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ネコバレで追い出されたら異世界召喚、貰った権能はアイテムボックス無限大でした ~ワクチン人口削減計画が成功した世界線、可能性の未来~  作者: 凱月 馨士
最終章 爽酷清編

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222/254

第222話 習慣と目的

“アール、その、聞きにくいことなんだが…… もし、君が肉体を、機械とは別の身体を持ちたいと思った場合、それは可能なのか?”


“もちろん可能だ。

だが私の遺伝情報はネクスターナル本体に厳重に保管されていて、私でもアクセスできなかった。

しかし私の記憶には、自分の過去のイメージがしっかりと残っている。

それを元に、近い状態を修復生成することは出来るだろう”



 過去の状態か……


 必ずしも、元あった状態である必要はないわけだ。



“例えば、ミーコが機械生命体となった後に、再び生きた身体を割り当てる方法もあると”


“可能性は高い。

彼女はこの世界の遺伝構造をもとに生体として維持されていた。

私の人間としてのそれとは微妙に違うし、魔素を操る存在としても、同じように扱うことができるかまだわからない”



 オレは、アールが答えてくれている微妙な間を意識した。


 やはりこの鹵獲戦艦は、元のそうであった状態に戻りたいと思っている?



“ありがとうアール、引き続きミーコをよろしく頼む”






 オレは爪切りから採取したミーコの爪と思われるそれを、大切に紙に包んで保管した。



 まてよ。



 もし、この爪切りという行為をミーコがやっているのを見かけた、他のネコ種やキャティアが同じようにやってしまったとしたら……


 ここにいるキャティア、アンナ。




 オレは先ほど睨むようにしていたアンナを呼び止めた。



「アンナ、きみは、その爪切りとかしてるのかい?」


 アンナは少しキツメの表情で見返してくる。



「つめきり…… 爪切りって、これを整えるのですか?」


 彼女は手を見せて差し出す。


 爪は綺麗に整えられていたが、それはいわゆる爪切りによってではなく、ヤスリで研がれたような美しい指先。



「これは、ヤスリでやったのかい?」


「そうです」



 オレは安堵した。


 あそこに入って爪切りの在りかを探し出し、行為に及べるキャティアはミーコだけだ。



「一洸さん…… ミーコちゃんのこと、一人で抱え込まないでください。

弔いは私たちで準備します、だから……」


 アンナは口をキュッと絞めて、安心したオレの表情に爪を立てるように言った。



「一洸さん! どうして私を使わないの! あなたって、どうして……」


 アンナはオレの胸に飛び込んできた。


 そんなことをする子ではなかったし、全く予想もつかなかったが、オレはその時のアンナを全く自然に受け入れる。


 アンナ、君もだったのか……



 彼女は声を上げて泣き始める。


 それは想いを溜めに貯めこんだアンナの全存在が上げる要求であり、怒りであり、思いやりであり、心配であり、愛だった。



「一洸さんのバカ…… わたし、ずっとあなたのために役に立ちたかったのに……

全然気づかないで、一人で背負って苦しんで……

なんなのよぅ、こんなに近くにいるのに…… わたし……」



 オレはアンナを抱きしめた。

 思いっきり抱きしめた。


 彼女はまるで子供のように、オレの胸に額を押し付けて泣き続ける。


 すまない……

 オレに人心を掴み切る器の大きさなんてないんだ。



 今まで埋められなかった隙間を埋めるように、オレは彼女の願いに応え続ける。




 アンナは泣き止んでも、しばらくオレの胸を離れようとしない。

 そんなオレの状態を察してか、あるいは無神経が幸いしてかリロメラが話しかけてくる。



 ありがとうリロメラ。



「実はな…… お前がこの窓を開けてあった間、お前とあの“手”が話すのが、俺に聞こえてきたんだ」



 リロメラ…… 異世界の天使ならではなのか。


 周波数、上位の存在にしか感知できないそれが、この天使には聞こえていたのだろう。



「それでよ、あの古の化けものだが…… 今度話すことがあるだろうから、聞いてほしいことがあるんだ。

なんとなくだが俺にはわかる、奴がどういう存在で、何をしたいのかがよ」



 リロメラは静かに語った。

 オレは彼が話った内容を心に刻み付ける。




「一洸さん、ごめんなさい。

もうあなたを困らせるようなことはしません…… 仕事、戻ってください」


 そう言いながらオレの胸から離れるアンナは、掴んだ手を離す瞬間に入れた力が強くなる。


 オレは自分ができる最大限の優しい顔で、彼女が離れていくのを見守る。



 ごめんよアンナ、もっと君に頼るようにするよ。

 オレがそれを言葉に発しても、もう彼女は聞こえる位置にはいなかった。




 オレは、バルバルスに逢うべく、“守護者の間”の魂意鋲を呼び出す。


 ここに来るのはついこの間だったのだが、随分ご無沙汰していたような気がする。



 あの場所にでたが、そこにバルバルスはいなかった。


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