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ネコバレで追い出されたら異世界召喚、貰った権能はアイテムボックス無限大でした ~ワクチン人口削減計画が成功した世界線、可能性の未来~  作者: 凱月 馨士
最終章 爽酷清編

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第225話 世界を消す術

 オレは保管域に戻り、重力地獄から解放された。



「あの言い方はよ…… オレの知ってるクソ神にそっくりだったぜ。

この前の話聞いた限りじゃ、それほどでもなかったのに」


 そう言うリロメラは何かつかんだようだ。

 身体を擦っているオレの肩に、ネフィラが手を置く



「あそこは…… すごく負荷のかかる場所で…… まるで重力の地獄みたいなものでした」


「阿頼耶識の映像…… まさかこの目でみることになるなんて、今でも信じられないわ。

ちょっと思ったんだけど、あの場所の海って…… 死んで魂だけになった人の意識や、生きている人の心の奥底に繋がっているものよ。

あの海に触れることはできそう?」



 古のものの身体に乗りながら、海に触れる……

 立つことさえままならないあの空間、オレは移動することができるだろうか。



「わかりません、なにせ立っていることすらできないほどですから。

でも死者生者にかかわらず、心の奥底に触れらえるなんて、まるで……」



 オレは自分で言いながら気づいてしまった。


 あそこに存在できるということ、それこそが与えられし業であり使命であるのだと。



 古のもの、本来は別の存在であったものは、神の仕事を引き継いでいる。



 あの存在が捕食する魔族、魔物、その他のもの……

 人間が捕食している生き物たちの存在意義と変わらないのだとすれば。



 オレのやっていることは、間違っているということなのか……



 捕食される存在の側の、生きるための努力。


 いいや否定される理由などない、黙って喰われるのを待つのは知性のない獣と同じだ、とオレは思った。



「なぁ一洸…… お前、あいつに勝てそうか?

一番近くで感じた者だけがわかる感覚ってあるよな」



 リロメラは恐らく、自分もあの場所に行って確かめたいのだろう。



「無理だ、次元が違い過ぎる。

高位知性種をあっさり握り潰したし、スケールがケタ違いだよ」


「俺の前いた世界のクソ神もよ、やり合ってみてこのままじゃ勝てないと思ったぜ。

でもあくまで“このままじゃ”って前置きがつく。

条件次第じゃそうでもない」



 条件か。

 あの存在に打ち勝つ条件……



「俺の世界じゃ、クソ神は失敗すると世界を作り直してたんだ。

あんまし思い通りにならなかったり、神への反抗が強すぎる下僕が多すぎるとよ、面倒になって全部消しちまうって、伝説がずっと語り継がれてたんだ」


「消すって…… 世界を消すのか?」


「ああ、神の力の一つに“イレイザー”ってのがあった。

もちろん俺もまだ見たわけじゃないし、使っちまったら全部終わりだしよ」



 イレイザー、消去か。


 この魔法翻訳、あえて“消去する者”とか“消去機”などと訳さなかった理由、恐らくはそのイレイザーが、定められた固有名詞なのだろう。



「イレイザーって…… ネクロノミコンの目次に、それに近い記述があったわ。

“爽酷清”だったかしら」



 ネフィラがネクロノミコンを開いて確かめている。


 そうこくせい?

 生まれて初めてきく単語だし、どう書くのだろう……



「あった、爽酷清…… これよ」



 ネクロノミコンをのぞき込むオレとリロメラは、勿論そこに書かれている内容などわかりようもない。



「あらごめんなさい、わからないわよねこれじゃ」



 ネフィラは微笑みながら言って、内容を話し始める。



「読むわね。

即興での解釈だから、後で修正するかもしれないわ。


爽酷清。

神と古のものが放つことのできる、神なる存在の創造する力に反駁、滅殺する力。

神が世界を創造する際、もとあった空間を整理・清めるために使った。


世界を創造する時、奥義・爽酷清により次元滅殺が行われる。

あらゆる有機物・無機物はその波動を受けた次元空間ごと消滅する。

いかなるものもこの波動をかわすことができず、神が持つ創造する力に唯一対極する力である」



「そんな感じの言い伝えだったな、イレイザーは」



 言い方にあてはめると“爽酷清“と書くのか。


 ダメ元で、ネフィラが読んでいるネクロノミコンをまじまじと見つめてみたが、オレにかけられた翻訳魔法ではびくともしない。


 この単語も、何者かに固有でつけられた名称なのだろう。



 ネクロノミコン、これまでの経緯からすると、古のものに身体を分け与えられた生命を創造する種、が著したと考えるのが妥当か。


 神が記した書物。

 正に感じて理解する、というのも頷ける。



「今の説明だと…… 爽酷清は、神とか古のものしか使えない奥義ということですよね」


「そうなるわね」



 リロメラは、今まで見たこともないほど眉間に皺を寄せて考えている。

 様々な思い、考えがこの天使の胸中をめぐっているのがピリピリと感じられ、オレは彼の元いた世界の見識を頼るため、努めて静かに動きを見守った。



「あいつは嘘をついてるな。

いや嘘というより……

自分を倒す方法などお前たちには持ちえない、なんて強がりを言ってるが、滅する方法がないわけじゃない、試した史実がないだけだ。

爽酷清、次元を消去する世界を作る理の一つ、神が世界を作る前に行う空間を整理する術。

奴はその力を持っている、ただ使ったことがないだけだし、自分を殺す方法だともわかってない」



 リロメラは、驚く程内容を理解して吐き出してくれた。


 それはオレ自身も感じていたことだ。


 あの古のものは、自分を倒したものなどいないし、倒されたことももちろんない。

 なのでそれがどういうものかわからないのだ。



「古のものは、爽酷清で倒すことができる…… かもしれない、か。

神以外の存在が爽酷清を発動させる方法、ありそうかい?」


「今考えてる」



 リロメラは再び眉間に皺を寄せて、考える人になってしまった。



 オレはネフィラの表情が変わったのを見逃さない。

 彼女は何かに気づいたようだ。




 変化した表情からその内容が決して喜ぶべき秘策ではないことを、オレは直感で感じとった。


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