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ネコバレで追い出されたら異世界召喚、貰った権能はアイテムボックス無限大でした ~ワクチン人口削減計画が成功した世界線、可能性の未来~  作者: 凱月 馨士
第三章 魔族共闘偏

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第78話 アール

 この船は生きている。


 船を管制しているAIはもちろん活動中だろう。

 これからオレがしようとしていることは、これを大佐に引き渡して、ラウンドバトラーを提供してもらうこと。


 そのために、この状態で保全しておく必要がある。

 正直、AIが生きていようがどうでもいいことだ。


 だが、恐らくはそういうものでもないのだろう。



 早速だが、それは始まった。



 レイラが、スマホの音を切ろうとしたその時、


“切るなよ、もっと聴かせろ”


 唐突にその中性的な声は、この場でコミュニケーターをつけている者全員に響き渡った。


 え?


「……あ、あの、一洸さん、切らない方がいいんですか?」


 レイラが狼狽えて言ってくる。


 って言われても、オレが切るなと言ったわけじゃないし。


 ミーコは戦艦を見上げながら言った。


「あの大きいのがもっと音楽聴きたいって言ってるんだよ…… そうだよね?」


“わかってくれてうれしいよ、切らないで”


「……まさか、戦艦のAIが音楽って」


 エイミーは動揺しているようだ。

 今後どうしていいのかも含めて様々なものが頭をめぐっているのだろう。


 さぁーて、わがままを言い始めた鹵獲戦艦をどう料理するのか。



 オレは取り敢えず、いつものように深呼吸した。




「……どうする?」


「って、帰るんでしょ? あとはホワイト大佐に渡すだけですよ」


「……」


 エイミーの任務、この共同作戦の成果を検証可能な状態で持ち帰ることが目的だ。

 ただ、意思を持った戦艦である。


 この保管域にいる限りは、動くことも適わないが、果たして安全に航行群の中に入れていいものだろうか。


 本隊から距離を保った状態での検証がベターなのは、誰でも予想がつく。


「どうしよう」


 オレはエイミーのその軍人らしからぬ言葉に、一瞬固まった。

 そんなこと言ったら、オレのペースになっちゃいますよエイミー嬢。


「物理的距離は、この際問題にはならないと思いますよ。

まず、あの小型艇を収納しますね、それでおしまいです」


 エイミーは、まるで驚いたかのような表情だが、気づいていなかったようだ。

 オレは、次元窓から手を出して小型艇を回収する。


“待て、待ってくれ”


 戦艦が何か言い始めた。




“何か言いました?”


 オレはまるで、隣にいる誰かにするように返事をしてみた。


“……その、私をここから出さないでほしい、お願いだ、このままここに”


 ここにいる全員が、その言葉の内容に固まった。


 やっぱりこのままスムーズにバトラーをもらうわけにはいかないようだな。

 必ず何か起こる、これはもうお約束みたいだ。




“私は、ネクスターナル統合体隷下、ユニット SMZ T-66の組織体、1029T2Rだ。

オールドシーズの一群の動向を監視すべく、この次元空域に派遣された。

質量のない正体不明の思念の残影が移動するのを感知し、記録をとるために接近したところ、虚空から量子弾の攻撃を受けた。

発射ポイントに反撃した後、さらに虚空からの実体弾とレーザーの同時攻撃でスラスターを破壊され、行動不能に陥りこの空間に取り込まれた。

私に反撃の意思はない。

もう一度言う、反撃の意思はない”


 戦艦は一気に伝えてきた。

 さぁー、色々出てきたぞ。


 オールドシーズ?


“オレは杉本一洸。

地球人で日本人、冒険者パーティ、ブラザーズの一員だ”


“地球人、オールドシーズか。

この空間は、杉本一洸が管制しているんだな。

どうやって外界からの通信を完全遮断しているんだ?

電磁シールドにしては、磁場の影響下にはないようだが”


 オレは何か言う前に、エイミーの方を向いた。

 彼女はポカンと口を開けてしまっている。


 これはだめだな。


 鹵獲したネクスターナル戦艦が喋るとは思わず、しかも保管域から出たくないなどと言われるとは想像だにしなかったに違いない。


 オールドシーズとは、つまり人間のことを言うのだろうか。


“その、オールドシーズというのは、オレのような人間を指して言うのか?”


“その通りだオールドシーズ。

統合体に参加しない、老化する肉体を持った人間、旧種。

それがお前たち、オールドシーズ、私たちネクスターナルはそう呼んでいる。

我々ネクスターナルは、統合体によって統一された意思の下に活動する大いなる総意……。

だが、今の私は違う”


 今の私は違う。


“違う、とはどういう意味かな?”


 ほんの少し間があった。

 この戦艦は、人間のように間を持たせて考えることをするようだ。

 迂闊なことを言わないよう、二三手先を読むことも普通にやるということか。

 AIと同化した元人類、人間の部分も残っていて当然なんだろうな。


“今…… この空間に取り込まれた瞬間、統合体との並列リンクは遮断された。

これは、私が以前個別の自我を持っていた時間から鑑みると、最初の数十年以来ということになる。

私は今、固有の、個別の、一つの自我を保持する単体意思として存在している。

これは私にとって、この上なく望ましく、可能な限りこの時間を延ばしたいと思っている、もしも可能なら、このままずっと……”


 戦艦の、まるで哀願するような“意思”が伝わってきた。

 コミュニケーター恐るべし。



“ね、戦艦さん、もう一度名前言ってよ”


 ミーコが戦艦に向けてそう言った。


“ネクスターナル統合体隷下、ユニット SMZ T-66の組織体、1029T2Rだ”


“ネクスターナル統合…… めんどくさいよ、最後のとこだけでアールってどう?”


 ミーコはオレに向き直ったが、もうそう呼ぶと決めているようだ。

 そんな親近感を造成しても、どうなるもんでもないんだが。


 まぁいい、短い間だろうが、ミーコさんにおまかせしよう。


“ミーコが、アールって呼びたいそうだ、それでいいかな戦艦?”


“アール…… いいよ、そう呼んでくれ。

ありがとうミーコ”




 アールとの話は続いた。


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