第163話 大闘技場
ミーコは、ブース脇にある休憩室のベッドに寝かされている。
オレはミーコの手を握り、彼女が目覚めるのを待っていた。
静かに寝息を立てている彼女の笑顔を待つ時間は、無限に長く感じられる。
リロメラの治癒光は、長い時間充てられていた。
外見が黒焦げになったわけではなかったが、雷光のショックは相当なものだったろう、気絶が簡単に解かれるとは思えなかった。
どのくらいそうしていたろう……
静かに目を覚ましたミーコ。
みんな心配な顔で彼女の様子を見ている。
「……おにいちゃん、あたし」
オレはミーコの手を握り、何も言わなくていいと表情で語った。
彼女は涙を流していたが、悲しい顔ではなかったので少し安心する。
同時展開してはいけない魔法、気をつけねばならないな。
持ちうる才能が仇となっては、元も子もない。
「一洸…… ミーコの事、気をつけてくれ。
雷ってのは、俺の前いた世界の神がよく使ってた。
俺もそれでがんじがらめにされて、あの空間に放り込まれたんだ。
絞められちまったのは、俺だけじゃなかったけどよ」
「普通光というと、雷と相性が良さそうなもんだけど、違うのか?」
オレは真剣な表情のリロメラに聞いた。
「俺が知る限りよぉ、雷に喰われちまうのは水、土、そして光だった。
俺と揉めてたクソ神は、雷を放つ前に、水、土で環境を作ってから、確実に仕留めてた。
俺ぁ光で反撃したが、奴にはほとんど効かなかったんだ。
だがクソ神の雷は、俺を仕留めるにゃ充分だった」
「リロメラ…… あなた自分の力の事よくわかってるのね」
ネフィラは、あの光の危うさを知っているようだ。
「ああ、俺の光も調節が難しいんだ……
近くで浴びせるとよぉ、相手によっちゃそのまま逝っちまうんだ。
それに時間も限られてる。
だから素早くやる必要があるんだ」
それで、高く飛び上がるわけか……
神力と魔法は違うのだろうが、同じ属性を持っている相手だ、耐性も考えて強くやる必要があるが、長引けば危険度も増す。
この事だけに限らず、発動者単体で迂闊に合わせるのは考え物だな。
今回の事故、魔法を学び始めた連邦の軍人たちにはいい勉強になったはずだ。
使い方次第で、人間など簡単に死んでしまうだろう。
◇ ◇ ◇
オレは魔界王都の大闘技場にいる。
バラムは関係各所との調整が忙しいらしく、まだ来ていない。
古代ギリシャの闘技場をそのまま拡大したような王都の大闘技場。
貴賓席から眺めるステージの景観は、申し分ないものだ。
オレはコミュニケーターに手をあて、次元窓を小さく開けた。
“ネフィラさん、見えますか?”
“大丈夫、ばっちりよ!
それにしても、魔界ってきれいに整備されてるわ……
私の知ってる魔族とは違う種族みたい。
何百年も経てば、変わるわよね……”
そう言ったネフィラの声は、いつもの勢いが感じられなかった。
思い出したくない過去があるようだ。
“一洸、記録の準備は完璧だ。
その次元窓の位置のまま、固定で頼む”
アールの視点も問題ないようだ。
今回、アールにとっても必要な情報収集の場である。
ネクスターナルラウンドバトラー魔族バージョンにとって、必要要件がどのようなものになるのか、これから見る現実に沿って機体の形状も大きく変わる事だろう。
闘技会の出場者が入ってきた。
大歓声の中、迎え入れられる魔界の魔法戦士たち。
様々な魔族の手練れたち、容姿も体格も放つオーラもバリエーションに富んでいて、豊富な底力を伺わせている。
え?
バラムがいた。
“それは私も可能なのでしょうか?”
そう聞いていたが、まさか……
“一洸さん…… 彼女の姿、はっきりと見えるわ”
ネフィラはそれほど驚いていない様子だ。
この王都でも選りすぐりの魔法使いたち、16人。
事前にはっきりと知らせなかったのは驚かせたかったからか、あるいは反対されるのを危惧してか……
ま、それはいい。
最悪、バラムにもしものことがあったらこの魔界の管理はどうなるのだろう。
オレは縁起でもないことを頭に浮かべながら、闘技会の進捗を見守った。
【 恐れ入ります、下記お願いいたします 】
お読みいただきありがとうございます。
「面白い、続きが読みたい!」と思われた方、
評価をお願いします、大変励みになります!
ブックマークも頂けると本当にうれしいです。
↓ ↓ ↓
物語も終盤に差し掛かってまいりました。
もうしばらくお付き合いくださいます様、
よろしくお願いいたします!




