第184話 攻略開始
班分けを終えた17のチームが、後片付けの済んだプルートニアの養成施設広場に勢ぞろいしている。
「魔法戦士の皆さん、よくここまで頑張ってついてきてくれました。
皆さんの学んだラウンドバトラー搭乗技術が、この世界を救う大きな一手となります。
これから入るダンジョン攻略にて、この養成所の最終卒業過程とします、全力で力を奮ってください」
などと言いはしたが、魔素発散のための一手段としてダンジョンで発散してもらうだけなのだ。
彼ら自身も気づいてはいるだろう。
各チームごとに固まったメンバーたちは、既に顔も気心も知れている仲であり、ぎくしゃくした感じは受けなかった。
この半年以上の間、メンタル面での問題や、人間関係的なトラブルがほとんどなかったのは、定期的にネフィラが精神安定のための施術を行っていたためであろう。
余計な事を考える暇もないほどシミュレーターに漬け込んでいたのもあるが、魔法の力恐るべしという以外にない。
オレは自分のメンバーたちと軽く自己紹介をし合った。
シミュレーターでの戦闘立ち合いは既に慣れたものであるが、機体を降りて冒険者として行動を共にするのはもちろん初めてである。
「今更だけどオレはイチコウ、短い間だけどよろしくたのむ」
オレが挨拶すると、右回りで名乗ってもらった。
「ラウルです、ミーコさんの下で学びました。
これが終了したら、僧院生兼バトラー要員です」
年若い少年で、恐らく15歳前後だろう。
魔法力はピカ一で、僧院で学ぶ治癒術師でもある。
バトラーに乗らなかったとしても、貴重な人材であることに間違いはない。
「スフィア、アルデローン帝国第一騎士団所属、アンナさんに学びました」
大柄で青い髪を長く伸ばした騎士団員、女性だ。
細かいことは聞きようもないが、恐らく貴族の三女あたりだろう。
言うまでもないプライドの高さが滲み出ている。
「アーグ、レイラさんの下で訓練した」
何系なのだろうか、獣人の冒険者だ。
身長は2メートル半ばはあるだろう、筋骨隆々の斧の使い手だ。
余計な事を言わないのが常なのだろうが、少し話すと粗野な第一印象は払しょくされ、物静かな知性を感じさせる。
正直、敵には回したくない人物だな。
「イリーナです、イチコウさんの下で勉強しました。
属性は無属性です」
イリーナ。
戦時における彼女の活かし方、ともいうべき無属性魔法による大量殲滅。
このダンジョンで発揮してもらおう。
全メンバーにコミュニケーターを渡す。
使い方は魔通石と同じだが、より高性能であることもしっかり周知した。
これが、養成所終了の証であることも付け加えて。
魔法戦士たちは、自慢げに胸に付けていた。
非常時には、これで彼らをいつでも招集できる。
位置情報まで把握できるので、この世界のどこにも逃げる場所がないことを示す証でもあった。
「魔通石より高性能…… いつでも一洸さんと話ができるということですよね」
イリーナが珍しく驚いたように聞いてきた。
彼女が無駄に通信してくるとは思えなかったが、相互の信頼という意味でも、このコミュニケーターを養成所の卒業メンバーが持つことは意味がある。
オレはこの時、それほど深くこの意味を考えていなかった。
大量転移のためのアイテムである、転移テント。
この袋状に誂えられた巨大なテントに入ってもらい、テントごとダンジョン前のスペースに転移してもらった。
「すごい…… こんな大量に、それも一度に転移だなんて」
「転移陣もないのにどうやって? ネフィラ女史の魔法なんだよな……」
「これも魔元帥様の魔法なの?」
口々に一斉転移を驚きで語る養成者たち。
テントはそのままの状態で維持して、帰還までは同行した魔族スタッフたちに常駐してもらった。
いよいよダンジョンの発散攻略だ。
ただでさえ強力な魔法力を持つ選り抜きの人材たちだ、もう暴れたくてうずうずしているのがここまで伝わってくる。
忘れるところであった。
リロメラも参加しているがミーコの班にいるはずだ、多分……
オレは少し心配になって、リロメラに通信したが、繋がらなかった。
ざっと見たが見当たらない。
まぁいい、後で確認しよう。
「それではこれからダンジョンに入ります。
各チームごとにフォーメーションは任せてあります、皆さんの力量は疑っていませんが、くれぐれも油断しないようにお願いします」
オレは月並みな挨拶とともに、彼らを送り込む。
最初はミーコのチームだ。
リロメラがいない。
“ミーコ、リロメラは君のチームじゃなかったのか?”
“リロメラさっきいたよ、あたしのチームじゃないよ……
あたし、おにいちゃんのチームかと思ってた”
おかしい……
“ネフィラさん、リロメラは転移テントに入ってましたよね?
というか、一緒に保管域から出ましたよね”
“リロメラいないわよ……
一洸さんと一緒に出たと思ったけど”
保管域にはいないよな、一緒に出たんだし。
これに関しては不思議と嫌な予感はしなかったが、リロメラのことだ、斜め上の何かをやらかしそうで、オレの全身は強張る。
「一洸さん、大丈夫ですか?」
イリーナがそう言うまで、オレは自分が固まっているのに気がつかなかった。
【 恐れ入ります、下記お願いいたします 】
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