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ネコバレで追い出されたら異世界召喚、貰った権能はアイテムボックス無限大でした ~ワクチン人口削減計画が成功した世界線、可能性の未来~  作者: 凱月 馨士
最終章 爽酷清編

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第248話 アセンション

 養成所の中央にある、巨大なミーティングスペース。


 いつものモニターを移動させ、エイミーとアールに交互にレクチャーしてもらうことになった。


「……皆さん揃ってるのね、こんな大がかりになると思ってなかったから。

でも、いいの?」


「ええ、大丈夫です。

ここにいるみんなは、これから聞く内容を理解して、この世界を作り直していく主軸となってもらうメンバーなんです」


 エイミーは頷いて、用意した資料をモニターに流し始めた。



 地球人類の成り立ち。


 様々な異星種族による、数世代に渡る遺伝子のアップデート。

 後にやってきた爬虫類系種族レプティリアンによる、人類の奴隷化。

 

 正しい科学知識は奪われ、隷属主の都合のいいように歪められ、隠蔽された知識が広められる。

 何世代にもわたるレプティリアン隷属の歴史が続き、彼らは人類を食用としても用いていた。


 見かねた外宇宙の異星人連合体である銀河連合は、地球の国家にあった善意のグループに、人類を捕食していたレプティリアンの排除を申し出る。


 地球の各国家は、レプティリアンと人類のハーフであるディープステート、人類を開放しようとした異星人のグループとで、内部から分かれることになった。


 それぞれのグループが科学技術供与を受け、密かに敵対する歪な構図が出来上がり、国家の枠組みを超えた見えない戦争が始まる。


 戦闘は人類の部隊が主力であったが、宇宙空間に逃避しようとしたレプティリアンは、全て銀河連合が排除・殲滅した。


 戦いが続く中、銀河連合から次元上昇のスケジュールが提示される。


 アセンション……

 それは星の意思でもあり、惑星と人類が上昇進化する可能性を秘めたステージ。



 そこで一旦、説明は止まった。


 アセンション、なにかの本で読んだ記憶はあったが、具体的なイメージは持っていなかった。

 ディープステート…… もはや完全な陰謀論。

 だがこんな話を聞かされても、そんな風には思えない自分が今、ここにいる。


 オレの顔をみたエイミーは、“アセンション”について、説明を始める。



「アセンションとは次元上昇、星と人のステージが上がる、儀式のようなものです。

この数万年に一度のタイミングを得た人類は、進化の機会を与えられました。

でも、人類を支配していたレプティリアン・ディープステートはもちろんそれを許しません……

当然のごとく、あらゆる手段を使って人類と地球の進化を阻止してきたわ」


 オレが転移する少し後になるのか。

 そんなすごい時期を迎えようとしていた、地球、世界、そして日本……



「進化を止めるため、隷属状態と捕食を継続させるため、支配者側は人類の数を減らそうとしました。

管理しやすくするためと、隷属を許容する羊のような人間だけを少数残すため、疫病を蔓延させたのです。

その疫病を防ぐために、新しいワクチンが開発されました。

ところが、ワクチンを打った人たちは……」


 エイミーは、そこで言葉がでなくなってしまった。


 ワクチン。

 予め病原体を身体に入れて、免疫抗体を作るもの。


 打った人たちは…… どうなったのだろうか。


 エイミーは、オレの次を急く顔を見たが、なかなか言葉を続けてくれなかった。



“私が続けよう。

病気にかかると体中で抗体が作られ、新たに外から侵入する病原体を攻撃する仕組みが作られる、この仕組みを“免疫”という。

免疫のシステムを利用した“ワクチン”を接種し、人工的な抵抗力をもって病気になりにくくするのだ。

人類削減計画を実行したレプティリアンとハーフレプのディープステートたちは、疫病で人類を減らすのではなく、致命的疾患を発症させる遅効性DNA改変ワクチンを投与し、人口削減を行った。

ディープステートの考える適切な人口数により、支配しやすい社会形態を目指したようだ。

ワクチン大虐殺計画により人口は徐々に減少していったが、最初の段階からワクチン投与を徹底拒絶した人たちがいた。

ネクスターナルがオールドシーズと呼ぶ人間らしさをを棄てなかった人たち、またの名を覚醒した人たち、ナチュラルズ。

反抗する力を残していた彼らは、団結して反乱を起こした。

ナチュラルズがエイミー少尉たちのいる“連邦”の原形となったのだ”



「それだけじゃない、あいつらは、あいつらは……」


 エイミーは深い嗚咽を漏らして、泣き崩れてしまった。


 それだけじゃない?



“……レプティリアン、ディープステートたちは、人間の持つ否定的な感情、悲しみや苦しみも含めたそれをエネルギー源にしていた。

子供たちを誘拐し極度の虐待と死の恐怖を与えた状態で、特定の物質を脳内から抽出し、定期的に摂取していた。

人間は彼らの餌であり、労働力であり、不可欠な活力源で、それは何千年も続けられていたのだ”



 なんという……


 オレは本当に言葉を失ってしまった。

 聞いているみんなも、誰一人言葉を発するものはいない。


 人類を奴隷にするだけでは飽き足らず、そこまでして……



“私は…… ワクチンジェノサイドによって、人間の生存形態を維持できなくなった者たちの中の、古くからの異星人の血を強く残した集団の一人だった。

ワクチンを投与され、多様性の名のもとに人の形を棄て、疾病や人体の老化という縛りから放たれた存在。

それが、あるべき進化の道だと信じていた集団、ネクスターナルだ”



 静けさという地獄。

 ある未来の可能性、地球の世界線の一つを聞かされた地球人のオレ。


 重すぎる、あまりにもだ。

 オレは、もし今の状態で地球に戻れたなら……


 トカゲども…… レプティリアンやディープステートから、死の化身、恐怖の悪魔と呼ばれることだろう。

 

 闇の力を全て開放し、爬虫類や寄生虫どもを一匹残らず殺し続ける、たとえ血の一滴を残すことも許さず、どのような命乞いもただ笑って踏み潰し、延々と殺戮を続ける……


 考えただけで、思っただけで罪だというなら、今のオレは決して許される存在ではない。


 先達たちが、代々の先祖たちが受けた仕打ち、悲しみ、苦しみ、痛み……

 一体どれほどの罪なき血が流されたのか、途方も無さすぎる。


 エイミーが流した涙…… オレの想像できるスケールを遥かに越えていたのか。

 自分の生きてきたあまりにも少ない時間の中では、決して推し量れることはないだろう。


 絶対に無理だな。




「少し休もう……」


 カミオが言葉を発してくれた。

 だがオレはその場から、身も心も動かすことができなかった。


 ずっと、動くことができなかった。


 ……






「オレは…… オレは元いた世界に戻るつもりです。

どのような方法になるか、今はわかりませんが……

自分の果たすべき責任の一つだと思ってます。

もう一つ、この世界での責任…… 世界線は違うかもしれませんが、あなたがたはオレのいた世界の未来に繋がる、大きな可能性の一つなんです」



 これを言った後、しばしの沈黙があった。


 それぞれの積み上げられた思い、今現在に至った長き時間の堆積が、言葉を発するのを止めさせたのだろう。



“一洸、きみのいた時代の時点から、大きな変化が訪れるだろう。

それは人類のものというより、地球という星の変容、覚醒なのだ。

星の目覚めにともなって、地上に住んでいる人類もまた、変化を求められた。

ある一定のレベルに達しない場合、その覚醒はキャンセルされるそうだ。

これは、外宇宙から人類を監視していた異星人銀河連合が当時明かしたことだ”



 キャンセル?


 覚醒のレベルに達しない人間には、進化が訪れないということか……



「その結果、覚醒は…… 星の目覚めは延期されたのよ。

私たちは、旧世界の現実と問題を、そのまま抱えて次の世代を迎えたわ。

争いと…… 悲しい破壊が続いたの」



 これから戻ったとして、待っている世界と現実。


 かねてから言われていた終末論、黙示録の時代を人間は、崩壊と分断という結果で迎えることになるのか。



“銀河連合の異星人たちは、星の覚醒が成功した場合のアセンションについても語っていた。

つまり人類は、3次元世界の住人から5次元へと進化・上昇することができる可能性があった”



 ある意味、オレはあの時点で飛行機事故でここに飛ばされたことが幸運だったのかもしれない。



「オレのいた地球の、世界の人たちは、なぜ覚醒できなかったんだ?」



“覚醒者は少数いたが、数が足りなかったのだ。

覚醒とは、星の意思そのもののようだ……

地球という生命体の一部でもあった人類、その成長がまだまだだと判断されたのだろう”



 地球が判断した。

 古のもののような人知を超えた超絶意思、地球にもいたというのか。



「もし…… もしもアセンションできたなら、人類はどうなったと?」


 赤く目を腫らしたままのエイミーに向かって、オレは敢えて聞いた。



「戦争のない、宇宙意思に沿って体現される銀河世界の一員となったはず、そう聞いてるわ。

身体が変化して、水晶になったとも……

この星の人たちが使う魔法のような力を、誰でも使える世界になったと。

互いを思いやり、争いもなく、尊敬しあう、愛そのもののような存在になったそうよ。

これは聞いた話で、誰も見たわけじゃないわ」



 オレは古のものが阿頼耶識に身を浸しながら…… 長い時間を過ごしていた、本当の意味を察することができた。


 “彼”は待っていたのだろう。


 気の遠くなるような時間、問題を放置し、時に負荷を与え、時に微かな修正をし…… ただ、見守っていた。



 今オレは人間の身体を持ちながら、その役割の一部を担わされているということになる。



 オレはこの星から離れることは出来ないし、気づいた時点での責任を負わなければならない。



 大いなる愛、か。



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