第3話 『学生刑事』と『女子高生コマンドー』
アップル・イブと戦った俺は戦闘のダメージで、右半身が麻痺してしまった。それでも、なんとか人間形態に戻り、バイクに乗り、研究室に帰る。
右半身を引きずる俺を見て、洋子博士は、
「いったい、どうしたの?」
「実は、あのう」
一部始終を話し、事情を説明すると、
「電撃で神経回路がやられたのね」
と、洋子博士は俺の下半身を裸にして、作業台へ乗せる。
「バカね。ヘンな喫茶店に行くから、こんな目に会うのよ」
小言を言う洋子博士は、俺の脚を広げ、下腹部のカバーを外した。神経回路は股間にある。
「敵をスケベな目で見て油断するからよ」
「そんなに油断はしてないんですが」
「でも、スケベな目で見たでしょう」
お説教されながら、俺は股間をいじられて、
「あぁ、うっ」
「もう少しよ。我慢しなさい。」
神経回路の修理をしてもらう。
「まったく、小遣いをもらって、何の勉強をしに行ったのか」
洋子博士は、 ぶちぶちと言いながらも、馴れた手つきで股間をいじり、
「どう、これで、感じる?」
「あっ、はい」
神経回路は修理され、俺の右半身の感覚は復旧した。
翌日。昭和レトロな喫茶店『栗とリス』に、セーラー服姿の『女子高生コマンドー・泉』が来店した。ロングヘアーはポニーテールにして、学生鞄を持っている。
「あっ、君は?」
驚く俺に、泉は笑顔で、
「レモンスカッシュ、お願いします」
「あっ、はい」
「何、女子高生の知り合い?」
と、怪訝な表情の洋子博士。
「昨日のバズーカの」
「女子高生コマンドー・泉です」
泉は自己紹介するように言った。
「で、あなた何者なの?」
洋子博士の質問に、泉は、
「実は私、防衛庁の『ジョッガー対策室』のエージェントなんです。今度、あなた方の支援をすることになりました」
それを聞いて俺は、
「え、でも防衛庁って、君は女子高生なのでは?」
「セーラー服は身分を偽装するための変装なの」
身分を偽装って、ジープを運転して、バズーカ砲を、ぶっぱなす女子高生なんていない。
まったく変装になっていないと、俺は思いながら、泉のテーブルにレモンスカッシュを運んだ。
そこへ、もう一人、女子高生が来店した。スカートが長く、ツッパリ風だ。
「いらっしゃいませ」
「いや、客じゃないよ」
不良っぽい口調で言う女子高生は、セーラー服にポニーテール。今の泉と同じような格好をしていた。
「わたしは、県警本部直轄の『学生刑事』妻藤雪」
雪は警察手帳を見せながら、言葉を続ける。
「この茶店に、銃刀法違反と無免許運転の高校生がいると、通報を受けて来たんだけど」
「残念でした。私は高校生ではなく、防衛庁のエージェントなの」
泉は、そう言いながら、防衛庁の身分証明書を見せる。その時、
プルルルル。
と、着信音。泉が学生鞄から、バカデカい携帯電話を取り出す。そうか、昭和の時代のケータイはコレなのだ。
「あ、はい。了解しました」
通話が終わると泉は、
「ジョッガーの秘密基地の場所がわかったわ、至急、出動よ」
それを聞いた雪は、
「それなら、わたしも行くよ」
「あなた、武器はあるの?」
泉の問いに、雪はスカートを、めくり上げる。
右の太ももにホルスター。大型のリボルバー拳銃を持っているようだ。その瞬間、白い下着がチラリと見えた。
「さあ、出撃よ」
と、泉。
「いってらっしゃい」
呑気に手を振る洋子博士。
店の外へ出ると、泉が雪に向かって言った。
「県警のツッパリさん、セーラー服にポニーテールはキャラがカブるから、やめてよね」
「何、言ってるんだよ。あたしは本物の学生で、あんたはコスプレだろう」
「でも、最初にセーラー服で登場したのは私よ」
そう言いながら、泉はジープに飛び乗り、急発進する。
その後を、バイクで追う俺。後ろには雪を乗せた。
スピードを上げると、雪がギュッと身体を密着させる。小振りの胸が俺の背中に、ピタリと当たった。
たぶん、ビーチクはピンクだ。と、俺は妄想してしまう。
しばらく走ると、ビルの建設現場から銃声が聴こえた。銃撃戦をしているようだ。
ここがジョッガーの秘密基地なのか。泉はジープをスピンさせて、
ギギュュウーッ。
急停車した。
建設現場では、黒い骸骨の戦闘員と屈強な男性エージェント数名が、撃ち合いをしている。
「あなたはコレを」
と、泉はライフル銃を俺に手渡した。人間形態の俺は、その銃で戦闘員を撃つ。
バキュン、バキュン、バキュン。
「なめんじゃないよ!」
と、雪も大型の拳銃で応戦する。
バアーン、バアーン。
「ヒョエイーッ」
骸骨の戦闘員も撃ち返してきた。
バン、バン、バン、バン、バン。
激しい銃撃戦。
バン、バン、バン、バン、バン。
バン、バン、バン、バン、バン。
泉がバズーカ砲を構え、
「これでも、喰らいなさい!」
と、ぶっぱなす。
ドゴオォォーン!
建設現場が吹き飛んだ。
「ヒョエイーッ、ヒョエイーッ」
と、悲鳴をあげ、戦闘員は退散したが、あのアップル・イブが出て来る。
相変わらず、裸に前腕と脛にピンクのアーマー。胸と股間はリンゴ型のカップで隠しているという、痴女のような格好をしていた。
手には、例の電撃鞭を握っている。
「また、お前たちか!」
と、喚く、アップル・イブの傍らには、オオカミの超魔人が控えていた。
「俺は『超魔人オオカーミ』だ」
「アサルト・チェンジ!」
俺は、赤を基調とした全身装甲の戦闘形態に変身して、そのまま、必殺技を出す。
「アサルト・レッグ・ラリアット!」
ジャンプして、オオカーミの喉元を狙って、蹴った。
バシュン!
オオカーミの首がちぎれて、生首が飛ぶ。残った身体は爆発した。
バッゴーォーン!
「くそう、この借りは、必ず返す」
そう吐き捨てて、今回はあっさりと、アップル・イブも退散した。