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ネコバレで追い出されたら異世界召喚、貰った権能はアイテムボックス無限大でした ~ワクチン人口削減計画が成功した世界線、可能性の未来~  作者: 凱月 馨士
第一章 異世界転移偏

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第23話 一洸、保安部隊に勧誘される

「一洸じゃないか」


「え? グラートさん、保安部隊だったんですか……」


 騎士団隷下の保安部隊責任者は、あのグラートだった。

 彼らはワゴン車のような音のしない車数台で保安部隊員たちとやってきた。

 

 平時はAランク冒険者でカミオのパーティ“白いたてがみ”のメンバー。

 だが出動要請があると保安部隊の責任者として出動、保安部隊員たちは冒険者の中から信頼のおける人物を選出して構成されているとのことだった。


「まさかお前さんだったとはな。まぁ無理もないが」


 グラートとヨシュア主任は、オレの能力秘匿の要望については承知していたので、話が早くて助かった。


 倉庫に行って確認してもらったが、暴行・留置場破壊・脱獄・拉致犯のゴート一味はのびたまま。


「死なないように失神させるのが大変でした」


 オレはグラートと保安部隊員に事の次第を最初から詳細に説明。

 拉致被害者の彼女らからは、明日の朝からの聴取でお願いした。

 

 捜索に使った“魂飛影”は、山里で学んだ数少ない魔法の一つで、少ない魔素量ながらなんとか使用したと説明し追及されることはなかった。




 オレは、まずここで聞きたいことをぶつける。


「グラートさん、あの乗り物ですが、何と言うんですか?」


「あれは魔動車だよ」


 魔動車というのか。動力は魔法?

 駆動は自動車とほぼ変わらないだろうが、動力源の仕組みを知りたかった。


「便利ですよね、あまり走ってないようですが、高いものなんですか?」


「魔石を使うからね、貴族や一部の金持ち、輸送業者、帝国の組織機構のものがほとんどかな。車体自体はそれほど高いものじゃないが、燃料である魔石が高いんだ」


 グラートは、Aランク冒険者でも維持するには対価として見合わないと説明した。

 魔獣一頭からとれる魔石は限界があり、なかなか普及しない一因であるらしい。


 これはイケるかも。

 またつい悪い笑顔になってしまいそうだったので、オレはなんとか抑えた。


 買い取り魔獣討伐単価が高いのも頷けるし、魔石だけでも恐らくいいのだろう。

 ギルドは魔獣の危機排除、食糧としての魔獣供給機構であると同時に、貴重な化石燃料の代替エネルギー回収機構だったわけか。

 この社会への影響力と地位は相当なものだろうな、オレはつくづく思った。




「ギルドからグラートさんへ連絡をしたと思いますが、どうやって知らされるんですか?」


 最近で一番知りたい事の一つだったので、オレはさらに直接的に聞いた。


「これだよ」


 グラートは胸にかかった赤いペンダントを見せた。


「“魔通石”だ。この石に触れて相手先を考えると、話ができるんだ」


 グラートはギルドの受付にある、一つのデスクを示した。

 そのデスクは、まるでオペレーターがアナウンスするような台があり、上に赤い石が据え付けてある。


「これはあらかじめ知っている相手同士でないと繋がらないんだ。

だから“魔通使”は、石に触れながらおれをイメージすると繋がるのさ」


 驚いた。

 電話番号ならぬ精神番号、いや魂番号が、相手を認知しているか否かのそれだけで通信できるのか。


「この魔通石も高くてね、なかなかみんなが持てるわけじゃない」


 オレは深呼吸した。

 この世界、そう不便で悪いものじゃないかも。




 空が明るくなってきた。

 彼女たちが朝食をとったら、グラートの聞き取りがなされる。

 終わるのをまって、その後は馬酔木館に帰って寝よう。

 そんなことを考えていると、


「なあ一洸、保安部隊に入らないか?

普段はおれたちみたいに冒険者業をやればいいし、それほど忙しいわけじゃない。

むしろお前さんの力が必要だ」


 オレは一瞬間をおいて答えた。


「お申し出は嬉しいのですが……

自分はまだこの町や社会のことが本当によくわかっていません。

あまりにも世俗に疎いので、まだまだ学ばなければならないことがあり過ぎます。

もう少し成長して、まだその機会があれば、その時はお願いします」


 何度もくり返す当たり障りのない返答だが、これでいいだろうと思った。

 この世界の諸事にこれ以上巻き込まれたくないというのが正直なところだったが。


「ここだけの話だがさ……

お前さん、山里で暮らしてた田舎者だとは絶対に思えないし見えないぜ」


 一瞬たじろいだが、どう返したものか。

 相手側からの洞察は、自分で制御するには限界があるな。

 ただ、こちらの素性を説明するには、今はまだリスクが高すぎる、それはなんとしても秘匿せねばと改めて感じさせられた。


「恐縮です…… でも、先ほども道を探してたんですが、本当にわからなくて、

情けない気持ちで一杯なんですよ」


 こんな月並みな返ししか浮かばない自分が心底情けない。

 グラートのなんともいえないジト目が印象的だ、オレはひきつって笑うしかなかった。




 ミーコたちとギルドの食堂で軽い朝食をとる。

 夜通し話しをしたのだろう、三人の娘たちは眠そうだ。

 ミーコの話し相手になってくれてオレは嬉しかったが、そろいもそろって眼の下に隈があるのはいただけない。


 彼女たちが聞き取りを終えるまで、廊下の待合シートでうとうとしてしまった。

思えばオレだって一睡もしていないのだ。


 長い聞き取りを終え、ミーコたちは執務室からでてきた。


 別れ際、グラートは


「一洸、こっちにくるまでオレは忘れてないぜ!」


 そう言って笑いながら魔動車に乗って、ゴート一味を連行した。

 ミーコは手を振っていた。




 ヨシュア主任に挨拶をした。

 アロルドとカーラの件で礼を言い、彼らが元気にしていることも伝えた。


「一洸さん、この度は本当にありがとうございます、ギルドとしてはなんとお礼を申し上げてよいやら……」


 オレはいつものようにいえいえ、これからもよろしくと丁重に返礼する。

 こんな風だから余計な案件が舞い込んでくるのだろう、強く自戒した。




 拉致事件が終了し、彼女たちは開放された。

 一味は厳重に処罰されるだろうし、彼女たちがあの連中と関わることはもうないと思われた。


「私、強くならなくちゃって思いました。

一洸さん、ミーコちゃんとやってる冒険者って、どんな仕事なんですか?」


 アンナがオレにそう聞いてきた。

 レイラも同じくしっかりとオレの目を見て反応を確かめているようだ。


「冒険者って言っても、オレとミーコはまだ始めたばかりなんだ。

それに、本当にこの世界のことをまだよくわかってない」


「おにいちゃんはね、ほんとはすごいんだよ!」


「ミーコっ!」


 ミーコは言った瞬間、“しまった!”の顔で肩をすぼめて、小さくなる。

 昨夜の夜バナで、どこまで話しているのか気になったが、それは今確認できまい。


「一洸さん……

具体的にはわからないけど、あの連中をまとめて突き出したんですよね。

保安部隊の偉い人や、ギルドの主任の態度を見ても、あなたの凄さはわかります」


「いや、それは……」


 アンナのメガネの奥から見える瞳。

 相当高い知性の持ち主であることは、この明るい陽の下でさらによくわかった。


「私たち……

私とレイラ、逃げることしかできなくて、これじゃ駄目だって本当に思いました」


 二人はオレの目をしっかり見つめて、何かを期待するかの如く迫ってきた。


「冒険者のこと、私たちに教えてください」




 後ろにそびえるフーガのギルド支部本舎は、明るい午前の日の光を浴びて白い壁を輝かせていた。


【 恐れ入りますが、下記お願いいたします 】


お読みいただき、ありがとうございます。

「面白い、続きが読みたい!」と思われた方は、

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引き続きお読みいただきますよう、

よろしくお願いいたします!


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