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ネコバレで追い出されたら異世界召喚、貰った権能はアイテムボックス無限大でした ~ワクチン人口削減計画が成功した世界線、可能性の未来~  作者: 凱月 馨士
最終章 爽酷清編

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第243話 天使の確信

 わたしは一洸さんの機体が動かないままの状態で、古のものの腕に高位知性種のバトラーが纏わりつくのをモニターから見ている。



 一洸さん、状況が見えない……


 でも、何か作業中かもしれないし、迂闊に通信したら邪魔になる。

 遠くにレイラの機体が見えるけど、あの子も動かないまま。


 連邦とネクスターナルの戦艦が、私たちの戦場を取り囲むように展開している。



 通信?



 あの人、連邦のエイミー少尉ね。

 青く光ってるのは…… え? まさか全機に送ってるの。


“連邦のエイミー少尉です。

現在、一洸と連絡がとれません、私たちの機体じゃないから、生体反応の直接確認ができないの……

センサーの、センサーの反応が消えたのよ”



 レイラの機体が、一洸さんの機体に向かって飛び出してきた。


 レイラ、あの子……



 私はこんな時、どうしたらいいんだろう。

 あの人の生命反応が無くなった?


 きっと何か理由があって、どこかに転移したか、緊急のミッションよ。


 陣形を乱すようなことをするなんて、レイラ、だめだよ……

 一洸さんの動きの妨げになる可能性なんて、今のあの子には考えられないんだろうな。


 そう思いながらも、私はあの人の機体に向けて自分のマシンを進めていた。



    ◇     ◇     ◇



 エイミー少尉から連絡が入った直後、レイラの機体が大した勢いで一洸機に向かった。


 ぼくは高位知性種の動きから、一洸が敵の動きに合わせているのを感じている。

 みんなが暴走することはないと思うが…… 一応構えてはおくか。


 後方から、とんでもないスピードで接近してくる機体があった。

 あの赤い光点は…… サーラか。


 あの子は一洸を執拗に追っていたな。



“アール…… カミオだ、聞こえるかい?”


“カミオ、聞こえている”


“一洸だが、反応が消えて動きが止まっているようだ。

そちらからわかる情報はなにかあるかい?”



 間があった。

 あのアールが躊躇っている……


 まさかとは思うが。


 ぼくは、一洸の機体に接合したレイラの機体に到着しようとしているサーラのスラスター光を見ながら、まるで他人事のように見ていた。



“一洸、カミオだ、現状確認をしたい…… 一洸……”



 反応がない。


 アールも黙ったままだ。

 ぼくは接合したサーラの機体後方から、ハッチを開けられた一洸の機体のコックピットを拡大映像で見た。

 

 レイラが飛び込むように中に入っている。


 誰もいない。

 ということは、別の場所に移動したということか。


 あれは…… 神威の剣。

 あの大魔王から引き継いだと言っていた、移譲物の場所に置いてあったものだ。


 正面のメインコンソールの隙間に固定して、突き立てられている。

 まるで、シートに座しているパイロットの胸を貫こうとしているかのように。



“カミオさんっ、一洸さんが…… 一洸さんがいないんですっ!”



 レイラの叫ぶような声が、後ろにいるぼくに送られてくる。

 彼女の隣に立つサーラの身体の震えを、このモニターはリアルに伝えてくる。


 一洸……


 ぼくは、高位知性種のデバイスを取り込んで、次元の裂け目に消えようとしている古のものの腕をぼんやりと眺めている。



    ◇     ◇     ◇



 腕の化け神が蟲にたかられたまま、次元の裂け目に消えようとしてる。


 俺は一洸の命の反応が消えたのを感じた。


 だが何かが大きくぶっ壊れる時に感じる、ハートに響く軋み音がなかった。

 それに、叫びや、悲しみや…… 苦しみさえ流れてこない。

 あいつの魂は今、俺が感じられる領域にはいないみてぇだ。


 とんでもなく遠い場所に転移したか、それとも……



 あの化け神、消えちまおうとしている……

 ってことは、奴は奴のケジメをつけに行ったってことか。


 俺は一人でいるのに、声をあげて笑っちまった。


 どこの世界も、変わらねぇんだな。




“天使殿…… 一洸様の行く先、思い当たる節はないものですか。

なんの連絡も理由もなしに、バトラーを置いて転移するとは考えられません”



 お、角の姉御か。

 この期に俺に話しかけてくるとは、随分と正しい判断だ。



“角の姉さんか…… 一洸はよ、問題ねぇと思うぜ。

本当にヤヴァイ場合は、俺のここが震えるんだ……

それが全くねぇし、なんとか巧いこといくって、やっぱりここがそう言ってる”



 俺は角姉ちゃんに見えるはずもないのに、自分の胸に親指を立てて説明する。



“……”



 角の姉御、バラムは言葉を無くしちまったみてぇだな。


 それぞれの思いの巡らし方があるだろうし、俺は自分のやり方しかわからねぇ、あとはそっちでやってくれ。



 一洸の命の光を感じられない今、だが俺はなんの不安も感じていなかった。

 俺は感覚のより深い部分の、この直観を信じてる。


 これだけは今まで裏切られたことのない、唯一間違いのねぇものだ。



 あいつはまた、俺の前に現れる。


 たとえ今、反応がなかったとしても。



 だがもし、だ。

 もしもあいつがいなくなっちまったら……



 もうあの保管域には戻れねぇし、アールやネフィラともオサラバってことか。


 この星の上の空間、あの貝殻の船の連中が戻してくれるだろうけど、俺はこの世界で生きていくってことになる。


 最後まで…… いや、このままアレを使うことになるのか。




 違うな、奴は戻ってくる。


 それは俺の中のここが、確かに言ってる。


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