第180話 後片付け、その時
“アイラ、ログインします”
これがあの子の視点、キャティアの女の子。
なんて反射神経なの、やっぱり凄い種族特性ね。
いや、あの子ただのキャティアじゃないわ……
私の知ってるそれとは違いすぎる。
姉さまの想い人、あの魔元帥の男。
彼のことを追っているのね。
他の機体から魔元帥を守ってる、果敢な攻撃、反撃、その繰り返し。
姉さま、あなたが亡くなったと聞いた日、私は言えなかった事を、ずっと言うつもりだったことを手紙に書いたわ。
あなたの事を心配して、ずっと泣いて過ごした母さま、その肩をさすりながら、涙をこらえていた父さま。
私は姉さまの目的を知っていた、ずっと変わらない願いを知っていた、だから強く止めることが出来なかった。
私たちは長い時間を生きて、それが必要なことだって知ってた。
身体を失った姉さま……
今、あなたは活き活きとしてるわ。
皮肉なものね、失ってからわかるなんて。
あの魔元帥を見たとき、彼から溢れ出る純粋な知性のオーラを感じた時、姉さまがなんでここで彼に協力しているか、あなたが女に戻っているのか、よくわかったわ。
死んでから見つけたのね……
でも羨ましいわ、運命の人を見つけられない人も少なくないのに。
姉さま……
◇ ◇ ◇
養成は順調に進んでいった。
ネフィラの座学や魔法トレーニングも功を奏し、養成者の本来の能力の底上げも行われ、シミュレーションの数値も飛躍的に上がっている。
時間停止前の適性審査会場は、まだネクロノイドの燻っているままの現場。
今の彼らに最後の掃討を任せ、終了した後に最終工程としてネクロノイドの集中殲滅にて第一次養成終了とさせてもらうか。
保管域の権能を駆使したとはいえ、随分丁寧な初期養成となった。
実質9か月あまり。
このろくなレクリエーションもない場所で、よく半年以上もの間頑張ったと思う。
この間アールの機体製造も順調に運び、予想より多い機体数となったが、全員の分を用意することができた。
属性ごとに分けられ、さらに個別調整がなされた100機近いラウンドバトラー。
ズラリと並べられた威容は、静かにその力を奮う瞬間を待っているかのようだ。
「この後、ぼくやイリーナはゴーテナスに戻るが…… きみはどうするんだい?」
カミオが、立ち並ぶ機体を前に聞いてきた。
彼という戦力を擁することのできるゴーテナス帝国は、対ネクロノイドという条件だけでもあまりに不公平だろう。
しかもイリーナやサーラまでついているとあっては、他国との釣り合いが決定的に取れない。
しかし他の戦力が極端に低いというわけではない、彼らが特別過ぎるだけだ。
オレは特段不公平にならないよう監督してきたつもりではあるが、こうして見るまでもなく戦力差は歴然とでてしまっている。
「このままプルートニアをベースに活動しますが、各地に据えたポイントに転移できますので、拠点の意味はあまりないかもしれませんね」
「ぼくらも…… イリーナと一緒に動くつもりだから、気兼ねなく呼び出してほしい」
「本当に、この後もお世話になると思います、よろしくお願いします」
オレは心の底からそう思って、カミオに頭を下げた。
オレやミーコたちだけでは、この後の展開を仕切りきれるとは思えない。
たとえそれ以外の戦力があったとしても。
「おにいちゃん、早く外の審査会場の片付けしてダンジョンいこうよ…… みんな待ってるよ!」
急かされることはなかったが、遂にミーコが言ってきた。
「うちの班のみんなも、暴れたくてうずうずしてるみたいなんです。
戦闘力の部分では問題ないはずなんで」
アンナの指揮は、特に統率の部分で抜きんでている。
一斉に照射される金剛鏃の嵐は、対象の存在を完膚なきまでに消滅させている。
「……あ、あの、お願いします、わたしの方も要望があり過ぎて」
その面ではレイラも同様であった。
彼女の場合、硬石と砂の班に分けた多重攻撃で、やはり対象への破壊力は凄まじいものになっている。
アカト山への調査は別に実施するが、各属性を振り分けた17のチームに分けてダンジョンの最奥まで到達し、ネクロノイドの海を叩く方針はついこの間決まったばかりだ。
最後の仕上げにかかっている最中だったが、もう待ちきれないのだろう。
「そうだね、みんなの殺気を感じながら監督するのも、もう限界だしな」
オレはそんな憎まれ口を叩きながらも、それなりに育ってくれた養成者たちを嬉しく思っていた。
「各員、所定の機体に搭乗!」
オレは、養成者全員に向かって号令をかける。
一斉にラウンドバトラーに養成者たち、いや、戦士たちが乗り込んでいく。
メインスクリーンにはログイン情報が表示され、全員が発進可能状態であるのを確認する。
オレは深呼吸をすると、声を上げた。
「これより審査会場の掃討戦を開始する、第一班より発進!」
外世界時間停止を解除し、次元窓を全開にする。
100機近いラウンドバトラーは、一班より順次翔び立っていった。
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