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ネコバレで追い出されたら異世界召喚、貰った権能はアイテムボックス無限大でした ~ワクチン人口削減計画が成功した世界線、可能性の未来~  作者: 凱月 馨士
第八章 終わりなきものへの挑み偏

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第186話 空間の歪み

 トロールの魔石を回収したオレたち。

 フォーメーションはそのままに、位置情報に導かれて階層を下って行った。



 下りながら、オレはぼんやりとレイラのことを考えていた。


 普段から自分を主張せずに、いつも一歩下がっていたレイラ。


 細やかな配慮と、女性らしい感性を失わずに接してくれた。

 気心の知れたアンナだけでなく、ミーコとも上手く関わってくれて、オレは安心して留守を任せることが出来た。


 オレは彼女の何を知っていたのだろう。



 ウサギ系獣人ラビ―トで、アンナたちが住まうキャティアの村で一緒に育った。


 物腰の柔らかさや普段の所作からしても、周囲に大切に育てられたことが滲み出ている。



 この間、彼女は目の周りを真っ赤にしていた。


 まさか泣いていたのか……


 ぶしつけに問い詰めることができないオレだ、あれ以上は聞きようもないだろう。

 だが、もっと気を配るやり方があったのではなかったか。



 レイラ、すまない。


 君の事をもっと知るべきだった。


 たとえ嫌われたとしても、もっと立ち入るべきだったのかもしれない。



“魔元帥様、反応が消えたポイント、もうすぐです”


 ラウルが伝達してきた。


 表示を見ながら進んでいたが、もう目の前。




 オレたちがたどり着いたポイントの少し手前、その先はまるで広場のようになった円形のホールのような空間だ。


 どことなく、あの円形闘技場を思わせるな。



“進行停止、ここで待機する”


 オレはみんなに伝えると、アールに繋いだ。


“アール、消えたポイントの少し手前に着いた。

この近辺は電磁的に不穏な状況なのか?”


 オレは何かの痕跡がないか周囲を見回した。


“一洸、もう少し進んで…… 次元窓を開けてくれ”



 オレはメンバーを待機させたままアールの指示通り進み、次元窓を少し大げさに広げてみた。



 何もない円形の広い空間。



“そこよ、あなたの正面から2時くらいの方向、20メートルくらいのところに歪みがあるわ。

闇魔法の使い手のあなたなら解かり易いはずよ”



 ネフィラが伝えてきた。

 と言われても、どうしたものか。


“……邪光を飛ばしてみるとか、ですか?”


“そう、飛ばしてみて”


 オレは言われたように邪光を弱く放ってみると、果たしてそれはわかった。


 確かに空間が歪んでいる。

 オレの邪光は、その何もない空間だけたわんだように進んだ。


 目印などなにも無い、確かにこれではわかりようもないな。



“その歪みが入り口になっているのだろう。

半径5メートル四方程度だ。

このダンジョン内に同質の歪みを持った位置の数値が特定できた。

可能性だが、その場所にレイラたちのチームは転移させられたんだろう”



 アールが策定して送った空間表示には、その部分が赤く示されていた。


 オレはすぐさま、この場所に魂意鋲を打つ。



“一洸さん待って、一人で行くつもり?

一旦戻って対策した方がいいわ、あなたに何かあったら取り返しがつかない”


 そう言ったネフィラの声は、いつもより硬く尖った印象を受けた。

 ありがとうネフィラさん……


 でもレイラは大切な仲間なんです。



“わかりました、これ以上被害を増やすことなく進めます”


 オレはまず、メンバーを入り口の待機テント前に転移させるべく戻った。




「魔元帥様、オレたちも行きます!」


 ラウルが怒ったように言う。



「イチコウの旦那、俺らを連れて行っても絶対損はさせませんぜ」


 アーグは一歩も引く気はないようだ。



 スフィアは、まっすぐオレの目を見据えたままだ。

 同行させないなどありえないと言わんばかりである。



「おまかせします」


 イリーナはオレの決断を信じ切っている、それが痛いほど伝わってくる。



「みんなありがとう……

この養成、ダンジョン攻略も含めて、みんなはこの世界の貴重な戦力なんだ、ただの命じゃない。

転移した彼らを救うのはもちろん、これ以上被害を増やすわけにはいかないんだ、これはオレに課せられた命題でもある。

きみたちにあずけたコミュニケーター、もしオレが危ないと思ったら躊躇いなく力を借りたい。

今は待機所で待っていてくれ。

事が済んだら、また再開しよう」



 静かに語ったオレに、それ以上のセリフは求められなかった。


 彼らは自分たちの立ち位置や、その身持ちの重要さを理解してくれている。

 これほどの人物たちのいるこの世界、このまま滅ぼすにはあまりに惜しいな。




 ダンジョン入り口の待機所へ彼らを転移させ戻ろうとした時、アーグがオレに言った。


「レイラさん…… あの人はあんたが思う以上に…… みんなのことを理解してますぜ。

バトラーの養成じゃあ、娘くらいの歳のあの娘に面食らっちまった。

忘れないでください、あんたのことも、あんたが思う以上にわかってるはずだ」



 オレはアーグの目を見た。

 彼の目は、深いものをたたえた宇宙の深淵を見るようである。


 これはあの時の……


 そうだ、マルコシアスの目に似ている。



「ありがとうアーグ…… オレも彼女のこと、もっと知っておくべきだったって、ずっと考えていたんだ。

これはチャンスだと思ってる」


 オレは右手を彼に向けると、彼も拳を合わせてきた。


 ラウルが悔しそうにそんなオレたちを見ていたが、オレはみんなに軽く手を上げて、そのまま待機所前から消えた。




 円形の広場に転移したオレは、まず深呼吸する。

 いつもの儀式のようなものだ。



 悪い方の可能性を考えた。

 転移先でみんなを連れて、待機所前か保管域に戻る。


 それが不可能になる可能性……




 今のオレには保管域、それなりの魔法行使力もある。

 大抵の魔獣や歪な理不尽、不条理も通用しないだろう。



“アールこれから入る、モニターを頼む”


“大丈夫だ…… 気をつけてくれ”




 オレは歪んだ空間へ向けて、歩みを進めた。


【 恐れ入ります、下記お願いいたします 】


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物語も終盤に差し掛かってまいりました。

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