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ネコバレで追い出されたら異世界召喚、貰った権能はアイテムボックス無限大でした ~ワクチン人口削減計画が成功した世界線、可能性の未来~  作者: 凱月 馨士
最終章 爽酷清編

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第229話 探し求めて

 大地に突き刺さろうとしているかのような、星ほどもある楔。

 このあまりにも歪な絵を何と表現したらいいだろう。


 まるで自らの身を重力のままに任せることを躊躇しているかのような様相……


 あの巨大な質量を惑星の地表近くで維持し続ける技術、量子の力で可能なのだろうか…… あるいはそれ以上の未知の力か。



 赤黒い小惑星からこぼれ出る砂のように大地に広がった蟲たちは、獲物を探す蟻のようにも見えた。



 この瞬間、公開通信にしたままのオレのコミュニケーターからは、バトラー戦士たちの息を殺すような静寂がただ流れ込んでくる。


 その動きを見つめるオレたち、誰も何も声を出すことができない。



 蟲たちは大地を焼いているのか、それとも食おうとしているのか。



 煙がでるわけではなかったが、蟲デバイスがへばりついた部分は、脈動するかのように蠢いているのが見てとれた。



 バトラーのカメラから見るそれは、捕食活動を目の前で見ているかのような臨場感だったが、蟲デバイスが何をしようとしているのかは、はっきりとわかるわけではない。


 等間隔に広がっている。


 この距離をとって、それははじめてわかる絵柄だった。



“一洸、あの蟲野郎はなにかを仕掛けてやがる……”



 真っ先に声を届けたのはリロメラだ。

 オレもそう思ったが、今はまだ抑えてもらおう。



“リロメラ、仕掛けだと何故わかるんだ?”


“お前がよぉ、転移する場所に鋲を打つ時みたいな、あんな感じだ。

動作する度によ、ネクロ下等どもが震えてやがるぜ”



 オレの動作に似ているか……



“魔元帥…… 一洸、今なら私やカミオでこの蟲どもを焼き払えるわ”



 サーラが今にもやりだしそうな勢いで伝えてくる。

 オレは彼女を窘めるのと同時に、どうしても注意してほしい部分を強調しようと思った。



“サーラ、まだ様子を見よう。

それもだけど、君が感じられるあの楔とネクロノイドの会話、なにかわかったことはあるかい?”



 しばしの間があったが、彼女はまるで嬉しいことを伝えるかのように返してくる。



“……最初に感じたのは、あの楔からネクロノイドに話しかけている感じ。

何度も試したけど、返答がなかったようね……

それで楔は警告じみた内容を送ってたわ”



 警告か。


 以前あの連中がオレやネクスターナルにやっていたような内容だろうか。



 いや、少し違うだろうな。



 今やっているような“作業”は、他に意味があることだろう。



“一洸さん、今いいかしら?

アールが、高位知性種と話を始めたみたいなの……

何度も試みていたらしいけど、ようやく繋がってくれたみたい”



 内容を伝えたネフィラは、この展開の行き着く先に不安があるように感じられた。

 読み切ることは難しいだろうな。




“みんな聞いてくれ……

状況は膠着しているように見えるが今別口で対応中だ、くれぐれも早まった真似をしないよう気を付けてくれ。

警戒態勢を維持したまま、最大限安全な距離を確保だ”



 オレはそれだけ伝えると、アールの返事を待つべく、バトラーのシートに深く身を沈めた。


 こんな時こそ、自分の身の処し方として何が必要なのか、大分わかってきたような気がする。




“一洸、大切なことを伝える”



 愛機のシートに深く沈みこんでいたオレは、アールの唐突な声で現実に戻された。


 スクリーンが拡大して見せている、蟲デバイスは等間隔に広がったまま際立った動きはない。



“緊急事態だったので、彼らに対し一方的なアクセスを試みた。

成功の確率は低かったが、前回ネクスターナルと高位知性種が使っていた通信波動で問いかけを行ってみた。

結果、成功したよ”



 オレは余計な意見を入れることなく、アールの話を続けてもらうことにした。



“これから送る内容は、彼ら高位知性種が現在行っている作業の要旨の部分にあたる”


 アールはそう言い終わると、傲慢な声で話す高位知性種の会話内容をそのまま流してきた。



“……お前たちが戦っている存在こそ、我々が探し求めていたもの、その可能性が大きい……”



 探し求めていたものだと?



“一洸、彼ら高位知性種は自分たちの存在の源となったもの、始祖ともいうべき存在を探していたようだ。

進化のプロセスを進める上で、自らの存在の元始を認知することが必要だったらしい”



 高位知性種ほどのものでも、自分の種族の成り立ちを探していたというのか。



“きっかけは…… あの握り潰された時、なのかな?”


“そうだろうな、あのタイミングで何かを掴んだのだろう”



 今、ネクロノイドにへばりついてやっていること……

 交渉が決裂したとサーラは言っていた。


 まさか……



“アールっ、彼らとの回線はまだ繋がっているのか?”


“いや、今はもう閉じられている。

だが再び話しかけることは可能かもしれない”



 オレはいやな予感を抑えることが出来ないながらも、次の策を進める気概を欠いていた。


 もしも、だ。


 あの従僕たちに話しかけて返答がなかったことを機に、本体へのアクセスを試みているのだとしたら……



 そう思った瞬間、大地にへばり付いているおびただしい数の蟲たちは、一斉に強力な電磁波を発生させ始めた。



 ブゥーンという大地を大きく震わせる波動が、この広いネクロノイドの原野に響き渡る。




 高位知性種は呼び出そうとしているのだ、この地上で。


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