第73話 空より上の世界から
ホワイト大佐は、オレが呼ばれた理由を話し始めた。
戦術的な話になるとの前置きで、オレがちんぷんかんぷんになること了承し、覚悟してもらった上でのことだ。
「まず位相差シールドの理解だ。
理論云々よりも、戦術上実際に起こりうる事をベースに話す。
自分と敵が、宇宙船で戦闘状態に入ったとする。
位相差シールドを展開した場合、多次元、それも隣の次元に敵が位置した時には双方の姿は視認できるが、物理攻撃は効かない。
この位相差シールドを展開させるには時間制限があり、エネルギー供給源として戦艦並のリアクターを装備する必要がある。
主航行群より上下・前後・左右に位相差シールドを装備した戦艦を配置したとしても、攻撃・防御双方に時間制限があり現実的ではない。
つまり、シールドを展開している時は、防御は出来ても攻撃はできない。
もし敵を攻撃したい場合は、シールドの展開を解いた状態でないといけないんだ。
これは敵側も同じだよ。
……もしも、一洸君と保管域魔法空間からの無差別攻撃と位相差シールドを組み合わせれば、位相差シールドを展開しながら、敵の攻撃を受けずに反撃することが可能となる」
ホワイト大佐は一気に話した。
数百年前の人間の科学常識を考慮してくれたとはいえ、あまりにも聞きなれない単語、それにイメージ力を要求される。
ただし、オレはいいプランだと思った。
エイミー・ロイド少尉。
状況把握力、理解力、大したもんだな。
彼女の報告の正確さには舌を巻かされた。
戦艦並のリアクター。
保管域の補填機能なら、恐らく問題ないだろう。
「……その、攻撃なんですが、具体的にどのようなものなんですか?
オレの保管域からエイミーさんのバトラーに落としてもらった熱核弾のようなものか、あるいは実体弾とか。
仮に、敵に気づかれずにヒットさせることができ、かつ効果的なものだと、どんなものになるんでしょうか?」
オレは単刀直入に切り込んだ。
戦術上の秘密に関わるかもしれないが、それを掴まない限りは、次元窓攻撃を活かしきることは難しい。
「この時代の戦闘についてだが、エイミーからも聞いていると思う、昔と違って、補足され、ロックオンされるともう終わりなんだ。
つまり、近寄らせない、あるいは近づいても気づかれることがない状態を保持しなければならない。
例えばこの航行群だが、360度の定間隔で超遠距離センサーを張り巡らせながら移動している。
センサーが反応した時点で位相差シールドを定時間隔で展開、量子魚雷の一斉攻撃があったとしても全滅しないよう計算して配置されている。
敵殲滅において目指すところは、
相手の隙をついた全方位からの無差別量子魚雷攻撃だ」
引き出せた、やはりその辺りか。
オレはさらに突っ込んだ。
「敵に対する攻撃手段の有効性ですが……
例えば、隕石弾のようなものでも効果はあるんですか?
もし、敵の船体の数十メートル付近に突然開いた異次元空間の入り口から、ダイヤモンド、あるいはレーザー光線、もしくは高硬度の隕石の雨による同時攻撃とか」
「……」
ホワイト大佐は黙ってしまった。
頭の中でシュミレートした場合の予想枠を超えてしまったのかもしれない。
「正直わからないな。
敵船体の外郭強度の詳細もからむが、実戦試行した経緯が今までなかったと思う。
データベースにはあるかもしれんが……
少なくとも、私の経験ではない」
実際どうなるかは未知数だ、だが試す価値はあるな。
「ホワイトさんのプランは、いいものだと思います。
自分が今した提案ですが…… もし可能ならもっと効果的に敵を排除できるかもしれません。
量子魚雷だって、無限にあるわけではないでしょうし。
要するに、察知されずに近づき、シールドを切った状態の敵に接合できればいいんですよね?」
ホワイト大佐の表情が変わった。
大佐に少し待つように言ってから、彼の目の前で鋲を打ち、オレは保管域に入り、すぐに時間停止した。
ネフィラは興奮した顔で迎えてくれる。
「……わたし、死んでも尚こんなものを見て感動できるって思わなかったし、未だに信じられないの。
空より上の世界から、大地を見るなんて、本当にそんなことが出来るなんて……
わたしどうしよう」
ネフィラは熱のこもった両手でオレの手を握り、なかなか離してくれなかった。
「ネフィラさん、落ち着いて。
オレだって初めてですよ、大気圏外からさっきまでいた大地を見るなんて……
これは元いた世界でも、まだ実用的なものではなく、特別な訓練を受けたごく一部の人しか体験できないものだったんです。
これらのことは、あくまで元の世界から300年後の世界の技術があって可能なわけですから、オレも同じように驚いてるんです」
ネフィラは少し落ち着いてようだ、やっと手を離してくれた。
無理もない、剣と魔法の世界の大魔法使いであったとはいえ、宇宙空間からの観光など、想像すらできなかったことだろう。
「ね、あなた、あの金属のゴーレムに乗りたいんでしょ?
今まで話していたあのダンディさん、多分あなたの話に乗ってくると思うわよ」
「ええ、それなんですが、当面斥候として近づいている敵に対して、今考えている方法が有効かどうか、試してみたいんです、力を貸してください」
ネフィラは久しぶりに、美しい女性がやってはいけないあの顔になっている。
オレはある意味確信した、多分上手くいくと。
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