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ネコバレで追い出されたら異世界召喚、貰った権能はアイテムボックス無限大でした ~ワクチン人口削減計画が成功した世界線、可能性の未来~  作者: 凱月 馨士
第一章 異世界転移偏

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第21話 おにいちゃん!! ここだよ、ここっ!!

 ひんやりとした夜気で目が醒めた。


 ……ここ、どこ?


 つけられていたのがわかったので、あたしはおにいちゃんと走って逃げていた。

おにいちゃんはちょっと後ろを走っていて、角を曲がったら急にまぶしくなって、眼をつぶったら、袋みたいなものに入れられた。


 それから憶えてない。


 周りを見回すと、薄暗い中に座っている人影があった。

 あたしを入れて、いち、に、さん、指3つ分。

 二人とも寄り添って眠ってるみたいだった。

 昔おにいちゃんと一緒に住んでた部屋くらいの大きさかな。


 上を見ると、小さな窓から月明りが漏れていて、その窓には棒みたいなものが縦に何本もあった。


 ちょっと寒いよ。

 あたしは両手で自分を抱きしめるみたいにして体温が逃げるのを防いだ。


 明かりがないのでわからなかってけど、真っ暗な壁は壁じゃなくて鉄の棒が連なってて、外には出られないようになってる。


「おにいちゃん……」


 ここにいないのはわかっていたけど、おにいちゃんって呼ぶだけで、近くにいるみたいでちょっと気が安らぐ。


「起きたの? あなたも捕まったのね……」


 二人のうちの一人が話しかけてきた。

 目が慣れてきてわかったけど、二人とも女の子で、一人はあたしと同じネコ耳だった。


「わたしたちは逃げてきたの…… その途中でまた捕まっちゃった」


「?」


 あたしには全然わからなかったけど、酷いことをする奴らから逃げてきて、また捕まってしまったらしい。


「……あなた、ハーフ?」


「ハーフって何? あたしはミーコ」


 あたしはキャティアと人間の合いの子で、人間に近いっていうことらしい。

 人間とは違うかもしれないけど合いの子じゃない。


「多分、もうすぐおにいちゃんがくるから、大丈夫だよ!」


「ここに助けがくるの!? あの変態たちが受取に来る前に助けてくれないと……」


「? ……ヘンタイってなに」


 その子が言うには、とにかく変な恰好をさせられて、言えないようなことをされるらしい。


 死ぬほど恥ずかしいことなんだって。


 あたしはその話を聞いて、おにいちゃんにあいたくてあいたくてどうしようもなくなってしまった。


「……後つけてた悪い奴があたしをここに連れてきたんだ」


 そう思ったら、物凄くムカついて誰だかわからないけど、引っ掻きたくなった。

 おにいちゃんは必ず助けに来る、それだけは間違いないと思った。


 でも、おにいちゃんがこなかったら、どうなるんだろう……



    ◇    ◇    ◇



 オレは街はずれの、胸の熱さが導く方向へひたすら歩いた。

 少しづつだが、その熱が強まっていくのを感じながら。


 街区から離れたそこは、周りに人家のないぽつりとした一軒家だった。

 熱はまっすぐそこへ行けと示している。


 探し始めてから、2時間は経ってない。

 部屋の一つに明かりがついていて、扉の前には見張りだろうか、一人立っていた。


 周囲から近づいたが、明かりのついた部屋の真っ暗な別棟から強くミーコを感じた。


 恐らく、いや、間違いなくあの明かりのついていない棟の部屋にいる。


 まず敵の頭数の確認だな。


 明かりの漏れた建物の扉が開いて、見張りらしき役割が交代していた。

 その時中が見えたが、4,5人はいたようだ。

 ミーコがからまれた時にいた連中と数はあっている。

 中にいるのがあのゴートかどうかはわからなかった。


 建物の周囲をさらに調べると、何かを入れておく檻のようなものがいくつかあった。

 台車はついていなかったが、なるほどこれで運ぶのか。


 想像だが、商品ごと駅まで運んで貨車に載せれば輸送できる。



 まてよ。



 オレは輸送用の檻をじっと見つめる。


「割と簡単に終わりそうだな」


 独り言のように呟いたオレは、ミーコが見ていないので、安心して悪い笑いをうかべた。

 檻は外側から鉄の棒で施錠するタイプのようで、内側から空けることはできないようだ。

 オレはしっかりと枠に棒を通して施錠し、その檻を収納。

 ボードを見ると、“檻”とサイズが表示された。

 試しに、近くにあった桶を檻のなかに入れるべくイメージして、触れてみる。

 桶は消えた。

 ボードを見ると、檻の下の階層に“桶”の表示。


 声を上げて笑いそうだったが、かろうじて抑えた。

 桶を出して元に戻しておく。


 殺さない程度の物体……。


 1メートル四方ほどの木箱が積まれていた。

 収納すると、125cm×88cm×88cm 75kg の表示。

 下手をすると首の骨が折れるか。

 ま、その時は仕方ない。


 オレはそれを7個ほど全部収納する。




 その見張り役はあくびをして扉の前に腰かけている。

 門柱の影から慎重に狙いを定めて、2メートルほどの直上から箱を見舞った。

 ゴンっというヒット音とともに、奴はぐったりと倒れる。

 物音に反応してでてくる誘拐業者たち。


 いた。


 あの男、ゴートは最後に出てきた。

 オレは矢継ぎ早に箱を3人の頭上から見舞い、業者どもは次々に倒れていく。

 一人は巧みによけてかわされた。


「あ、あいつだ! 気をつけろ、上から落とす空間魔法だ!」


 ゴートがそいつに叫ぶと、飛び跳ねるように場所を変えた。

 奴は周囲を見回したが、オレを見つけることはできない。

 

 突然周囲が光った。

 やみくもに麻痺魔法を放ったようだ。


 オレは、中庭の中心を定めて、10メートルの高さをとって箱を落とす。

 箱はバラバラに壊れて中庭に拡散、その方向に向かって奴は麻痺魔法を放った。

 放っている最中の奴は、予想通り無防備なようだ。

 

 オレは石垣の影から慎重に狙いを定めて、奴の頭上に箱を見舞う。

 見事なヒット音とともに、奴は仰向けに大の字で倒れる。


「どこだー、出てきやがれー!!」


 ゴートの叫び声が響き渡る。


 オレは、この段になってまた試してみたいことを思いついた。

 これも重さ次第では死ぬだろうな。


 傍らにあった野球のボールほどの丸石を手に持って、オレはゴートの前に現れた。


「てっ、てめえ、このまま生きて帰れると思うなよ!」


「またあったなごろつき。ちょっと実験台になってもらうよ」


 おれはゴートに思いっきり悪い笑顔を見せて、その石をまったく関係ない方向に向けて全力投球する。

 石は手を離れる瞬間消え、ゴートの真横から出現、奴の横顔に直撃。


 グゲェ、っという叫びとともに奴は沈んだ。


 思いっきり悪い笑顔の後、オレはゆっくり伸びと深呼吸をした。



 まず倒れている4人の連中の懐を素早く検分しながら檻の中へ収納。

 鍵のようなものは持っていなかった。


 最後にゴート、脈をとったが生きてはいるようだ。

 取り敢えず人殺しにはならなくてよかった。

 腰から鍵束がかかっている。


 オレは鍵を取ってゴートを収納すると、暗い棟の場所へ向かった。

 行きがてら、まだ使えそうな木箱を回収しておく。

 途中ボードを確認したが、業者どもは名前で認識され檻の中に入っている。




「ミーコ!」


「おにいちゃん!! ここだよ、ここっ!!」


 ミーコの声が棟の中から聞こえた。

 おれは扉の鍵を開け、中部屋の鉄格子の鍵を開ける。

 ミーコはいつものように飛びついてきた。


 抱き着きの勢いによる遠心力で、オレはメリーゴーランドのように回転する。

 ミーコと触れ合っている間、まるで潮が引くように胸の熱さが引いていくのを感じた。


 鉄格子の中から、他にキャティアとウサギ系の獣人が出てくる。


「この子たち、アンナちゃんとレイラちゃんも捕まってたんだよ」


 2人とも、恐らくミーコと同じくらいの年齢で、彼女よりちょっと小柄なネコ耳とウサ耳少女たち。

 メイド服を着て、アキバでビラ配りをしても誰も本物だとは思わないだろう。


 彼女たちのジト目が少々痛かった。


「オレは一洸。ミーコと一緒にパーティを組んでる。

警察…… とりあえずギルドに行こう」


 オレは彼女たちに向かって、安心させるように努めて明るく言った。


「ミーコさんの言う通りでしたね、助かりました、ありがとうございます。

私はアンナです、この子はレイラ…… あの、あいつらは?」


 うす茶のネコ耳ショートボブ、メガネをかけたアンナが心配そうに聞いてきた。

 もう一人のレイラは白髪で赤目のウサ耳セミロング、ペコリと小さくお辞儀をした。

 ミーコもそうだが、拉致される理由がよくわかる。

 この壮絶な美少女ぶりでは無理もない。


「捕まえてあるから大丈夫…… 空間魔法を使って閉じ込めてるよ。

だから、君たちも一緒にギルドに行って証言してほしい」


 彼女たちは“?”な顔だったが、能力の説明は伏せておきたかったので、そのままにしておいた。

 ミーコはオレの腕にしがみついたまま離れそうもない。


 この調子であそこまで歩くのかったるいな、

 オレはそんなことを思った。


 その時、ここまでの道を車が音もなく近づいてくるのが見えた。

 あの自動車? のような乗り物だ。


「あいつらよ、隠れて」


 アンナが建物の影に隠れるよう促す。

 オレもミーコもレイラもそれに従った。


【 恐れ入りますが、下記お願いいたします 】


お読みいただき、ありがとうございます。

「面白い、続きが読みたい!」と思われた方は、

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引き続きお読みいただきますよう、

よろしくお願いいたします!


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