第99話 偶然という名の
シミュレーターのコンソールを握るミーコ。
360度スクリーンの視界前方、光弾近づく。
粒子ビームの矢が近づくが、驚異的な運動能力と反射神経で、まるでテレポートするかのうように移動。
“ダメだよアール、そんなんじゃあたしには当たらないから!”
さらに、接近する機体反応2機。
そのうちの一機、ミーコ機に粒子ビームを発射、ミーコ機、またしても瞬時に移動し、あっさりかわしてしまう。
その機体は、ミーコ機の移動した側に全速力で通過ざまに、レーザーソードで切りつけてくる。
ヒートアームを装着したミーコ機、ソードを弾いてすぐさま腕をクロスさせ、次漸を防ぐ。
“お前やるなぁ!”
レーザーソードで斬りかかるリロメラ機、そう言いながら斬撃を止めない。
“ふんっ、まだまだ甘いよ!”
ミーコ機は、クロスした腕を両手払いでリロメラ機の斬撃をはじき返した。
眼前から消えたリロメラ機、すぐさまミーコ機の背後に回り、けさ斬りをかけてくるが、素早く機体を回しながら、ヒートアームでリロメラ機の胸元を弾く。
“ぐっ、まだまだ”
むきになったリロメラは、さらにミーコに猛烈な突きの連打を仕掛ける。
一打が、ミーコ機の肩にヒットし、関節上部が砕かれ、ミーコ機は反動で回転する。
“リロメラ、あなた飛ばし過ぎよ!
ミーコちゃんもムキにならないの!”
傍らで見守っていたネフィラ機、なかなか二人の斬り合いに割り込めないのもあって、牽制する。
ミーコ機、回転から復活し、さらなるリロメラの斬撃を交わしながら距離を取る。
“だって、リロメラとバトルだと楽しいんだもん、容赦ないし!
先生だって、アールとやる時より楽しそう!”
ミーコはまるで水を得た魚のようであった。
“呼んだかなミーコ。
では私の手加減は次回からなしにする、楽しみにしているといい”
ミーコは、大声で笑った。
“先生、アールが負け惜しみ言ってるよ!”
ネフィラ機は、機体のままからもわかるほど、肩の力を抜いて、やれやれといった様を見せている。
“ミーコっ! まだまだ終わっちゃいねぇ、今度こそど真ん中に見舞って、風通しよくしてやるぜっ!”
“リロメラ、いい加減になさい、ミーコちゃんもよっ!”
シミュレーターの模擬戦とはいえ、この二人に関しては何を言っても無駄なようである。
その時、アールは通信サインを受け取った。
一洸からだった。
◇ ◇ ◇
オレは、ネフィラがアールに依頼した魔換炉の素材に反応する物質を検証するため、思い当たる鉱石や魔石から純粋物質を抽出する作業を、レイラとともにやっている。
そのうちの一つ、レイラが抽出している。
「……これも、違うみたいです」
レイラは、並べられた希土、魔石の小山を一つ一つ検証している。
素材から不純物を取り除き、純粋な物質に近い形にして、魔換炉へ接触させて、反応の有無を見る。
こんな原始的な方法ではあったが、あまりにも情報が少なかったため、考えられる部分から検証してるわけだ。
オレは、大陸からかき集めるだけ集めたそれらを並べてはいたが、どうにももう一つの要素が足りないような気がしていた。
まさかとは思うが、魔換炉に反応する素材は、魔石や鉱石の類ではないのかもしれない。
オリハルコンもミスリルも、全くの無反応だ。
なにかが引っかかっていた。
「……すまないレイラ、君にしかできないことだからお願いしてしまったが」
「……いえ、あの、いいんです。
私、なかなか一洸さんと一緒の作業って、ないので……
全然いいんです」
レイラは、いつにもまして赤くなってしまった。
そう言ってくれると助かるが、実は無理をしてるのかと勘ぐってしまう。
化合物の可能性。
もしそうだとしたら、捜索範囲が広すぎて、今のやり方では無理があるな。
どこかの研究機関にでも依頼するしかないだろう。
その時だった。
魔換炉が眩く光りはじめたかと思うと、形状の中心部分が、まるでボルトを回転させるかのようにゆっくりと回りはじめて、止まった。
レイラは呆然としてしまっている。
「今の物質は、これかい?」
「ええ、さっき、一洸さんが渡してくれた…… これの不純物を取り除いたものです」
それは、以前投擲爆の製造法を教えてくれた、名もなき者からもらったサンプルの一部だった。
“アール、取り込み中すまないが……
例の魔換炉の反応物質、見つかったかもしれない”
コミュニケーターは、機械生命体の“やった!”という意識のかけらを、オレの心にまで届けてくれる。
“でかしたな一洸、見せてくれ”
それを言い終わる前に、すでにフリスビードローンはオレの上にいた。
【 恐れ入りますが、下記お願いいたします 】
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