第93話 リロメラ
エイミー・ロイド少尉の乗艦する連邦揚陸艇、ネクロニウム反応を察知した地表へ降下している。
「量子魚雷反応確認、降下地点付近にて射出……
戦艦レベルのものです」
戦艦レベル?
この惑星上で、戦艦が量子魚雷を発射したというのか?
まさか一洸が。
あの鹵獲戦艦に、特異空間から発射させたというの……
エイミーは、自分が炉核弾を発射して、異形の存在を駆逐したのをありありと思いだした。
降下目標地点の映像が映し出される。
そこには、粉々に千切れとんだ赤褐色のアメーバの醜い断片が、燻りながら熱を帯びて朽ちていく様があった。
「あの時とは…… 規模が違うわ。
量子魚雷一発でこうなったわけか。
シールドなしで破壊された攻撃対象の末路、凄すぎる威力ね」
エイミーは、今さらながら量子魚雷の威力に恐れおののいた。
通常は位相差シールドで守られている者同士、その効果の程を間近で確認するチャンスはほとんどないに等しい。
“一洸、聞こえる? ……一洸”
エイミーは、一洸に繋いだが、返答はなかった。
地表は高温と熱波の渦巻く状態で、爆心付近への直接降下は危険である。
耐熱プラグスーツを着たエイミーとスタッフたち、揚陸艇から降りて、付近をスキャンすると、高濃度のネクロニウム反応を多数感知。
「集められるだけ集めましょう」
エイミーは作業に没頭しはじめた。
◇ ◇ ◇
もうこれぐらいでいいだろうな。
“ミーコ、アンナ、レイラ、カミオさん、もう大丈夫そうです、みんなお疲れさまでした”
おれは、続けて言った。
“アール、おつかれさま。
助かったよ、ありがとう”
“上手くいって良かった…… グレード3の威力、私もどれほどのものかよく認識できたよ”
シールドのない相手に対しての効果測定など、実際ほとんど出来なかったんだろう。
グレード3でこれだ、その上だとこれ以上なのか。
それはまた次に考えよう。
オレは異形掃討作業を終えた。
地表は高熱と燻る煙ではっきりとしなかったが、異形の化け物はもうそこには存在していない。
あっという間のもの凄い時間だった。
大したこともしていないのに、疲れている自分に気がつくのが少々遅れてしまう。
オレは深いため息をつき、しばし呆然とその空間に漂った。
バトラーの警告サインで我に返る。
優雅に飛翔して近づいてくる存在、あの天使だ。
それは拡大するまでもなく、白銀の翼を持ち、眩い光を纏った、古より表現され続けてきた天使。
近づいてくる映像を見ても、まだ性別はわからない。
ネフィラとはまた違った、常識を超えた美しさをたたえたそれは、いきなり話しかけてきた。
“よぉ、お前すげぇな、あの図体だけのクソウザい下等生物をよぉ、ほとんど一発で仕留めやがった。
ま、俺様も相当後片付けはしてやったけどよ”
え?
あまりにも実物とイメージ、先入観からかけ離れた物言いに、オレは絶句する。
まるで、かなり質の悪いヤンキーだ。
基本的に自分と関わる人種ではなかったが、なんとなく懐かしく感じてしまった。
“……あ、あの”
”お、喋れるってことは人間以上だってことだな、少なくとも魔獣じゃねぇ。
お前は魔神か?
まさか、神とか言わねぇよな……”
さて、どうしたものか。
カミオによって持ってこられたゴーテナス帝国の天使捜索依頼。
その物件目標が今、自分に近づいてきている。
まず意思疎通だな。
“あの、大変でしたね、おつかれさまでした”
“お、おぅ…… お前もな”
前線基地の中にまで流入した、溢れかえる魔族の群衆。
彼らの歓声は、敢えてモニターしなくても機内から十分に感じられるほどだ。
“魔王様万歳” “魔王様、復活万歳”…… そんなことを口々に言っているようだった。
オレはこの後の説明の煩わしさに、かなりうんざりした。
もしこのまま放置しておいたら、オレは間違いなく魔王にされてしまうだろう。
ベリアルとバラムが、警備隊幹部たちとともにメインゲートの前にいた。
オレは緩やかにバトラーを着地させると、後に続いて天使も着地する。
この場所にオレを飛来させるため、警備隊員たちは歓声を上げる群衆の波を抑えるのに総出であたってくれている。
胸部ハッチを開いた瞬間、まるでボリュームを最大にしたかのような、割れんばかりの歓声、歓喜の嵐……
「一洸様、お戻りお待ちしておりました」
オレはラウンドバトラーから降りると、ベリアルとバラムに出迎えられた。
「へぇー、お前人間だったのか。
絶対あのクソ神の仲間かと思ってたぜ」
後ろにいる天使、白銀の翼をたたみながら、オレの姿を初めて見た印象を語っている。
ベリアルとバラム、天使のぶしつけな物言いに身構える。
「あ、大丈夫です。
こちらは、あの化け物退治に協力してくれたリロメラさんです。
詳しいことは後ほど……」
「おぅ、後でな」
リロメラは周囲を見回すでもなく、全く臆することなく堂々としている。
地上に立った身の丈はそれほどではなかったが、全身から溢れ出る威光が、彼?の姿を、実際のサイズ以上に見せていた。
オレはそこまで言うと、ベリアルに促されながら天使“リロメラ”を連れて、前線基地に入っていく。
オレたちを迎え入れたこの場所の歓声は、しばらく止むことはなかった。
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