第171話 無属性魔法
イリーナの審査が始まった途端、大地から吹き上がるように現れ出でたネクロノイド。
巨大な粘体の柱が分裂して、そこにいる全ての存在に襲いかかる。
「おにいちゃん!」
ミーコはステージから距離をとり、それに合わせてレイラとアンナも射出体勢をとった。
オレは可能な限り全体を素早く睥睨し、拡声魔法で叫んだ。
「ネクロノイドが現れましたっ! 各個撃破しながら、審査員席に集まってください! 警備隊員は状況を見ながら、身の保全をしつつ集合です!」
粘体の柱となってステージを破壊したネクロノイド、オレはその太い部分に腕をクロスさせて黒色破光を放った。
柱ごと消し飛ぶネクロノイドの先を、ミーコたちが追いかけて消し始める。
カミオは光の剣を振るいながら蹴散らし、サーラは炎の龍で焼き焦がし、バラムは見境なく雷を落とし、アイラの風で編まれた光のサーチライトは、粘体を千切れ飛ばした。
オレは闇魔法を放ちながら彼らの攻撃を見て、このメンバー単体で一個師団以上の戦力となるのは間違いないと感じた。
“一洸、戻るわけにゃいかねぇよな…… こんな時に悪いけどよぉ、酷いぜ”
リロメラが独り言のように、声を送ってきた。
せっかく暴れる機会なのに申し訳なく感じているが、今はそれどころではない。
ふと見ると、イリーナがいた。
彼女は広がりゆくネクロノイドの中心部近くに立ち、魔法を放っている。
直接攻撃ではないな……
ネクロノイドのうねりが止まった。
無属性魔法、あれがそうなのか。
間違いない。
その時、彼女の拡声魔法が会場全てに響き渡った。
「雷、光、火属性の人っ! 今なら動きが止まってます、撃ってください!」
そう叫んだイリーナに応じてアイラ、サーラ、バラム、そしてカミオがネクロノイドを焼き払い始める。
それは見ていても爽快になるほどの光と炎とプラズマの蹂躙であった。
ただ焼き焦がされるだけのネクロノイド、彼らが放った暴威の跡には、無残な消し炭が残るばかりである。
焼却は続いた。
◇ ◇ ◇
“そうか、重力制御か……”
保管域のアールは、思わずこぼした。
イリーナの放った無属性魔法は、ネクロノイドの自由を完全に奪い尽くし、焼かれるままの存在となっている。
“うふふ、重くすることも、軽くすることも…… 場合によっては無くしてしまうことも可能なのよ。
もちろん、それだけじゃないんだけど……
どう、楽しそうでしょ?”
次元窓に展開される地獄を見て、ネフィラは微笑みながらそう言った。
呆然としているからなのか、アールはしばらく何も言わない。
“なるほど…… 動けなくなるほど体重が増えるのか、こりゃすげぇ。
上手く連携すりゃ、やられた方はひとたまりもねぇな”
リロメラの独り言を聞いたアールが、応じるように答える。
“実体弾そのものの重量を変えることも可能かもな。
属性保持者としては、安易に能力を知られるわけにはいかないだろう”
この光景を見ているネフィラ、アール、リロメラの悪しき者独特の笑みを咎める者は、この場にはいなかった。
◇ ◇ ◇
ネクロノイドは焼かれながら勢力を弱めるが、余力を奮って、逃げ惑う魔法使いたちに襲いかかった。
各個撃破が続き必死に応戦するが、このままでは被害者がでてしまう。
一部身体を溶解させられたものたちと、かろうじて逃げおおせた審査対象者たちを集めたオレは、全員を保管域の養成施設に収容すべく、“0”に指示した。
オレは全ての人員を保管域に避難させて、外界時間停止をする。
ここで深呼吸をした。
バイザーはこのままでいいだろう、拡声魔法を使って皆に宣言する。
「これよりラウンドバトラーの搭乗者養成を開始する。
審査会の結果は全員合格とする。
今見た通り、あれが君たちの敵だ。
ここにいる者は皆、ネクロノイドを倒すことが目的で集まった者たち、その目的をこれから始める」
この養成所の中では魔法により外の時間が経過せず、トレーニング終了後は審査会の時点に戻ることを説明。
終了まで、外界に出ることはできないことも。
候補者一同は、恐怖と期待が入り混じった複雑な面持ちでオレの宣言に従った。
【 恐れ入ります、下記お願いいたします 】
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