジーン!
蹴りは決まったが、ハカイ・タイガーは倒れない。
「どうした、その程度か、アサルト・ソルジャー」
なんという強さだ。今まで無双だった俺が、まるで相手にならない。
「二人とも、お願い、止めて!」
叫ぶ、洋子博士。
その時『学生刑事』妻藤雪が飛び込んできた。
「なめんじゃないよ。トラの怪物が」
と、大型の拳銃を構える。
バン、バン、バン、バン、バン、バン!
マグナム弾六発を、ハカイ・タイガーに撃ち込んだ。
「ぐっ、ぐあっ」
ボタボタと血を流し、少し、よろけた、ハカイ・タイガー。だが、まだ倒れない。奴は、なんという頑丈さなのだろう。
そこへ『女子高生コマンドー・泉』が、自動小銃を連射した。
バババッ、ババババッ、バアーン!
「まだ、終わりじゃないわよ」
ババッ、ババッ、ババッ、バアーン!
「うっ、うおぉ、おっ」
ハカイ・タイガーは、後ろに、二歩、三歩と退いた。しかし、まだ倒れない。
「これしきの銃撃はで、オレは倒せんぞ!」
「早く、死になさいよ」
バッ、ババババアーン!
ハカイ・タイガーの全身から、大量の血が流れ、床が、赤い川のようになる。
泉の自動小銃の弾がきれる前に、雪は素早く、リボルバー拳銃の空薬莢を捨て、マグナム弾を装填していた。
バン、バン、バン、バン、バン、バン!
マグナム弾、六発全弾を容赦なく撃ち込む。
「大河さんに、何て事をするのよ!」
泉と雪を止めようとする洋子博士を、俺は押さえつけた。
「何んで撃つのよ、止めてよ!」
半狂乱になり、叫ぶ、洋子博士。
「洋子博士、しっかりしてくれ、奴はジョッガーの幹部なんだよ」
「なんでよ。大河さんは、自衛隊を辞めて、私と一緒に、お店をやってくれるって言ったのよ。彼は私と結婚してくれるのよ!」
「だから、大河は、見ての通りのジョッガーだろう!」
泉と雪は交互に弾丸の補充を行いながら、銃撃を続けた。
バン、バン、バン、バン、バン、バン。
バババッ、ババババッ、ババババアーン!
全身、銃創だらけになり、おびただしい血を流すハカイ・タイガー。
「ヴグゥ、ウググゥ」
さすがのハカイ・タイガーも、これだけの銃弾を喰らえば、弱ってきたようだ。
「ぐはぁっ」
ついに口からも血を吐く。
「止めて、大河さんが、死んじゃう!」
「オレは死なない。洋子、また会おう」
弱ったハカイ・タイガーは、背を向けて、ホテルの外へと逃げた。
それを追う、泉と雪。
だが、道路に飛び出したハカイ・タイガーは、走っきた大型トラックと衝突する。
ドカアァァーン!
大型トラックは横転して炎上した。それでも、まだ、ハカイ・タイガーは立っている。
「ヴヴゥァァ」
と、苦しそうな、呻き声を漏らす、ハカイ・タイガー。
その間に、泉はジープに積んであったバズーカ砲を取り、構える。そして、ハカイ・タイガーを狙い、撃った。
ドゴオォォーン!
直撃。それでも、まだ、ハカイ・タイガーは倒れない。奴は不死身なのか?
俺も、洋子博士を離して、外に出る。
道路には瀕死のハカイ・タイガー。奴を倒せるチャンスは、今しかない。俺は全力で走り、ジャンプした。
「アサルト・レッグ・ラリアット!」
飛び蹴り、一閃、ハカイ・タイガーの喉元に叩き込む。
バッヂイィィーン!
ハカイ・タイガーの首はちぎれた。白虎の頭部が宙を舞う。
ドカアァァーン!
爆発する、ハカイ・タイガー。 死闘は終わった。
しかし、この時、洋子博士は、どこかへ姿を消し、そのまま失踪してしまった。