第190話 取りつかれたように奮われる火焔
オレにしがみついているレイラの手に力が入った。
それに応えるように、オレもレイラを抱き寄せる。
他のメンバーたちは怯えるようにオレとレイラの周りに集まってくる。
誰も声をださない。
その大地の深みから響き出るような声の主が何なのか、闇雲に狼狽える者がでなかったのは助かった。
オレは黙っていた。
そうした方がいいだろう、今何を言っても大したことにはならない、ただそう思ったからだ。
これは予感にすぎない。
“お前の目的はなんだ”
その声は少し語気を強めながら響いてくる。
目的……
強いてあげるならここから無傷で出してほしいところだ。
“その前に…… あなたは何者ですか?”
オレは聞いた。
それは至極当然の問いだとも思えたからだ。
“聞いているのは私だ…… お前は何故私の眠りを妨げる”
そうくるか。
質問の仕方を工夫しなければ先に進むことは難しいだろう。
“眠りを妨げるつもりはなかったのだが…… 邪魔をしてしまったのなら申し訳ない。
ただこちらも事情がよく飲み込めていないので…… 少し教えていただけると助かる”
この返しに対してどう返答してくるかオレは楽しみにしていたが、しばしの沈黙が続いた。
レイラがオレを掴む力が少し弱まった。
オレは安心させるように彼女の後頭部にかけた手を動かし、まるでウサギを撫でるように動かす。
レイラがゆっくりと息を吐き出すのがわかった。
少し落ち着いてくれたようだ。
いずれにしろ、これはチャンスかもしれない。
ネクロノイドを統べるもの、少なくとも“意志”のある部分との対話だ。
レイラはオレの腕を握ったままだ。
その手に力が入る。
オレはレイラを見たが、彼女の視線は、この場所の天井に近い部分の壁に向いている。
「……あの場所、外側から何かの圧力がかかっています。
表面上の変化はないんですけど、私わかります」
そこは何もない壁面、特に変化は見られなかった。
「多分外の空間から、何か魔法力を使っているのかも……
あの場所に、土魔法をかけてもいいですか?」
声の主との対話が続いている最中だ、果たしてその結果がどうなるかは不明だが、もしその力が突破口になるなら土の使い手である彼女に従ってみよう。
「具体的にどうするんだい?」
「ここはネクロノイドの…… 体の性質に近いんです。
なので、あの場所の成分を私が石化して固めてみます、そうすることにより、他の属性の魔法破壊力が影響しやすくなるんです」
そうか。
だが彼女が動いたら、声との対話は難しくなるな。
しかし彼女らの安全が確保できるなら、もちろん最優先にすべきだろう。
少なくともオレは、そんな判断しかできない。
「それで頼む…… ただし気をつけてね」
レイラはオレの目を見ながら頷いた。
◇ ◇ ◇
私が現場に着いた時、サーラさんが物凄い焔の柱を立てながら洞窟の表面部分に向かって、まるで掘削するように火焔魔法を奮っている最中だった。
放熱で目が開けていられない……
“アール聞こえる? 私のいる場所で大丈夫なのよね? この辺りがレイラを飲み込んだ空間の性質と同じなの?”
“その通りだアンナ、きみがいる場所にサーラが先行して到着しているはずだ”
ええいるわよ。
でも話しかけられる状態じゃないから。
「……うっ、息できないよぅ」
ミーコちゃんが着いた。
全力で走ってきたんだろうな、でもここの空気今すっごく薄いから……
私はミーコちゃんと自分のために、薄いアイスシールドを作って囲んだ。
ミーコちゃんの表情が少しだけ元に戻る。
「アンナちゃんありがとう、死ぬかと思ったよ……」
「ミーコちゃん、今空気必要だもんね……」
私はシールドの中からサーラさんを見ていた。
あの人、まるで取りつかれた様に壁を破ろうとしている。
プライドの高さはわかってたけど、私なんかの想像を遥に超えてるかも。
はっきり言ってドン引き……
誰かが止めない限り、あの人はずっとやるはず。
でも私が何か言っても多分無理……
「ミーコちゃん…… サーラさんに、ちょっと一呼吸入れようよって言ってみる…… 気ない? よね」
何言ってるんだろう私。
ミーコちゃんはちょっと固まってた。
「えー、アンナちゃん、あたしに振っても無駄だって知ってるくせに……」
そんなことないよ、一洸さんに強気の発言できるのはミーコちゃん、実際あなただけなんだから。
誰か来た。
アイラさんだ、やった!
「アイラさん、ここの方が息が続くよ!」
ミーコちゃんがアイラさんを招き入れた。
なんて綺麗な人……
レイラも綺麗だし、ネフィラさんも超美人だし、ミーコちゃんはかわいいけどこの人の整い方は異常……
嫉妬とかできる次元じゃないし、もうただただ“綺麗”としか言えない。
「二人とも大丈夫だった? このシールド、アンナちゃんね、さすがよ、うふふ」
?
これはデジャブ…… いやアイラさん、ネフィラさんの妹だから似てて当然よね。
でもこれってまさか。
「アンナちゃん、ミーコちゃん、今サーラさんが放ってるけど、一洸さんがやってたみたいに、力を合わせてみましょう」
「はい!」
ミーコちゃん、まるでネフィラさんに言うみたいにしてる。
アイラさんはいつか見たような美しい笑顔で、私たちがやるべきことを話し始めた。
【 恐れ入ります、下記お願いいたします 】
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