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ネコバレで追い出されたら異世界召喚、貰った権能はアイテムボックス無限大でした ~ワクチン人口削減計画が成功した世界線、可能性の未来~  作者: 凱月 馨士
第二章 魔界災厄偏

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第41話 豪風氷砂獄

 本選初戦後、治癒術師に治してもらい身体の方は元通りになったが、気疲れが残っている。


 治癒魔法、大したものだ。


 治癒術師は神官のような白い衣装を纏って、患部に手を当てて治療している。

彼、彼女らが手を当てると、淡い光が手から出ているのが、このオレにもわかった。



 光魔法か。



 恐らくそれだけではあるまいが、闇魔法でないのは間違いないようだ。

 ミーコが治癒術を使えてくれたら、などと思い、治癒が終わった治癒術師の女性に聞いてみた。


「ありがとうございます…… あの、治癒術師の方々の属性って、光なんでしょうか?」


「ええ、光属性がないとこれは出来ないと思います。

ただ、私は神官なので、洗礼を受けて僧院で学ばないと治癒術師にはなれないんです」


 修道僧か、そうだろう。

 ミーコが修道僧……

 無理だな。


 再度礼を言って施術スペースからでると、彼女たちが待っていた。

 すっかり治ったところを見せると、安心してくれたようだ。


 初日はかろうじて勝ちで終えられたが、この先は恐らく難しいだろうな。

 今夜はゆっくり休もう。




 昨夜はミーコの襲来も、ネフィラの来訪もなく、オレは泥のように眠れた。


 本日の対戦相手だが、昨日は確かめる余裕がなかったので、初見になる。


 魔法使いのいる3人パーティか。

 男性剣士、女性の魔法使い、それに…… もう一人が謎の風体をした男だった。

 斧や槍を持つわけでもなく、手には何も持っていなかった。

 軽装で動きやすいような身なり、普段は斥候か何かなのだろうか、いまいち掴めない。


 ブラザーズとその三人パーティは、ステージ上で相対した。

 マントの影で収納する時、アンナが素早くオレに伝えた。


「……あの、身なりの軽い男、気をつけてください。

勘なんですけど、ひょっとしたら私たちと同じようなものかもしれません」


 オレはアンナに頷いた。

 オレと同じ権能者、保管庫を使って攻撃か。

 保管域の能力までいかなくても、上手く使えば比類なき攻撃手段になるのは自明の理だ。




 そいつはもったいぶらずに正体を見せてくれた。

 男の懐、何もない空間からでてきたのは、懐中電灯ほどの筒。

 奴はそれを素早い動作でオレの手前に投げつけてきた。

 それは猛烈な火焔爆発を起こし、火の粉を散らした。

 

 

 手りゅう弾か。

 

 

 腕で顔を覆ったが、続けざまに女魔法使いが、風魔法でオレに火の粉を浴びせかける。


 うずくまるように身を守りながら、ブラザーズの次元窓を全開にした。


 ミーコは女魔法使いの風を逆風にし、アンナはさらに猛烈な氷弾を見舞って三人パーティは腕で身を守っていた。


 剣士がオレに切り付けてくる。

 この男もそれなりの強さなのだろうが、前の鉄仮面には程遠いようで、オレでも剣戟を受けられた。


 剣士の剣を受けおれが飛び退こうとすると、ミーコの矢が剣士の太ももに見事に刺さり、彼はもんどりを打って倒れた。

 

 火の粉交じりの爆風で怯んだすきに、剣士の猛攻でチェックか。

 普段なら悪くない手だが、今のオレたちにはそれじゃ無理だな。


 脚を押さえながら剣士をかばう様に、女魔法使いが風の刃を使ってオレの反撃を防ごうとする。

 

 ウィンドカッターというやつか。


 とっさに顔を腕で庇ったが、腕、足を数か所切られ、オレは痛みに悲鳴を上げそうになった。 


 爆弾男は、オレと女魔法使いの間に爆弾を投げつけると、すかさず女は風をオレに向けて振るい、火の粉と火煙がオレを襲う。


 痛みに耐えながらさらに近づくと、爆弾男が二人をかばう様に前に躍り出る。




 それを待っていた。




 オレは後ろに飛びのき、技の発動サインをだした。

 剣を半月状に回して真上に上げ、両手で持った瞬間叫ぶ、




“豪風氷砂獄!!”




 叫びざま、爆弾男はオレに爆弾をありったけ投げつけてきた。

 オレの発動ポーズを見て、生命の危機を本能的に察知したのだろうが、もう遅い。


 爆煙と火の粉がステージ上を覆いつくし、視界は奪われたが、瞬く間に三人の周りには土壁が出現、オレの正面以外は完全に囲われてしまった。


 殺人ブリザートが荒れ狂い始め、9ミリ弾相当の尖った氷弾と、パチンコの玉大の小石砂が混ざり合い、爆煙とともに三人のパーティを容赦なく襲い始める。


 正面で見ていたオレは、この人たちに恨まれても何も言う資格はないな、そう心の底から思っていた。


 三人を襲う暴威は、全くの躊躇いなく衣服をはぎ取り、皮膚を削いでいく。


 オレはストップサインである、両手を真横に広げるサインを発動する。


 豪風、氷弾、小石砂弾はピタリとやみ、土壁は下げられて地獄は止まった。


 かなりギリギリだったろう、もう少し続けていれば間違いなく死んでいた。

 しかし、発動していた時間はほんの僅かだ。

 長時間の適用は確実に対象の血肉を斬裂し、骨も残さないだろう。




 そこには、全身骨に達する寸前の裂傷を負い、血まみれになった男女三人が、互いに身を守るようにうずくまっていた。


 かろうじてまだ生きてはいるようだ、微かに動いている。


「そこまで!」


 切先を向けるまでもなく、審判は叫んだ。


 静まり返っていた観衆は、それまでにない破裂するような大歓声を上げる。

 もはや、その声で耳がつんざけそうになったが、歓声はしばらく止まなかった。




 彼らは動くことさえ叶わず、固まった体勢のまま担架で運ばれて行く。

 死なないでくれてなによりだ、今はそう思いたい。


 それにしてもあの爆弾、使えるな。


 もし聞けるなら、あの爆弾男に後で聞いてみようか。

 厳しいだろうけど。




「おにいちゃん、これ凄すぎだよ……」


「私本当にいいんでしょうか、何か……」


「……あの、一洸さん、怪我大丈夫でしょうか、私」


 珍しくミーコが怯んでいる。

 

 彼女たちは一様に目を潤ませていた。

 悲しいのか、怯えているのか、興奮しているのか、それとも……

 その感情の機微を捉えられるほど、自分は成熟した大人ではない。


 オレは両手を広げ、三人の肩を包み抱くようにして、お互いを労い合った。


 彼女たちは、オレの次元窓からの攻撃の凄まじさが、実際の実地テストを遥に上回る脅威であることを、本日この場で知ってしまった。


 仕掛けを組んだオレとしては、想像以上の効力であったのは否定しないが、他に用意した技も含め、絶対に濫用してはいけないな、と心に留め置いた。

 

 

 

 ウィンドカッターで切られた傷の手当てに、オレたちは治癒術師の下へ向かった。


【 恐れ入りますが、下記お願いいたします 】


お読みいただき、ありがとうございます。

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引き続きお読みいただきますよう、

よろしくお願いいたします!


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