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鬼火


「あった。『犬捨池に、犬の形をした鬼火』オカルトの掲示板だ。地元の怖い話を誰かが投稿している」

「鬼火……怨霊かしら?」

「うん。祖母に聴いた話、明治に起こった実話だと書いてある」

 

 

ある日、地主の息子が行方不明になった。

 地主の家では一匹の大きな犬を飼っていた。

 その犬も、いない。


 皆で子どもを捜した。

 犬が先に見付かった。

 村はずれの池の畔で唸っている。

 剥き出しの歯に血が付いている。

 口の中を確かめると

 ちぎれた子どもの指先を咥えていた。


 犬が子どもを襲ったと、皆思った。

 怒り狂った男達に、犬はその場で殺された。

 池に捨てられた。


どうか命があって欲しいと、子どもを捜した。

だが、日暮れまで捜しても見付からない。

犬に襲われた子が遠くへ行くはずが無いのに。


夜が明けて

子どもの遺体が池に浮かび上がった。

犬の遺体と一緒に。

子どもに指以外の傷は無かった。


地主は子どもの死を嘆いた。

犬を憎んだ。


暫くして

鬼火が出ると噂になった。

犬の姿をしている。

池に飛び込むような姿に見えると。


村人は池に行くのを恐れた。

地主は隣村から拝屋を呼んだ。

鬼火を鎮めるよう依頼したのだ。

だが、

初めて見る獣の怨霊、自分では手に負えない、と言う。


地主は腹立たしかった。

我が子を殺しておいて

死んでまでも村人を怖がらせる。

憎んでも憎みきれない。

犬への恨み辛みを拝屋にぶつけた。


拝屋は去り際に呟いた。

「溺れるのを助けようとした、濡れ衣で殺された、それならば恨みましょうよ」


地主は、思い返してみた。

息子の遺体に指以外、傷は無かった。

犬は池に沈む息子を助けようとした結果、指先を噛んだかもしれない。

早速村人を集め、話してみた。


真実は分からない。

しかし、犬を供養してやろう、となったのか……。

いつからか石仏(狛犬)が置かれ

鬼火も消えた。



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