生徒会兼第二王女 クリス・レイ・シンフリーディンス
生徒会
それは、学園をより良く過ごしやすくするために生徒だけで、設立された組織。
主に、治安の維持、学園行事の運営等を行っている。
クリス・レイ・シンフリーディンスは三年生の先輩であり、シンフリーディンス王国の第二王女であり、シンフリーディンス王国の中で唯一生徒会に属している人物である。
「もう一度言います。これは一体どうゆうことですか?」
クリス殿下はそう言うと、周りを見渡した。そこに一人の人物が駆け寄る。
デーブだ。
「クリス殿下!私の話を聞いて下さい!」
デーブは一人称を「私」に変えた。王女相手に「俺様」は不敬だからだ。
「あなたは?」
「申し遅れました、私はザーコー男爵家次期当主デーブ・ザーコーと申します」
デーブは一礼をする。
「ああ、あのザーコー男爵家の、それではデーブ様この状況を説明してくれますか」
「わかりました、では結論から言います、あのユウと言う平民を退学した方がいいと思います」
「は?」
僕は驚いた。まさか今度はクリス殿下を使って僕を退学させようとするなんて、驚きしか生まれなかった。
「あの平民は名誉ある決闘に不正を働いたのです」
デーブはありもしない嘘を淡々と話す。いや、デーブには貴族としてのプライドが許さないから本当にそう思っているかもしれない。
「決闘…ですか、決闘は普通貴族同士でしか行えないはずですが…」
「それに関しましてはあの平民も同意を得ております」
「本当ですか?」
「はい」
それに関しては、僕から何も言えない。決闘を同意したのは本当だから。というか、この広場にいる人全員目撃者だから、ここで嘘をついてもすぐバレてしまう。
「決闘の同意についてはわかりました、では、不正というのは?」
「実はあの平民私に元から勝てないのにもかかわらず決闘を受け入れたのは、おそらく確実に勝てる方法があると考えたと思います」
「それで不正………ですか」
「そうです」
「では、どういう不正を働いたのですか?」
「普通、平民はLv5 の魔法氷結の堅壁を使えません、なのでおそらく、魔法道具もしくは自分で使うと見せかけて他の誰かが使ったのではないでしょうか?どちらにせよ、なんとも卑怯な平民ですね」
デーブは嘘をついてるのか本当にそう思ってるのかわからないが、僕に身に覚えのないことを淡々と述べる。
クリス殿下は僕の方に向き言った。
「ユウくん、あなたは不正を働きましたか?」
「いいえ、僕は何も不正をしていません」
「嘘つけ!お前みたいな平民があんな魔法を使えるわけーー」
「そうですか、ならばこれ以上疑うわけにはいきません」
「えっ!?」
デーブは非常に驚いていた。
そんなデーブを無視して、クリス殿下は広場を後にしようとする。
「ちょっと待ってください!あんな平民の言うことを信じるんですか?よく考えてください、平民は普通、魔法を覚えるのさえままならないんですよ」
「でも、ユウくんは嘘をついてませんよ」
「騙されないでください、あの平民はなんの力もないが嘘をつくのはうまい詐欺師でーー」
「『嘘言看破』、それが私のスキルです、能力の効果は『嘘をついてるかどうかわかる』と言うものです」
「なっ!?」
そのスキルは既に知っていた。
ある程度位の高い人だったら、周知の事実だ。
俺もこの世で1番位の高い人の書類から知った。
「嘘をつくとその人から赤いオーラが出ます、ですが彼から出なかった、つまり彼は嘘をついていません」
「そんな…そんなの嘘ですよね…あいつは…あの平民は…あの平民は不正を働いたんです!」
「では、あなたは不正をしていないと」
「えっ…」
突然のクリス殿下の言葉にデーブは一瞬止まった。
「い…いえ、私はそんなこと、してーー」
「デーブ・ザーコー、あなたから赤いオーラが見えていますが、何か嘘をついていますか?」
クリス殿下の言葉には王族の覇気が込められていた。これは、スキルでもない、王族だけの力。
クリス殿下の言葉でデーブの顔に焦りと恐怖の表情を浮かべていた。
「いえ!私はそんな…」
「では、彼らは知っていますか?」
クリス殿下はそう言うと、後ろから両手を縛られて護衛の人に連行されている2人の少年が出てきた。
さっきの風魔法を使った人だろう。
「とある生徒から聞きました、決闘中にユウくんに向けてこの人たちが魔法を撃ったと、この人たちと知り合いではないでしょうか?」
「あ…いや……その」
とある生徒と言っているがおそらくアリスだろう。
見えざる竜巻は文字通り見えない魔法。
だが、アリスは『魔力視』と言う魔力の流れが見えるスキルがあるから見える。
ちなみに、僕は特別な環境で育ったから、スキル無しで敵意も魔力も察知できる。
ユウはアリスに目を向けるとアリスと目が合い、アリスはウィンクした。
これで、とある生徒はアリスであることが確定した。
ユウは再びクリスたちに目を向けた。
そこでは、クリスの質問にどう答えればいいのか考えているデーブの姿があった。
しかし、どう答えても無駄である。
最初の質問とデーブの反応で不正を働いたのがバレてしまっているからだ。
今もなお悩んでいるデーブに対して、クリスは決断を下す。
「デーブ・ザーコー、決闘で不正を働いたとしてこの者たちと一緒に私たちが連行します」
「なっ!」
「連れて行きなさい」
「はっ!」
「そ…そんな………クリス殿下ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
デーブは殿下の護衛の人たちに連行されて行ってしまった。
これで一件落着だな。そろそろ日が暮れるし、夕飯買って戻るか。
ユウが購買に行こうとした時、
「ユウくん、ちょっといいですか?」
「はい…?」
ユウは誰かに呼ばれたため振り返る。
そこには、シンフリーディンス王国の第三王女のクリスがいた。
クリスがユウに近づく。
「どうかいたしましたか、クリス殿下?」
「あなたに関して一つ聞きたいことがありまして、質問いいですか?」
「いいですよ」
「では…」
クリスは一拍置いて言う。
「なぜあなたがLv5の魔法を使えるのですか?」
ユウはクリスからの質問に答える。
「独学で学びました」