第2話 昭和といえばノーパン喫茶
洋子博士は、表向きは、昭和レトロな喫茶店『栗とリス』を経営している。俺も、この喫茶店で働くことになった。
カウンターに立つ俺の顔をマジマジと見て盛高知里が言う。
「本当にハンサムよね」
知里はヤモリンガーの一件以来、俺と親しくなり、時々、この喫茶店に顔を出すようになっていた。
「私が造ったアンドロイドなんだから、ハンサムで当然よ」
と、洋子博士。
「じゃあ、彼は洋子さんの好み?」
「まあ、そうね」
「だとしたら『そういう機能』も付いているんですか?」
知里のきわどい質問。
「そういう機能って、付いているわけないでしょう!」
真っ赤な顔をして否定する、洋子博士。
「アサルト・ソルジャーは戦闘アンドロイドよ」
そこへ、カラン、コロン、とドアが開き、知里のマネージャー氏が入ってくる。
「知里ちゃん、次の撮影の時間だよ」
「はーい」
知里は席を立ち、マネージャー氏は知里のコーヒー代を支払う。
「いつも、ウチの知里がすいませんね」
と、マネージャー氏。洋子博士は笑顔で応えた。
「いえ、こちらこそ、毎度、ありがとうございます」
そして、知里が帰った後、
「洋子博士、お小遣いを下さいよ」
「お小遣いって、何に使うの?」
「俺、この世界のことを何にも知らないし、喫茶店の事とかも、色々と勉強したいんです」
「そう、なら、仕方がないわね」
洋子博士から、お小遣いをもらった俺は、繁華街へとバイクを走らせた。
昭和といえば『ノーパン喫茶』だろう。
途中、ドクロの旗を振った暴走族のバイクが、真っ昼間から、十四、五台で暴走していた。
「大勢で邪魔だ。どけよ」
俺は後ろから、追い追い抜く。
「何だと、コラ!」
奴らは、怒鳴りながら追ってきたが、簡単に追いつかれる俺ではない。スピードを上げて、ぶっちぎった。
繁華街に着くと、お目当てのノーパン喫茶『大英帝国』に入る。ここはスポーツ新聞でチェックしていた。
「いらっしゃいませーっ」
店内は、普通の喫茶店とかわらない。女の子は、五人。白いブラウスに黒の超ミニスカート。
その超ミニスカートは、女の子が前屈みになると、お尻がチラリと見えた。
本当にノーパンだ!
さらに、ブラウスの生地は極薄で、ノーブラのビーチクが透けて見える。
「ご注文は?」
と、聖子ちゃんカットの可愛い娘が俺のテーブルに来た。
「あ、コーヒーを一つ」
床は鏡張りだ。俺は下を向いて、その鏡を凝視する。
見えた!
少し濃いめの『黒い束子』が見えた。
『大英帝国ばんざーい!』
俺は心のなかで歓喜を爆発させる。
しばらく、女の子たちの恥態を堪能してから、コーヒー一杯の値段にしては高すぎる料金を支払い、店を出た。
すると店の外には、先程の黒いドクロの暴走族が待ち構えている。二十人くらいで、店先を取り囲んでいた。
リーゼントにサングラス、ひげ面の男が前に出てきて、俺に向かって言う。
「さっきは、ずいぶんとナメたマネしてくれたな」
余裕をかまして俺は、
「やめておけ、俺は強いぜ」
「オレのほうが強いよ」
と、ひげ面の男。
「俺は人間じゃねえんだよ!」
「オレたちもだ!」
そう言うと、二十人の暴走族は、
「ヒョエイーッ」
飛び上がって、頭部が骸骨の黒い戦闘員に姿を変えた。
「オレたちは、ジョッガー『地獄の軍団』だ」
「アサルト・チェンジ!」
俺も、赤を基調とした全身装甲の戦闘形態に変身する。
戦闘形態のアサルト・ソルジャーに成れば、戦闘員など雑魚だ。無双の俺は、あっという間に、二十人の敵を叩きのめした。
そこへ、
「さすがね、アサルト・ソルジャー」
と、ノーパン喫茶の聖子ちゃんカットが出てくる。
「私はジョッガーの幹部『超魔女子アップル・イブ』よ」
聖子ちゃんカットは飛び上がり、クルクルと回転して、超魔女子に変身した。
だが、その姿は、前腕と脛にはピンク色のアーマーが付いているだが、あとは裸で、胸と股間はリンゴ型のカップで隠しているだけだ。武器には鞭を持っている。
「なんだ、その痴女みたいな格好は」
「スケベな目で見ないでよ!」
アップル・イブは鞭を飛ばす。
バシン!
鞭の直撃を、俺は喰らった。瞬間。
バヂィーン!
全身に電撃が走る。弾き飛ばされて、俺は、かなりのダメージを受けた。立てない。
「止めよ」
アップル・イブが、鞭を構えて、歩み寄ってくる。窮地に陥った俺だが、その時。
ブオォォーン。
ジープのオープンカーに乗ったセーラー服の女子高生が登場した。ロングヘアーを風になびかせている。
「そこまでよ、ジョッガー」
女子高生はジープから飛び下り、バズーカ砲を構える。
「何だ、お前は!」
アップル・イブも驚いたようだが、女子高生は、そのままバズーカ砲を発射した。
バゴオォォーン!
直撃を受けるアップル・イブ。吹き飛んで、ビルの壁に叩きつけられた。
「く、くそう。今日は、ここまでだ」
そう、言い残し、逃走する、アップル・イブ。
「き、君は?」
「私は『女子高生コマンドー・泉』よろしくね」
そう言って泉は、動けなくなった俺を置き去りにして、ジープに乗り、颯爽と走り去った。