表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

今度こそは貴女と笑い合えますように。

不定期更新です。

 語り部は無垢(むく)なる子ども達に笑いかけます。


「この国の平和は先日お亡くなりになった皇太子殿下がもたらしたんだ。君たちが生まれる前、とてもとても恐ろしい令嬢が居たんだ。彼女は魔性の女だったそうだ。にこやかに話しかけ、魅了し、必要でなくなった途端に首を()ねた。おかげで沢山の尊い命が失われた。それに、彼女は着飾るのが大好きで、ブランド物に目がなく、贅沢(ぜいたく)の限りを尽くし、民の生活を圧迫するばかりだった。今の皇女殿下だって命を狙われた被害者のうちの一人だ。皇女殿下に(しび)れる毒を盛り、動けなくさせようとしたんだ。それに気づいた皇太子殿下はその場で彼女の心臓に聖なる剣を突き刺した。彼女は婚約者であったため、彼は国が彼女によって(かたむ)いてしまうのではないかと以前から心配していたから、躊躇(ためら)いなんかなかったんだよ。そして、待ちに待った機会を逃さなかったんだから、素晴らしい御方だよ。いいかい、君たち。悪いことをしたら彼女のようになってしまうからね。人が嫌がるようなことをしてはいけないよ。」


黒い服に身を包んだ青年は心の内で舌打ちしました。


『あの御方は決して暴君なぞではなかった。許すまじ。許すまじ。あの御方が最も嫌う、武具で未来を奪ったこと、死しても(なお)(わす)るること(なか)れ。あの御方が最も(なげ)く、(みにく)い誘惑に負けて生命を()んだこと、忘るること勿れ。私は片時も忘れたことなぞなかった。あの御方と過ごした日々を。あの御方を失った時の苦しみを。あの御方が笑みを浮かべつ、涙を流し、冷たく横たわっていたあの姿を。この半生、これほど人を恨んだことはなし。何故、何故誰より平民に歩み寄らんと尽力なさっていたあの御方が、このように悪人として語り継がれねばならぬのだ。あの日、非業の死を遂げたのは、何故罪なきあの御方であったのか。』


 夕闇に金の瞳が輝きました。青年の足元には赤黒い魔法陣が描かれております。


『目には目を歯には歯を。お許しを。貴女様を今度こそは守りぬきとうございます。いざ。』


 黒い光が辺りを埋め尽くし、カラカラと時計の針は逆さに(まわ)り始めました。クルクルと人々は(うず)に飲み込まれ、ぐにゃりと(ゆが)み、消えてゆきます。かの青年も黒に飲まれ、いずれ見えなくなりました。


のんびり更新します。よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ