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第5話 探偵のいる街

その日、背の高い痩せた男が、昭和レトロな喫茶店『栗とリス』に来店した。


「いらっしゃいませ」


と、洋子博士と俺。


黒のスーツを着た、その男はカウンター席に腰掛け、コーヒーを注文した後、一枚の写真を見せて、こう言う。


「この女子大生なんですが、この店に来ませんか?」


「えっ?」


と、露骨に怪訝な表情で怪しむ、洋子博士。


「いや、すいますせん。実は私は、私立探偵の末田(まつだ)と申します」


名刺を差し出す男。洋子博士は名刺を受け取った後、その写真を手にとって、


「これ、明美ちゃんじゃない」

「知っているんですか?」

「以前は、よく来てたんですけど、最近は来ないかな。で、明美ちゃんに何か?」


「それがですね。家出をしたらしく、ご両親から、探してくれと依頼がありまして」


「それは、心配ね」


名刺には、末田探偵事務所とあるので、個人で探偵業を営んでいるのだろう。


その後、末田はコーヒーを飲みながら、俺に向かって、


「お兄さん、探偵の助手のアルバイトをしてみない?」


と、声を掛けてきた。それを聞いて、洋子博士も、


「面白そうだから、やりなさいよ」


と、無責任な態度で、強く勧めてくる。結局、俺は翌日から、末田探偵事務所で助手のアルバイトをすることになった。



初出勤の日。電車に乗り通勤する俺は、ひどく緊張した。そういえば、転生する前の俺は、長い間、無職だったのだ。


今は正義のヒーローで、洋子博士の喫茶店でも働いているが、それ以外は、あまり働いていない人生だ。


俺に、探偵の助手のアルバイトが、勤まるのだろうか?


不安を抱えつつも、出勤した『末田探偵事務所』は、繁華街の外れの古い雑居ビルの二階にあった。


ドアを開けて、とりあえず、俺は大きな声で、あいさつする。


「おはようございます!」

「おっ、元気が良いな」


と、末田。彼はソファーに寝っ転がって、朝のニュース番組を見ていたが、俺の方を向いて、


「実はな、明美ちゃんが、毎日のように飯を食べているファミレスがあるらしいんだ。ちょと張り込んでみてくれ」


末田の指示で、俺は、ここから少し離れた住宅街にあるファミリーレストランへ、電車を使い向かった。


カメラを持たされたのだが、昭和の時代なので、デジカメではない。俺に上手く撮れるのだろうか。


その住宅街に着くと、例のファミレスを探して道に迷った。やはり、俺は探偵には向いていないようだ。


それでも何とか目的地に、たどり着くと、ファミレスの窓際の席に明美の姿が外からも見える。なんという、運の良さ。


道路の向かい側にある本屋に入って、明美を監視した。十五分後にファミレスから出てきた明美を尾行して、あっさりと、彼女の住むアパートを突き止める。


公衆電話で事務所に報告すると、


「今日一日、そのアパートを見張っていろ」


と、末田からの指示。この指示に従い、明美のアパートを張り込んでいると、夕方、この部屋に入る中年男性の姿があった。もちろん写真に撮る。


現像店で写真をプリンして、末田探偵事務所に戻った頃には、すっかり夜になっていた。


「上出来じゃないか。探偵に向いてるよ、お前は」


「いやあ、自分では向いてないと思います。すぐに道に迷うし」


「ハハハハッ、面白い奴だな。でも、今回は大手柄なんだぞ」


「大手柄、ですか?」

「これを見ろ」


と、末田は別の写真を俺に見せる。その写真には、明美のアパートに入った、あの中年男性が写っている。


「実は、このオッサンは、草村茂といって、奥さんから浮気を疑われて、調査の依頼が来ていたんだよ」


「えっ?」


「つまり、家出娘の居場所と浮気オヤジの証拠を同時に掴んだ、というわけだ」


「凄い偶然ですね。それで、これから、どうするんですか?」


「まあ、俺たちは探偵なんだから、双方の依頼人に調査報告書と証拠写真を送って、仕事は終わりだ」


「それも、そうですね」


「報告書は明日、仕上げるとして、今夜は飲みに行こう。奢るよ」


と、末田は上機嫌に事務所を出たが、


外には、体の大きなシロクマの超魔人が待ち伏せしていたようだ。


「お前たちか、草村のことを嗅ぎ回っているのは」


「な、なんだ、コイツは?」

「ジョッガーの超魔人ですよ」

「ジョッガーって、悪の秘密結社の?」


「オレは『超魔人シロクーマ』だ」


「アサルト・チェンジ!」


俺は、赤を基調とした『全身装甲の戦闘形態』に変身する。それを見た末田は、驚いた様子で、


「えっ、お前は何者なんだ?」

「突撃戦士アサルト・ソルジャー」


「貴様が噂のアサルト・ソルジャーか。ちょうど良い。お前を倒して、幹部に出世してやる」


「バカ野郎。お前の出世の道具なんかに、されてたまるか」


「うるさい、おとなしく、死ね」

「アサルト・ハリケーン・ソバット!」


俺は激しく回転して、シロクーマに後ろ廻し蹴りを決める。


バヂコーン!


夜空へと、ぶっ飛んでいく、シロクーマ。そして、あっさりと爆発した。


バゴオォォーン!


見た目より、かなり弱い超魔人である。


「お前って、強いんだな」

「あっ、でも、草村とジョッガーは」

「何か、関係があるな」

「明美ちゃんが、危ないのでは」

「早く、あのアパートに急ごう」

「走りますよ。掴まって下さい」


戦闘形態の 俺は末田を担いで走った。


「お前は、足もメチャクチャ早いな」


アサルト・ソルジャーは全速力で走れば車より早い。あっという間に、例のアパートに到着する。


ドアには鍵が掛かっていたが、戦闘形態の怪力で破壊した。


そのまま室内に踏み込むと、布団の中に裸の二人。明美は悲鳴をあげて、


「きゃあーっ」

「な、何なんだ、お前たちは!」


草村は怒鳴り声をあげたが、戦闘形態の俺が、


「あんた、ジョッガーと、どういう関係なんだ?」


と、迫ると草村は、おとなしくなる。彼の話によると、明美という若い愛人ができて金が必要になり、


「製薬会社に勤める私は、ジョッガーの違法薬物の製造に協力して、報酬を得ていたのです」


それを聞いた末田は冷たい口調で、


「あんた、警察に自首したほうが良いよ。ジョッガー絡みじゃ、そのうち殺される」


と、言ってから、裸の二人に背を向けて、最後に、


「お嬢ちゃんもさ、若い時には色々あるけど、こんな男の事は早く忘れて、新しい恋でも探しなよ」


カッコいい台詞を決めて、その部屋をでた。

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