第56話 保管域付属ネフィラ魔法教室
「こんにちは」
魔導士ネフィラの魂は、保管域に入ったブラザーズの娘たちに、優雅に挨拶した。
3人娘は、エルフである彼女の人間離れした美しさに驚いている。
早速、女性たちのティーパーティーが始まった。
おれは最後のチョコケーキを振る舞うべく彼女たちの前にだした。
オレの分はなかったけど。
「みなさん、これが最後のチョコケーキですので、味わってくださいね」
「おにいちゃんの分、ないの?」
「一洸さん、それは……」
「あ、あの、わたし……」
彼女たちは、それぞれに複雑な心の内を明かし、苦しそうであった。
甘いものは別腹、それも、この世界ではありえないほど美味なチョコケーキが最後の賞味とあっては、彼女たちの悲しみもひとしおだろう。
おれも食べたかった。
「これ、一洸さんの元のせか…… あ、そうね」
ネフィラはうっかり言いそうになったが、なんとかごまかした。
「そんなに美味しいのかしら? んもぅ、早く言ってくれれば!」
ネフィラはそう言うと、手を一振りして、その後を光の帯が舞う。
チョコケーキは、ポップコーンのようにあふれかえって増えた。
え?
オレは腰を抜かしそうになり、3人娘は飛び上がって喜んでいる。
彼女らが手を取り合って跳ね回る姿は、なかなかの見ものだ。
そうですよね、大魔導士ですもの、そんなことも朝飯前でしょう。
チョコケーキがまだ食べられるとわかると、オレの心の中がとてつもない余裕で満たされていった。
オレはアンナとレイラに、自分とミーコがこの世界の存在でないことを明かした。
その際に、魔導士ネフィラと会って、その最後を看取ったことも……
彼女が、実体のない魂の存在であることが、三人を驚かせているようだ。
そして、魂の存在であるネフィラには、どうやら味覚もしっかりあるようである。
保管域は肉体のない状態の存在に、肉体の感覚、味覚も補填しているということか。
それ以外の機能も恐らく……
「……え? これ、ちょっと、あなた……」
ネフィラは言葉を失っているようだ。
チョコケーキ、凄い力だな。
もしこの世界にこれを普及させてしまったら、それはそれで、大問題だろう。
武器としても使えるし、いずれそうするかも。
ありえないほどの美味しさ、地球のチョコケーキ。
「ネフィラさん…… あの、私たちに魔法を教えてください」
アンナが知的な面持ちをフル活用して、ネフィラに懇願している。
示し合わせたわけでもないのに、三人娘は一斉に声を上げた。
「「「お願いします!!」」」
理由はわかる、このチョコケーキを絶やすことなく食べ続けたいのだろう。
もちろん、オレもそれを含めて魔法教えてください、お願いしますネフィラさん。
ネフィラは、それはそれは楽しそうに笑顔で答えた。
「生徒のみなさん、魔法はとっても難しいわよ、わたしについてこれるかしら?
うふふっ」
「「「「はい、頑張ります!」」」」
なんとオレまで一緒に言ってしまう。
ネフィラ先生は、この上なく美しい笑顔でオレたち生徒を見つめていた。
さて、いろいろ準備がいるな。
保管域付属ネフィラ魔法教室の始まりだ、教材等揃えなければならないだろう。
そうだ、ミーコの読み書き問題がある。
それも一緒にやってもらおうかな。
ただし、同じスケジュールで行うには、ミーコだけ先に集中講義してもらう必要がある。
アンナとミーコ、レイラもいいけど入ってもらって、ミーコの読み書き集中講座やってもらうか。
現実世界の時間経過がないことを説明すれば、どうということはない。
保管域内時間で数週間、いや一か月くらいか?
おれはその間、魔界に言って、今後のことを話し合うとしよう。
オレは彼女たちに、今後のスケジュールをざっくりと話す。
この間買ったミーコ用教材とともに、彼女たちは保管域に入ったまま、しばらく頑張ってもらうべく話をつけた。
まてよ、そうだよな。
と思って保管域内から時間停止を命じてオレは外に出て、すぐに外からミーコたちを引き出したら、やはりそうだった。
「おにいちゃん、あたしもう全然本読めるよ!」
そうだよな、そうなる。
とんでもなさすぎるわこれ。
オレは深呼吸をした。
何かある時は、まずこれに限る。
オレもやれるところまでやってしまおう。
ネフィラ魔法教室で徹底的に学習しつくして、その後魔界へいって話をつけにいく、この方がいいだろうな。
オレは何が必要かネフィラに相談しに、保管域へ入っていった。
保管域に入ったが、すぐ目の前にネフィラがいて、強く抱きしめられてしまった。
「……一洸さん、外界時間停止をすると、あなたが手を入れるまでこの中の時間がすごく経過してるって、忘れないでね。
ミーコちゃん、アンナちゃん、レイラちゃん、みんなとっても優秀よ、本当に素直でいい子たち。
ミーコちゃんはすぐ文字の読み書きを覚えたわ、あなたがなかなか引き出してくれないので、魔法の実技だけ進めちゃったし……
あの子たちの属性魔法、あなたが驚くほど進化してるわよ、うふふ」
マジですか……
こうなって初めて実感したが、時間経過停止恐ろしいな。
今の結果からすると、現世時間数秒で一か月程度か。
「ね、あの子たちと一緒にいるのはとっても楽しかったけど、あなたがいないの……
すごく寂しかったわ」
ネフィラはしばらくオレを離してくれなかった。
ネフィラ先生、魔法教室のこととか相談したいんですけど……
ま、いいか。
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