5お婆さんと猫の散歩
●5お婆さんと猫の散歩
これは子供のころに見た光景だ。
その日、私は母と夕方の散歩していた。
農道をのんびり歩いていると先のほうに腰の曲がったお婆さんがいた。
お婆さんは少し歩くと立ち止まり、一度立ち止まってまた歩き出す。
かなり高齢の方のようで自分のペースで歩かれているんだな思っていたのだが、距離が近づくとお婆さんの足元に猫がいたのだ。
猫は少し歩くと立ち止まりお婆さんがやってきて傍に来るとまた歩きだしていた。
足腰の弱った飼い主を心配して猫が立ち止まっているのだ。
この一人と一匹には絆があるのだなと私は子供ながらに感動した。
近づき挨拶をして母がお婆さんと猫の話を聞くと私は勘違いしていた。
実は猫かなりの高齢なお婆ちゃん猫なのらしいのだが、毎日朝と夕方には必ず散歩するらしいのだ。
ヨボヨボで足腰が弱っているのでお婆さんが付き添いをしているらしい。ついでに自分の健康にも良いからとお婆さんは笑っていた。
猫が立ち止まるのは猫自身の体力が落ちて休憩を入れているとのこと。
私が触ろうとするとお婆さんの後ろに隠れた。
猫はお婆さんにしか触らせることはないらしい。
どっちかが死ぬまで散歩するよとお婆さんは言って再び散歩を開始された。
私から見ていると猫は立ち止まるたびにお婆さんの方を向いていた。
お婆さんも猫も相手を想いあっているんだなと最初の感動を更にいい方向に訂正した。