第83話 トレーニング
保管域に戻ったオレが見せられたのは、ミーコたち三人娘が、アールの放ったフリスビー相手にトレーニングをしている様子だった。
見えない程の高速で移動するフリスビー型のドローン、撃ちだされる模擬弾? のようなゴルフボール大の弾丸、それを見事な体捌きでよけながら、魔法で反撃。
監督はもちろんネフィラ、オレが戻ったことにも気づかずに、集中して事にあたっている。
光の剣が模擬弾になっただけで、まるで例のSF映画の騎士の訓練を思わせる。
なるほど、あれを観て“やってみたい!”となったわけか。
アールもノリノリで協力、全ての欲求が合致したわけだ。
このトレーニング方法は、素人のオレが見た限りだが、悪くはないと思われた。
彼女たちは、トレーニングというよりも、スポーツの一環としてやっていて、楽しんでいるのがわかる。
オレは、しばらく彼女たちの様子を見ていた。
ミーコやアンナ、レイラを冒険者・魔法戦士として自立させるために、こういったトレーニングは必要だ。
今回の事も含めて、これから危険の度合いは増していくことだろう。
ネフィラがオレに気づいて、傍らにやってきた。
「ね、凄いでしょ、あの子たち、もうそこそこの冒険者でも勝てないわよ。
物理戦だけじゃなく、魔法が絡んだらかなーり手強いわね……
あなたもやってみる?」
ネフィラは、オレを引きずり込んで楽しく鍛えたいようだ。
そんな話に乗ってみるのも悪くはないな。
オレは外界の時間停止をして、少し考えてみることにした。
「みんなすごいな…… 本当に強くなったよね」
そう言いながら、オレは冷蔵庫から冷たく冷やした飲み物を用意すると、三人に渡した。
「おにいちゃん、もう話はすんだの?」
「一洸さん、本当に忙しそうですよね……」
「……あ、あの、おつかれさまです」
彼女たちの溌剌さは、見ていて楽しくなる。
これは普通に、スポーツ観戦を楽しむ感覚に似ていた。
「みんながこの保管域からの攻撃だけじゃなくて、実際の冒険者業務に役立ちそうな訓練をしてくれて、オレは安心してるんだ。
前回のアールの時もそうだったけど、みんなの力は本当に強くなってる。
今も見せてもらったけど、特に防御力や体術が向上してくれてるみたいで、頼もしいよ」
オレが話した内容、今の部分だけでアンナの表情が少し堅くなった。
さすが、何を言い出すのか予想がつくんだろうな。
ということは、その回答も用意していると考えていいか。
「次元窓から見ていてわかったと思うけど……
オレは魔族の住む魔界と、地上の魔族国家プルートニアの運営に協力しなきゃならない。
ずっとそうするかどうかは、これからの流れ次第なんだけど、当面関わると思う。
街が消失したり、国ごと消える事件が起こり始めて、カミオさんたちも帝国から調査を依頼されてることは、みんなも知っての通りです」
ミーコは珍しく黙って聞いてくれているようだ。
レイラは、アンナほどではないが、緊張しているように見える。
ネフィラは、まるで俯瞰するような目線で、オレたちを見つめている。
「これから、増々危険の度合いが増えると思う。
ミーコは元々オレと一緒にこの世界にやってきたから今さらだけど、
アンナとレイラは……
これからの希望を聞いておこうと思ってさ」
アンナは、口元をしっかりとさせて姿勢を正している。
レイラはそんなアンナを見て、少し小さくなっているように見えた。
「一洸さん、わたし、このまま続けていいですか?
冒険者の業務は、最初の段階で大体わかりました。
その後の流れは、普通の冒険者では体験できないような、物凄くドキドキするような事ばかりでした。
今もそうです。
わたし、この先も一洸さんやミーコちゃん、レイラと“ブラザーズ”でいたいです。
それに、ネフィラ先生からも、もっと勉強したいです」
「……あ、あの、わたしも、わたしもずっと…… お願いします」
アンナがそう言った瞬間、間髪をいれずレイラも続いた。
彼女たちの気持ちはわかった。
「ありがとう、そう言ってくれると嬉しいよ。
ただ、さっきも言ったように、危険度は跳ね上がると思う。
覚悟はしておいてほしいんだ」
二人は同時に頷いた。
少し遅れて、ミーコも頷いた。
「おにいちゃんもトレーニングしようよ!
もっと強くなんないと!」
痛いところをつかれた。
わかってますとも、鍛えますよ。
“一洸、鍛えたいのか?
模擬弾の速度は、いくらでも調節できるぞ”
アールがそう言ってきた。
この戦艦も、オレを使って遊びたいと言うのか。
いいだろう。
“ま、ほどほどに頼むよ”
彼女たちのような露出度の高い軽装ではなく、着慣れたジャージに着替えるべく、オレは荷物置き場に向かった。
【 恐れ入りますが、下記お願いいたします 】
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