表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/12

第4話 夕日のガンマン超魔人トカゲンダー

この日も、俺はジョッガーの超魔人と戦った。


カメの姿をした『超魔人カメ・カメン』は、硬い甲羅で防御力の高い強敵である。必殺技の、


「アサルト・レッグ・ラリアット!」


も、甲羅に首を引っ込めて、防がれた。


「ガハハハーッ、どうしたアサルト・ソルジャー。このカメ・カメン様が相手では、手も足も出ないか」


「こうなれば、新必殺技だ」

「無駄な事を」


俺はジャンプして、


「アサルト・ハリケーン・ソバット!」


グルグルと激しく回転しながら、後ろ回し蹴りを決めた。


バギイィーン!


けたたましい音を発て、カメ・カメンの甲羅が割れる。


「ぐあぁーっ!」


悲鳴を上げたカメ・カメンは、


ドカアァァーン!


爆発した。


悪の秘密結社ジョッガーは、人類抹殺計画を企ている。


ジョッガーの思想では、人類は、地球の生態系を著しく破壊する『凶悪な存在』であるらしい。


だから、ジョッガーは人類を滅亡させ、地球の生態系を守ると主張しているのだ。


また、ジョッガーの超魔人や戦闘員になれば、地球の生態系を壊さないために、食料は摂らずに、太陽エネルギーで活動できるようになるという。



そして翌週。その日は月曜日だったが、盛高知里(もりたかちさと)が一日、オフだったので、俺は知里をバイクの後ろに乗せて、ツーリングに出掛けた。


一日、バイクで走り、夕方。


高台にバイクを停めて、夕暮れの街を見下ろす、俺と知里。


一日の終わり、西の地平に太陽が沈む。赤く染まる街。東の空から静かに夜が侵食する。毎日、繰り返される光景だが、なぜかドラマチックに感じた。


「綺麗ね」

「知里ちゃんの方が綺麗だよ」

「またまた、そんなこと言って」


楽しい。楽しすぎる。転生前、令和時代の俺は『三十歳、独身、無職』で、どうしようもない人間だった。


それが、この世界では、人気アイドルの盛高知里とデートをしてしまう、無双の正義のヒーローである。


まるで夢のような世界だ!


「あなたは、なぜアンドロイドなの。わたしは、こんなにも、あなたの事を想っているのに」


なんという台詞。こんな事を、こんな可愛い()から言われるなんて。イケメンに造られて良かった。洋子博士、ありがとう!


「俺は『悪』と戦い、人類を守るために造られた人造人間(アンドロイド)なんだ。戦うことが俺の使命なんだよ」


俺は、やや哀愁を醸し出して言った後、知里の目を見つめ、言葉を続ける。


「だが、俺が、心から愛しているのは、知里ちゃん、君だけだ」


クサい台詞を決めた。 良い感じになる二人。この後はラブホか。ラブホなのか?


と、その時、


「イチャイチャしているところを、悪いな」


トカゲの超魔人が現れた。ガンマンの格好をしている。


「なんだ、お前は」

「おれは、『超魔人トカゲンダー』だ」


俺は知里を背中の後ろに隠して、庇った。


「心配するな、おれは女には危害は加えない。正々堂々、一対一の勝負だ」


「トカゲンダー、超魔人にしては男前な奴だな」


「女を下がらせろ」

「わかった、勝負だ」


知里が不安な表情で、俺の顔を見る。


「大丈夫?」

「大丈夫だ。離れていてくれ」


俺とトカゲンダーは、10メートルほどの距離をとって、向かい合った。


「親友のカメ・カメンの仇をとらせてもらうぞ。アサルト・ソルジャー」


夕日の赤い光に照らされる、トカゲンダー。影を長く延ばしている。


「アサルト・チェンジ!」


俺は赤を基調とした『全身装甲の戦闘形態』に変身した。それを見て、トカゲンダーは余裕のある声で言う。


「日が沈む前に決着をつけようか」

「そうだな」


トカゲンダーなんかは早く倒して、知里とラブホへ行きたいと、俺は心の中で思った。


「いくぞ、アサルト・ソルジャー!」


早く来いよ。と、思った瞬間。トカゲンダーが腰の二丁拳銃を抜いて、撃つ。


バン、バーン。


俺は、ジャンプして、弾丸から逃れた。早く決着をつけたくて、そのまま、


「アサルト・レッグ・ラリアット!」


必殺技で、トカゲンダーの喉元を蹴ったが、


奴は両手をクロスさせて防御する。


「喰らうかよ」


しかし、必殺技の威力で、


ブヂッリ!


トカゲンダーの左腕がちぎれて宙を舞った。


「く、くそうっ」


それでも、トカゲンダーは右手の銃を撃ってくる。


バーン。


弾丸は俺の額に当たった。


「うあっ」


と、真後ろに倒れる、俺。


「ついに殺ったか!」


と、トカゲンダーは歓喜の声をあげる。しかし、俺は立ちあがった。


「惜しかったな、額は一番、装甲が厚い部分だ」


「な、なんだと」


「胸を撃たれていれば、即死だったかもしれないが」


「おのれ!」


銃を撃つ、トカゲンダー。


バーン。


ジャンプして、銃撃を避ける俺。


「アサルト・ハリケーン・ソバット!」


空中で激しく回転して、後ろ回し蹴りを決める。


バチコーン!


「ぐあぁーっ」


トカゲンダーは、ぶっ飛び、空中で、


ドカアァァーン!


爆発した。これで、ラブホに行ける!


トカゲンダーとの死闘は終わったのだが、人間形態に戻った俺の顔を見て、知里は、驚きの声をあげた。


「か、顔が歪んでるわ!」


無理もない。至近距離から額に弾丸を受けたのだ。


こうなってしまえば、もう、今日はラブホには行けない。研究室に帰って、洋子博士に修理をしてもらうしかない。


「だ、大丈夫なの?」

「ああ。これくらいなら、平気さ」


だが『知里とラブホ』の夢は消えた。俺はバイクの後ろに知里を乗せて、煌めく街のなかを、残念な気持ちで疾駆した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ