第11話 真ハカイ・タイガーの脅威 前編
病院に入院した盛高知里だが、一ヶ月もすると、退院して、芸能活動を再開する。
今日も知里は、テレビ画面の中で、元気に歌っていた。
今、知里の身辺警護は、付き人に扮している『コウモリース』が守っている。ジョッガー対策であるなら、コウモリースに任せておくのが、一番、安全だろう。
しかし、依然として、洋子博士は行方不明のままで、俺は一人、この昭和レトロな喫茶店『栗とリス』を営業して、彼女の帰りを待っていた。
そして、その日、リーゼントにサングラス、ひげ面の男が『栗とリス』にやって来た。俺が第2話で叩きのめした、ジョッガーの戦闘員だ。
「何をしに来た」
身構える俺を見て、奴は、
「待ってくれ、別に、あんたと、やり合うために来たんじゃねえ」
「だから、何をしに来たんだ?」
「実は、ジョッガーの内部で大変なことが起こったんだよ」
「それと、俺に何の関係がある」
「蒔洋子を知っているだろう」
「ああ、俺を造った博士だ。今、行方不明だが、お前、何か知っているのか?」
「彼女はジョッガーの超魔人になったんだ」
「な、何だと、本当か?」
「本当も何も、ここからが本題で、超魔人になった蒔洋子は、ジョッガーの首領の『Mr.ナリック』を殺害した。そして、『超魔ロイド真ハカイ・タイガー』を造って、ジョッガーの超魔人や戦闘員を皆殺しにしたんだ」
「ま、まさか」
「蒔洋子は、ジョッガーを壊滅させて、その本拠地を乗っ取ったんだよ」
「洋子博士が、そんなことを」
「オレは運良く助かったんだが、見つかれば殺される」
「それで、ここへ逃げ込んだのか」
「助けてくれよ。あんたなら、何とかできるだろう」
その時、乱暴にドアが蹴り開けられた。
ドカン!
「や、奴だ。真ハカイ・タイガーだ!」
全身銀色、頭部はトラのアンドロイドが、リーゼントの戦闘員を表に引きずり出す。
「た、助けて、頼む、助けてくれ!」
絶叫する、リーゼント戦闘員。
「うぎゃーっ、止めてくれ!」
ぐしゃぐしゃと、戦闘員の手足を引きちぎる、真ハカイ・タイガー。おびただしい血が地面に流れた。
「た、助けてーっ!」
最後は無惨に、頭をグシャリと踏み潰して殺害する。なんとい残忍さだ。
その、真ハカイ・タイガーが、俺に向かって言う。
「我々の本拠地に来てもらおう『超魔女王ヨーコ』が、待っている」
「それは、蒔洋子のことか」
「そうだ。すでに本拠地には、盛高知里も来ているぞ」
「知里はコウモリースが守っているはずだ」
「あのコウモリ女は、オレが殺した」
「な、なに、コウモリースを!」
強い。この真ハカイ・タイガーは、想像以上に強いのだろう。
コウモリースは、ジョッガーの幹部である『アップル・イブ』と上級幹部の『アダム・ドロン』を、 一人で倒した超魔人だ。それを真ハカイ・タイガーは、殺したのか。
「わかった。その本拠地とやらに、案内してくれ」
「よし、付いて来い」
真ハカイ・タイガーは、銀色に輝くオープンカーに乗り、走り出した。俺は、その後をバイクで追う。
真ハカイ・タイガーと俺は、かなりの距離を走り、山間部のトンネルに入る。そのトンネルの奥に、奴らの本拠地があった。そこは『黄金の内壁』の悪趣味な空間だ。
悪趣味な本拠地には、女豹の姿に変貌した洋子博士がいる。今は『超魔女王ヨーコ』となり、中央の玉座に座していた。
盛高知里は、コウモリースの光の十字架『リース・クロス』に、下着姿で磔にされ、その側には、コウモリースの生首が、長剣に突き刺され、晒されていた。
「助けて、アサルト・ソルジャー」
「知里ちゃん!」
さらには『女子高生コマンドー・泉』と『学生刑事』妻藤雪が捕らえられている。
泉は全裸にされ、亀甲縛り、M字開脚の状態で、天井から吊るされていた。その局部は剥き出しだ。
「い、泉!」
「嫌、恥ずかしいッ、見ないで!」
そして雪は、下半身だけを丸裸にされ、大きく脚を広げ、拘束椅子に固定されいる。すすり泣く、雪の傍らには『コーラの瓶』が転がっていた。
女豹姿の洋子博士が、玉座から立ち上がり、ニヤリと笑ながら、雪の頭を撫でる。
「この娘、処女だというので、私が『遊び』を教えてあげたのよ」
「なんて事をするんだ!」
「じっくりと、可愛がってあげるとね。このスケバンちゃんは、ヒイヒイと声を出して、よろこんでいたわ」
「言わないで、うぅっ、うぅぅっ」
いつも強気な雪が、泣き声を漏らした。こんな雪の姿を見たのは、初めてだ。涙を流し、拘束されたまま、脚を広げ、弄ばれた局部を晒している。あまりにも無惨だ。
「気でも狂ったのか?」
「狂っているのは、あなたたちの方よ」
「アサルト・チェンジ!」
俺は赤を基調とした『全身装甲の戦闘形態』に変身する。すかさず、ヨーコが、
「動くな、アサルト・ソルジャー!」
と、知里の下腹部に銀色の銃を突きつけた。
「この銃は、すべての物質を瞬時に凍らせる冷凍銃よ。この娘を子供の産めない体にしたいの」
「や、止めろ。なぜ、そんな残虐なことを?」
「残虐なのは、あなたたちでしょう。大河さんを殺して」
「それは逆恨みだろう」
「逆恨みって何よ。私の愛する人を殺しておいて、私は、あなたたちへの復讐のために、超魔人になる道を選んだわ」
「なんてバカなことを」
「大河さんを失った、私の苦しみは、あなたにはわからない」
「だからといって、超魔人になることはないだろう」
「そうね。でも、超魔人になって、初めて解る事もあるのよ。人間は『弱くて愚か』な存在だし、ジョッガーは『どうしようもないクズ』の集まりだった。だから、私はジョッガーを皆殺しにしたのよ。人間は私が支配するわ」
「く、狂っている」
「狂わせたのは、あなたたちよ」
その時、真ハカイ・タイガーが鉄製の鞭を持ち、
「ヨーコ、対話は、それぐらいにしておけ、オレは、この牝ブタどもに、一度、殺された怨みがある」
「何をする気だ、真ハカイ・タイガー」
「フフフ。お楽しみは、これからだ」
そう言って、真ハカイ・タイガーは、M字開脚で吊るされた泉の背中を、鉄の鞭で、ぶっ叩いた。