密室で七日間過ごしたい人を選べと言われたら
私はいま密室にいます。
女神と名乗る存在から、あなたが当選しましたと突然告げられ、気づいたら密室の中。
なんでも、女神がランダムに祝福を与えているのだそう。
扉も窓もない8畳ほどの何もない部屋。何が祝福なのだろう。
と、立ち尽くしていると――
『選びなさい』
女神様らしき声だけが聞こえ、ヒラヒラと白い紙が頭上から降ってきた。
――上?
見上げてみるも、隙間のない白い天井だ。やはり密室らしい。
紙はA4サイズで5枚あった。男性の全身写真と説明文らしきものが書かれている。
学生服の男の子は悩みを抱える高校生
外ハネ髪のチャラそうな男はカリスマ美容師
実直そうで逞しい体つきの男は百戦錬磨の消防士
神経質そうな男は正確な診断が評判の医師
最後に最近髪が薄くなってきたのを気にする私の夫
『この中から、7日間密室で共に過ごす相手を1人選びなさい』
「そんなの夫に決まってる」
私が夫の紙をとると、『ファイナルアンサー?』と天の声。
……ファイナルアンサーと聞かれたらもう少し考えてみたくなる。
高校生は論外。密室で悩み相談なんて楽しくない。
消防士にも特に用はない。
美容師は髪を切ってもらえるけどそれだけだ。
医師に相談するほど特に不調もないし。
やっぱり後々面倒だから夫にしておくか。
「ファイナル…『密室で起きたことはあなたしか覚えていません』……少し待ってください」
――え? それなら話が変わるよ? それを先に言ってよね!
〜妄想中です。しばらくおまちください〜
「1ついいですか」
『1つだけなら答えましょう』
「皆さん、私のことを、その、好き、という設定ですよね?」
『いいえ』
「ええぇぇえ! 話が違う!!」
――全然祝福じゃないじゃん! 相手からしたら初対面のおばさんと密室で7日間ってなんの罰ゲームって話だよ!
『選びなさい』
「わかりましたよ!」
―――――
「あーこれは極楽だわー」
結局私は誰も選ばず、1人で7日間を過ごした。
部屋に入る大きさなら、願えばなんでもでてくる。
私はひたすら漫画や小説を読み美味しいものを食べ、最後に温泉をだしてもらった。
―――――
『困りましたね』
『女神、何を悩んでおる』
『密室を1人で過ごすと言う者しかいないので、密室から始まる恋を見られないのです』
『そもそも夫を選んだら意味がないだろう』
『それはそれでいいのです』
『いいのか』
『尊いのです』
『女神ならば我を選ぶのであろうな』
『……』
『こ、答えずともよい。わかっておる』
最近はこんな話ばかりですみません。