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事件の経過

薫は、事件の経過を話し始めた。

「Aの父親は輸入雑貨の事業に失敗して、あの家に越してきた」

「大きな家からシェパードの子犬を連れてきたのかな」

「子犬?」

「事件当時は一才くらいだから」

「成る程。事業の立て直しに奔走していた矢先に事件が起こった。子ども殺しのレッテルを張られ取引先に見放された。結果、自己破産して家は競売になった。今は旦那の実家(四国の田舎)に身を寄せている」

「放置子が事実なら母親は育児ノイローゼかなんか、だったのか?」

「家事を怠っていた形跡は無かった。家の中が綺麗やったという事やな」

「けど、事件の日には放置していたんだろ?」


「事件の前日から母親は体調が悪く、寝込んでいた。それで、隣近所の母親達が見てくれたと」

子ども達が、公園で遊ぶ声が聞こえていた。

夕方になって、

(今から皆でスーパーに行く。A君も行きたいと言っている)

と言われた。

インターホン越し、子どもの声だった。

1時間ほどで戻ると思った。


「A君はB達と一緒に居たって事?」

「いや。一緒に居なかった。母親の勘違いやった」

「勘違いって……何で?」


「Bは、自分たちの子どもとA君が一緒に遊んだことはない、と言っている。A君はコミュ力に問題があったと。事件の日、スーパーに皆で行った。道の途中にA君が居た。そして着いてくる。駄目と行っても聞かない。仕方なく家の前まで連れて戻り、一言母親に伝えた。そういう事は何回もあったと。Bだけではない。例の3人が同じ証言をしている」

 夜になってAの父親が家に来たとBが証言。

 Bは5時頃にAが一人でウロウロしていたので、家の前まで連れて帰り

 母親に伝えたと、ありのままに話した。


「A君が家の中に入ったかどうかは分からない。誰も、しっかりと見ていなかった。母親はスーパーマーケットに行くと思い、玄関に出て行くこともしなかった」

  鍵はかけていなかった。

 

「午後5時頃、自宅前、これがA君の最後の目撃情報や。付近を捜索したところスーパーマーケット近くの畑で靴片方が見付かった」

「A君、皆のあとを追いかけたんじゃないの?」

「状況から推測して、それが一番あり得ると思うやろ。ところが目撃情報が無い」

「スーパーマ-ケットが混む時間帯だね。幼児が一人で歩いていたら記憶に残る筈」

「でも、全く無かったんや」

「警察犬も使ったんだろ?」

「うん。自宅周辺と、スーパーまでの途中にしか痕跡はなかった。畑には行ってない。靴は何者かが捨てた。最後の目撃時間後の行動として、家の中に入った可能性が出てきた」


「両親が疑われるのも無理ないな」

「3人の証言から、Aの母親は日常的にAを放置していた。近所の親たちが自分たちの子どもと一緒に面倒を見てくれると、勝手に甘えていた。これが事実とされた。機能不全家庭の烙印を押されたようなモンやしな」

「母親は、放置については認めたの?」

「事件当日については、認めている。それ以前の状況についてもキッパリとは否定していない。精神状態不安定で多くは語れなかった」

 

「両親のどちらかがA君を死なせて、偽装工作したかもしれないと疑われたんだ」

「だがシロやった。事件の夜、駐在が訪問している。母親は40度近い熱で、玄関に出てきたがフラフラやった。父親は朝から神戸まで商談に車で出ていた。夜に戻ってから外出していない」

「家の中に殺害の形跡がなく、遺体を運んだ形跡も無かったんだね」


「生命保険は掛けていない。事件の1週間前に、入園前健康診断を受けているが、暴行の跡は無かった。子殺しにありがちな背景が見当たらない」


「じゃあ、やっぱり何者かに連れ去られたんだ。でも目撃証言がない」


「幼児行方不明事件にありがちなケースでは、バラバラな目撃情報に捜査が攪乱されて、日にちが過ぎて行ってしまう」

「バラバラな目撃情報の中には真実以外が混じっていると予測するけど、この事件では最後の目撃情報に疑いは無かったんだね」


「まあ、そうやな。……午後5時頃、最後にA君を家の前に連れていき、インターホンで母親と話した。この時に一緒に居たのは3組の親子や。インターホンで話したのはAの母親からの聞き取りと一致している。嘘やと、思わない、やろ?」

「うん」

「でも、考えたらな、結束の固いママ友3人組が、口裏を合わせることも、出来るやんか」

「インターホンは子どもの声だったんだろ?」

「うん。まだ小さい子や。親に、こう言いなさいと指示されたら、その通りするかも。最後の目撃証言は捏造可能、やったんや」


「……なんで、そんな面倒なコトする?」

「真犯人、やから。……どうや?」

 薫は、聖のパソコンを触り

 3人の動画を出す。


 <人殺しは見れば分かる>

 聖の力を頼るしかない。


「前にも見たけど……違うと、思う」

4才の子を殺していれば

人殺しの片方の手は、とても小さいく見える。

鮮明な画像でなくても

一部分しか見えなくても

分かりやすい。

見落とす筈はない。


「違うか。ハズレやな」

「いや、分からないよ。……子どもの方が絡んでいるかも知れない」


 前に、そういう事件があった事を思い出した。

 息子が、隣の子を死なせてしまい

 隠蔽工作した母親の事を。


だが、画像に子どもなど映っては居ない。

もしも映っていたとしても

子どもが子どもを殺したとして

その徴は良く見ないと判別出来ない。


「なあ、セイ、A君の生まれ変わりと言い出した、Eに話を聞いてみたらどうやろ? 当時のAの母とBら3人、ママ友関係が実際、どうやったか。客観的な立場から聴取したい」




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