第166話 魔法適性試験
プルートニアの中央都市マルスにある魔元帥イチコウの執務室、つまりオレの居室には、各国からのバトラー要員候補者のリストが届き始めていた。
選別の必要要件は提示したが、その方法についてはそれぞれの国に任せてある。
選別された人員に対してプルートニアで選考試験を行い、通過者はそのまま養成に入ってもらう。
この養成所運営には、プルートニアの魔族たちが力を奮ってくれた。
ベリアルを失い纏まりを欠いてしまうことを危惧したオレだったが、杞憂だったようだ。
彼らはオレの意向を汲み、予想以上の動きをしている。
オレの“影”が順調に機能してくれているからかもしれない。
執務室で各国から届けられている書類の中、ゴーテナス帝国のリストも上がってきていた。
オレはカミオとイリーナの名前を見つける。
イリーナ? あのギルドの…… 同名ということもあるが、職業はフーガギルド職員、魔法属性:無属性。
間違いない、あのイリーナだ。
無属性か。
そういえば、無属性の魔法のことをネフィラに聞こうと思っていたが、いつものごとく忘れていた。
まあいい、もうすぐわかるだろう。
カミオが遂にバトラーに乗る。
彼には指導する側に立ってほしかったのだが、マシンを操作する上では初心者。
時間はたっぷり掛けられるので問題はないだろうが、彼とシミュレーターで模擬戦をやってみたいオレがいるのも事実だ。
知り合いなどほとんどいようもないが、パラパラとめくってオレはゴーテナスのファイルを閉じた。
プルートニアに集結してきた第一次候補者たち。
彼らは養成施設で魔法適性試験会によりふるいにかけられることになる。
保管域のシミュレーター数百台の配置は完了し、設備も問題なしだ。
建設資材はプルートニアから運び込み、必要な工事はかなりの部分レイラが請け負ってくれた。
あの子は本当に凄い。
仕事が好きなのだろうか、オレが相談した内容を素早く理解し手を尽くしてくれる。
元々の潜在的能力も高いのだろうが、本当に頭が下がる。
レイラで何か引っかかることがあったが、オレは思い出せなかった。
オレは魔元帥バイザーを被り、魔法適性試験会の審査員たちが座る後方の席に座している。
次元窓から現場を見つめるネフィラとアール。
実質審査員はオレ、ネフィラ、アールを入れた6人だが、審査員席には、アンナ、レイラ、ミーコがいる。
審査を待つ人たち、その中にカミオとイリーナを見つけミーコたちは驚くが、他の目もあるので目で会釈していた。
イリーナが、品のある微笑みを返していたのが印象的だ。
カミオはいつもの知的イケメン全快で微笑んでいる。
その中に、ひと際赤い髪をなびかせた女。
あれは……
あの時の焔の女剣士か。
全能力闘技会で、ある意味命がけで戦った赤い髪の女剣士、“火”の使い手。
あの魔法力、もしバトラーで用いたらとんでもない破壊力、殲滅力だろう。
この間のバラムに匹敵するな。
カミオといい、バラムといい、この赤い女剣士といい、なんてメンツだ……
オレは自分が情けなくなってしまった。
魔法属性は火、水、風、土、氷、雷、金、闇、光、無の10属性。
今後のクラスは4つに分ける予定だ。
雷・風・光はミーコ。
水・氷はアンナ。
土・金はレイラ。
そして、火・無・闇はオレだ。
このクラス分けの概念だが、比較的近い性質を持っているらしい。
火はミーコなのでは? と思ったがネフィラ曰く、闇と火は表裏一体なのだそうだ。
言われればそうなのかもしれない。
◇ ◇ ◇
開かれた次元窓からは、魔法適性試験会の様子が手に取るように見えている。
保管域にいるネフィラはその様子を、リロメラや少し後ろに浮遊しているアールのドローンとともに見つめていた。
ネフィラの手元には、一洸に渡された候補者のリストファイル。
アールにはスキャンしたデータを渡していた。
“ネフィラ、無属性魔法とはどういうものなんだ?”
アールが聞いた。
“うふふ、見ればわかるわ。
私の得意な属性よ、アールが好きそうなものかもね”
“見てのお楽しみか…… なら楽しみにとっておこう”
【 恐れ入ります、下記お願いいたします 】
お読みいただきありがとうございます。
「面白い、続きが読みたい!」と思われた方、
評価をお願いします、大変励みになります!
ブックマークも頂けると本当にうれしいです。
↓ ↓ ↓
物語も終盤に差し掛かってまいりました。
もうしばらくお付き合いくださいます様、
よろしくお願いいたします!




