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ネコバレで追い出されたら異世界召喚、貰った権能はアイテムボックス無限大でした ~ワクチン人口削減計画が成功した世界線、可能性の未来~  作者: 凱月 馨士
第一章 異世界転移偏

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第20話 ミーコ、攫われる

 ギルドの受付業務は一時停止中だった。


「おにいちゃん……」


 ミーコがオレの手を握る力が強くなっている。

 ただのごろつきだとは思っていたが、仲間はそれなりだったようだ。

 嫌な予感、それが何なのかはまだ分からない。



 オレはミーコの手をとって、ホテルへの道を急いだ。

 夕食までには十分間に合うだろう、買い物はまた明日にすればいいし。

 なんとなくだが、そうした方がいいと感じていた。


 メインストリートの路地を曲がったところで、ミーコの様子が変わる。


「おにいちゃん、つけられてる」


 オレはミーコの言葉に従い、走った。

 彼女の足に合わせるのは大変だが、なんとか追い付いた。


 角を曲がったところで、オレの眼前に突然フラッシュのような光のシャワーが浴びせられ、何も見えなくなる。


「……おにいちゃん、おにぃ――」


 ミーコの声が微かに聞こえていた。

 だめだ、力が入らない……

 意識が遠のいていく。


 オレは……




 頬に触れるものがあった。

 少しひんやりとしていながら、中に暖かいものを含んだなにか。


「一洸さん、私よ」


「……ん」


 ネフィラがオレの頬に手をあてて、顔を覗き込んでいた。

 そうか、死んだのか。

 いや違う。

 オレはミーコと走っていて、それで……


「ミーコは!」


 おれは飛び起きて、ネフィラを驚かせてしまった。


「ネフィラさん、オレは……」


「落ち着いて一洸さん、あなたは今気を失っているの。

麻痺魔法をかけられたのね、よく眠っているわ」


 麻痺魔法?

 そうか、急に眩しいと思ったら、意識が薄れていったな。

 ミーコの声が聞こえた。


「ミーコはどうなったんですか?」


「彼女は攫われました。

突然かけられた麻痺魔法を防ぐのは、熟練の魔法使いでも難しいのよ」


 オレは情けなくて顔を手で覆うしかなかった。

 なんということか。


「私があなたに逢える時間には制限があるわ。

だからこの前は説明出来なかったけど、キャティアやフレディアは貴重な愛玩種族なの。

いわゆる慰み者として一部の貴族や金持ちが秘密で囲うのよ。

もちろん公には違法だけど、昔からある悪しき風習ね」


 まさか、この間のごろつきが拉致・誘拐の業者だったとか……

 それなら合点がいく。

 奴も言っていたな、“こんな上玉は見たことない”と。

 ギルドの留置場脱走ともつながった。

 それにしても展開が早すぎる。

 何か理由があるな。


「……ネフィラさん、協力していただけませんか」


「もちろんよ、そのために出てきたんだもの。

私も今言った程度の状況はつかめているわ。まずミーコちゃんの居場所ね。

生きていない私には場所を示したり、地図で説明はできないの。

だから、あなたにある魔法をかけるわ。

これは、対象者の居場所や方向をあなたに教え示す効果があるの」


 ネフィラは、対象者のことを強く想えばいい、と言った。

 オレはミーコのことを考えた。

 風呂で彼女に洗われたこと、彼女の必死な想いを受け止めたこと、自分の手を握る時の強い力のこと……

 ふつふつと胸の中が熱くなってきた。


「それよ、その熱いものが彼女の魂とつながっている証。

その方向に向くと、熱の度合いが変わるからわかるわ。

熱さを強く感じる向きを目指していけばいい。

私もこれを使って、あなたに逢ってるのよ一洸さん」


「え?」


「……あなたは、私の最後を、その腕で抱いて迎えさせてくれた。

あなたに感じたぬくもりと想いが、魔法“魂飛影”を発動する鍵になってるの」


 “魂飛影”か。

 しかし、なんと返せばいいのだろう……

 まるでラブレターの内容みたいなことを言われても、オレは本気でどう返答していいかわからなかった。


「あなた自身が発動させるわけじゃないから、今回大気にある魔素を集めて、

一回だけ使えるようにしたわ。

あなたが想い人に手を触れるその瞬間まで、これは有効よ」


 目覚めなければ。

 いてもたってもいられなかったが、ネフィラはオレの熱を冷ますように再び頬に手を触れた。


「焦らないの。

気持ちはわかるけど…… あなたらしくないわ一洸さん。

気をつけて、相手には麻痺魔法を使える者がいるし、他にも使えると思っていいわ。

あと、たまには私のことも思い出してね、あなたに逢いやすくなるから……」




 目が醒めた。

 薄暗い路地だったからか、周りには誰もいない。

 倒れた時に打ったのか、身体が少し痛かった。


 ネフィラさん、ありがとう。

 彼女が頬に触れた感触がまだ残っていた。



 さて。


 まず深呼吸しよう。


 胸の中の熱いもの、それは自分の中でまるで別の何かが生きているかのように感じられた。


 体の向きを変えてみる。

 ある方向に向くと、極端に熱さが増すのを感じた。


 こっちか。


 準備として何がいるだろう。

 この世界の警察、あの部隊にまず連絡して……

 いや、むしろ言わない方がいいだろうな。

 手続きや準備でそれが足枷になる可能性が大きい。

 現状では彼らに事情を説明している時間が無駄だ。


 ミーコの置かれている周辺状況を確認。

 ミーコを守るために行う殺傷は仕方ないが、可能な限りそれは避ける。

 ミーコを救う目的のための手段は選ばない。


 この程度でいいかな。

 手持ちの対抗武器、手段を整理する。


 サバイバルナイフ。

 ミーコ用のマチェーテ。

 十徳ナイフ。

 キッチンの包丁。

 オークの剣は、武器屋で研いでいるのでなし。


 そして、“保管域”。




 オレは胸の熱に導かれて歩き進んだ。

 様々な予想が頭をよぎったが、ミーコはまだ無事だという確信があった。

 殺されることはないだろうし、恐らくそれ以外も……

 あの連中がいかに無能なごろつきでも、商品を無暗に傷つけるような愚を犯すとは思えなかった。


 向きを変えて進むと、胸の熱がすぅーと冷める感じがした。

 わかりやすくていいな。

 方向は正しいはずだ。




 待ってろよミーコ。

 オレがお前を救い出す。


【 恐れ入りますが、下記お願いいたします 】


お読みいただき、ありがとうございます。

「面白い、続きが読みたい!」と思われた方は、

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引き続きお読みいただきますよう、

よろしくお願いいたします!


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